SSブログ

(問題提起!)KBⅡを最初に血肉化した作曲家はC.P.E.バッハだったのか否か? [キルンベルガー音律(第1、第2、第3)]

今日の記事はタイトルからしてブっ跳んでますね(笑)。

 要するに、ここ数日、再調律されたKBⅡピアノで古典派周辺の曲を弾いて調べているのですが、エマヌエル・バッハ(1714-1788)の鍵盤曲は「これはもぅKBⅡで決まりでしょ!?」という心証を抱いております。そのくらい相性が良いと思いますね。

 今日はちょっとだけ弾いたので、upしてみませぅ。エマヌエルの「専門家と愛好家のためのソナタ集第1巻」中のロ短調の「Cantabile」と題された曲です。ロンド風な曲で、低音がラメント・バス(半音階下降)主体で書かれてますが、低音の半音階「上昇」も結構出てきます。
 この楽譜は学生時代に図書館でコピーして入手したもので、結構入手困難な感じですが(少なくともDover版のシリーズⅠ、Ⅱには入っていない。IMSLPにあるか否か?)、ほぼ2声なので、エマヌエルにしては比較的弾きやすい方かと思います。(ただ、この曲は他人の演奏を一度も聴いてないので、このテンポ等で良いのかは不明です(汗)。さらにはテクニック不足のため装飾音を結構ミスってます(泣))



 敢えて補強情報を書くとすると、エマヌエルの鍵盤楽器曲では♯5つや♭6つなどの調にも挑戦しており、ミーントーン系とは考え難いこと、何よりKBⅡとの相性がことごとく良いと感じられること(←但し未だ全部は調べていないです。イメージとしては、エマヌエルの作曲法は結構「癖」、「アク」があると思うのですが(例えば「全音ぶつけ」とか)、それがKBⅡのより純正な音階で演奏されることで見事に昇華(or唱歌?消化?消火?(笑))されるという感じ)、キルンベルガーとエマヌエルは親しかったようで、キルンベルガーとマールプルクとの音律論争の際にエマヌエルはキルンベルガー側についたこと、エマヌエルの「正しいクラヴィーア奏法」には音律のことは書かれていないことから、親しかったキルンベルガーの(「純正作曲の技法」での)音律論を遵守した可能性が高いと考えられること、などですかね・・。(但し、出版年は「正しいクラヴィーア奏法」よりも「純正作曲の技法」の方が後です。前者が1753年、後者が1771年。)
 なお、エマヌエルバッハの曲がKB「Ⅰ」でも弾けるか?については全く調べていないです。

 というわけで、今回は「とりあえず問題提起」をしてみました。


補足:キルンベルガーのKBⅡ音律論が展開された「純正作曲の技法」の第Ⅰ部が出版されたのが1771年で(第Ⅱ部は1776年)、エマヌエルのこの「専門家と愛好家のためのソナタ集」は、それより8年後の1779年に出版されています。
 一方で、エマヌエル・バッハの有名な「プロシア・ソナタ集」は、「純正作曲の技法」より前の1742年、「ヴェルテンベルク・ソナタ集」も同様に1744年に出版されています。(ちなみにキルンベルガーが「KBⅠ」を発表したのは1766年(当時45歳)の『クラヴィーアの練習[Clavierubung]第4部』)
 ですので、「プロシア・ソナタ集」や「ヴェルテンベルク・ソナタ集」の想定音律がKBⅡであるのならば、キルンベルガーの発表前に既にKBⅡが一般化されていた可能性があります。さらには、1742~44年は大バッハが存命中なので、大バッハもKBⅡを使っていた可能性が高くなるわけです。(KBⅠについても同じように考えることが可能かと。)



nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

キルンベルガー第ⅡによるC.P.E.バッハその2(プロイセンソナタ1番2楽章) [キルンベルガー第Ⅱ音律ピアノ演奏紹介]

というわけで、昨日の続きです。

昨日の記事では、
>エマヌエルの鍵盤楽器曲では♯5つや♭6つなどの調にも挑戦しており、ミーントーン系とは考え難い
と書いた一方で、

>キルンベルガーのKBⅡ音律論が展開された「純正作曲の技法」の第Ⅰ部が出版されたのが1771年
>一方で、エマヌエル・バッハの有名な「プロシア・ソナタ集」が(それよりずっと前の)1742年、「ヴェルテンベルク・ソナタ集」も同様に1744年に出版
とも書きました。

 ですので、エマヌエルバッハ=KBⅡ音律なのか否か? がイマイチはっきりしない感もありますので、徐々に検証して行きたいと思います。

 まずは6曲からなる「プロシア・ソナタ集」の第1番の第2楽章を調べてみました。
 これはへ長調のソナタでして、第1楽章の出だしの楽譜はこんな感じです。
CPEバッハの楽譜 001.jpg

 一見フツーなので、「これならミーントーンでも全然OKでは?」とも思えるのですが、途中からA♭音が出て来て、終盤にD♭音も出ます。ただ、いわゆる「変な和音」は使っていないので、派生音の設定をどうにか工夫すればミーントーン系でも行けるのかなという気もしてます(未だ実験してません(汗))。
 問題は次の第2楽章なのです。
 じゃじゃーん!
CPEバッハの楽譜 002.jpg
 調号は無いのですが、実質はヘ短調です。D♭音のみならず、2小節目でG♭音まで登場します(汗)。
 4小節目のF7の和音が5小節目で半音上がってF♯7になるところ、7小節目の上下のG♯音が8小節目でA♭音となりエンハーモニック(異名同音)転調がなされるところなど、大胆の極みという印象を受けます。全体的には「カンタータのレシタティーボのような曲」と言えるかも知れません。

 派生音も次第にエスカレート(?)してきて、9小節目(上の写真の最後の小節)ではC♭、13小節目(下の写真の左上の小節)ではF♭まで出て来ます。
CPEバッハの楽譜 003.jpg
 で、こうなるともうミーントーンでは対処不能(別名「お手上げ」)ですよね、ということなのです(少なくとも私の頭脳レベルでは、「どのようにウルフ移動させても無理」という結論しか出ないっす(汗))。

 というわけで、キルンベルガーⅡで第2楽章を弾いてみました。テイク7でこの程度です、すみません(汗)。

 私としては「もぅこの音律でピッタリ!」という印象なのですが、いかがでしょうか?

 参考までに、3年後に出版されたヴェルテンベルク・ソナタ集での「調号多い曲」の楽譜も載せておきます。
 まずは第2番「変イ長調」の第1楽章です。
CPEバッハの楽譜 004.jpg

 同番の第2楽章は♭5つの変ニ長調ですね。
CPEバッハの楽譜 005.jpg

 第5番変ホ長調の第2楽章。♭6つの変ホ短調曲です。
CPEバッハの楽譜 006.jpg

 最後、第6番ロ短調の第2楽章は♯5つのロ長調です。
CPEバッハの楽譜 007.jpg 

 このような背景から、エマヌエル・バッハは、キルンベルガーによるKBⅡ発表の可成り前に、既に「脱・ミーントーン化」、さらにはKBⅡ(又はそれに近い音律)の「血肉化」を達成していた可能性が高いと考えられます。

 



nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽
うねうねフレットギター 古典音律フレット 非平均律フレット楽器 古典調律鍵盤楽器ブログを作る(無料) powered by SSブログ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。