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(久しぶりの)表の世界でのコメントレス [質疑応答]

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久しぶりのコーナーですね。

ではまず、前回記事のコメント欄でのミタチさんの質問の引用から
---質問内容--------
純正律にも色々あるようですが、本当の?純正律はどんな音律か教えていただけませんでしょうか。
すごく基本的なことだと思うのですがよくわかりません。
簡単な整数の比の音程なら、F#は7/5になるんじゃないかと思うけど、
そんな音程はどこにも出ていないし、私は見たことないです。
ダイヤトニックはどこでも同じ数値なんだけど、クロマティックはウルフを動かしたりして、勝手に都合で決めているのですかね。
そこに闇の組織のアジトがあるのかな。

---引用終わり&回答開始--------

 「本当の純正律」・・ううん、これは凄く難しい問題ですね。
 実は私も正直、純正律は余り詳しくなくて、日々勉強&実験&試行錯誤しつつ自分なりの答えを探しているところです。

 今まで記事に書いた「電子楽器等にプリセットされている長調と短調の純正律」は、どうも「ゼロ・ビートの再発見 技法篇(平島達治著、東京音楽社)」の43頁に書いてある表の音律と同じもののようです。(以下、写真で引用)

IMG_5712.JPG


 ですので、少なくとも電子楽器等の業界の人は、「これが本当の純正律」と考えていることになります。しかしながら、平島氏のこの表の音律構成は、何を根拠にどこから持ってきたのかが不明ですし、実際使用してみると不具合が多いので、実際に楽譜と照らし合わせた結果、「鍵盤楽器で実際に使われていたのは違う音律なのではないか?」とのレポート記事を書いた訳です。

 「本当の純正律」、特にクロマチック音の音程に関し、私見では、アプローチ方法、すなわち「理念的な音律」と「実用的な音律」とで、互いに異なるものになるかな、と思います。つまり、「理念的な純正律」は、根(ルート)音に対して各音が、自然倍音の構成音であること、或いは極力単純な整数比になっていること(単純な比であるほど望ましい)と考えられ、一方で「実用的な純正律」は、「既存の曲に実際に(不具合なく)適用できるものでなければならない」と考えられます。

 そして、このブログでは後者の「実用的な純正律」を探し当てることを(当面の)目的としています。つまり、現在の私にとっての『本当の純正律』とは、「実用的な純正律」でして、一方の「理念的な純正律」については(時間や労力等の都合で)あまり考えないようにしています。
 ですので、ここの点でミタチさんと私とで目指すもの(いわば「ゴール」)が違うと、マズイかなと思っています。

 話を続けますと、「実用的な純正律」は、楽器の種類、時代、国地域、さらには作曲家によって異なるものと考えられます。現在ブログで検討している純正律は、「バロック時代」の鍵盤楽器(特にチェンバロやクラヴィコード)で実際に使われていたと考えられる実用音律です。そして、バロック時代の鍵盤楽器曲では、近親調、特に属調への転調が(ほぼ)必須ですので、仮にハ長調(Cルート)曲だとすると、Ⅱの和音を構成するF♯音は、D音(9/8)に対して純正長三度音程(5/4)にするのが好都合になります。だとすると、基音Cに対するF♯音の比率は、両値を掛け合わせて45/32(結構複雑な比率)になりますよね。これが「実用的な純正律」の発想と思われます。なので、この発想だと、クロマチック音については、上述した「理念的な純正律」とは相反する結果になると思います。その意味では、クロマチック音については、仰るように「都合で決めている」のであり、12鍵盤しか無い関係上、例えば「D♯かE♭か」については、「使い勝手」を考慮して決めている、と言えると思います。

 なお、今の説明は、ミタチさんの仰る「F#=7/5」の値は「実用的な純正律」では採用され得ない、と述べているのではありません。私見では、例えば「属調への転調を行わない曲」の場合、F#=7/5(=1.4)が「実用的な純正律」の構成音となる可能性は大いにある、と考えられます。ただ、具体的な適用曲については分からないです。ルネサンスより以前の音楽かも知れないし、いわゆる民族音楽かも知れないし、もしかしたら西洋以外の音楽かも知れません。

 一方で、巷のサイトの説明を見ると、「自然倍音列」の観点からは、F#は「11倍音」(=11/8=1.375)のようです。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%80%8D%E9%9F%B3
 で、「自然倍音の構成音」と「より単純な整数比である7/5(=1.4)」と、どちらが優先されるの? どちらが『本当の純正律』なの? と質問されると困るなぁ、というのが本音です(笑)。これは、どちからかと言うと「理念」の問題と考えられることと、そもそも私は「7/5」体験も「11倍音」体験もしたことがないからです。体験していれば、「こっちの方が美しい響きと感じるからこっちでしょ」などと述べることができるのですが、そこは申し訳ないところです。
 純正律の理念的な側面(特に最近の傾向)については、藤枝守氏の「響きの考古学(平凡社)」を読まれると良いのではないかと思います。

 それと、「7/5」の音程は、「自然倍音列」の観点からは、5倍音であるE音(5/4)と7倍音であるB♭音(7/4)との比率ですよね。
 ですので、私が知っている曲の中では、以前に取り上げたウィリアム・バード作曲の「The Bells」が、これに該当する可能性があるのではないか、と考えています。

http://meantone.blog.so-net.ne.jp/2012-05-20

ただ、ルネサンス曲で使われた純正律の「本当の姿」については、未だ未検討(手付かず状態)です。

>ダイヤトニックはどこでも同じ数値
 余談的になりますが、「実用的な純正律」の発想からは、(故)玉木氏のHP記事で解説されている例もありますよね。つまり、純正律関係では「ラ」の音程をどうするかは音楽史的にも大きな問題だったようで、「ラ」を22セント高くした「ヨーロッパ音階」というものも存在する、とのことです。
http://www.archi-music.com/tamaki/string5.html

 こんな感じの回答でよかったでしょうか。お役に立てば幸いです。

追記:あ、そうそう、当ブログでは、「闇の組織のアジト」は、①まずは12等分律(12ET)だろう、②次は国際標準ピッチだろう、などと考えております(笑)。 


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ミタチ

私は今は電子楽器は持っていませんので試せないのですが、
>「ゼロ・ビートの再発見 技法篇(平島達治著、東京音楽社)」の43頁に書いてある表の音律と同じもののようです
とのことなので、よく本を読んでみます。

>「理念的な音律」と「実用的な音律」とで、互いに異なるものになるかな、と思います。
なるほど、転調などの制約が大きいために、実用的な音律として使うために色々工夫しているってことですね。

>、Ⅱの和音を構成するF♯音は、D音(9/8)に対して純正長三度音程(5/4)にするのが好都合になります。
これもなるほどですね。
私は7/5にこだわっているのではないです。どうしてかなと思っていただけですから、一応これで納得しました。
実際にやってみないとわかりませんが、計算上は7セントしか違わないので、数値の小さな響きに感覚は引っ張られるのではないかと思っていました。ですが、純正音程で響く他の音の影響が大きいのでしょうね。

大変参考になりました。ありがとうございました。

by ミタチ (2012-06-19 23:12) 

koten

ミタチさん、コメントありがとうございます。( ^-^)_旦~

>転調などの制約が大きいために、実用的な音律として使うために色々工夫している
 そうですそうです、作曲者や演奏者は音律面でも色々と工夫する必要が出てくる訳です。

>大変参考になりました。ありがとうございました。
いえいえ、どういたしまして、 お役に立てたようで良かったです。
by koten (2012-06-19 23:34) 

Enrique

プリセット音律の件,出所分かって良かったですね!実は平島氏が?

横レスですが,3の倍数(3倍音)で表したのがピタゴラス,5の倍数(5倍音)のみがミーントーン,双方折り合いつけようというのが純正律で,当然一長一短出てきます。通常の純正律含め実用的な音律はすべて3と5の倍数を基本にしていますね(2は自明の様に使っています)。

私もとりあえず必要ないかなと思って全く不勉強ですが,7の倍数や11の倍数を使った純正律もあるにはあります。確かにF#=7/5というのは非常に魅力的ですが,3と5以外を使うと音律が非常に複雑になります。単純な整数比だからといってツマミ食いをすると収拾がつかなくなります。

7倍や11倍はkotenさんがいう理念的なものだと思います。実際これらを含んだ音の響きには少し違和感があります(慣れのせいもあるかもしれませんが)。7倍使うと,「セプティマル・何とか」とかといった別のコンマが必要になって五度圏に表示するのもメンドウになって来ますし,オイラー・フォッカー図が立体になります。
by Enrique (2012-06-21 20:10) 

koten

Enriqueさん、nice&コメント有り難うございます。( ^-^)_旦~

>プリセット音律の件,出所分かって
・・・いえいえ、平島氏もデータを「どこからか」取ってきたはずなんですよ。そうでないと「世界統一プリセット音律」にはならないはずですので。で、その「どこからか」が問題でして(笑)。
 ともあれ、歴史的に正統性のある「王道音律」が、平島氏の表の短調純正律に近いものであることは確実になって来たのでヤレヤレですね。

 7倍音、そういえばラモンテヤングがWell-tuned pianoで使ってた音律も7が関係していたように記憶しているのですが、どうでしたっけ。

 オイラーの純正律って、よく見ると「究極の#指向音律」なんですね、あれは。レ♯は勿論、(シ♭を使わず)ラ♯まで使ってますからね。平行調転調は強そうですが、同主調転調が出来ないのが難点かと。(ただ、「裏技」として、ルート音を「E」にする使い方もありそうですね。)
by koten (2012-06-21 20:42) 

Enrique

ひょっとして,純正律調査の私の初期の記事読まれましたか?
私があの頃読んだものに,「16/15倍するのが純正律のシャープ!」と書いてあり,幹音に対して16/15倍になっている音をことごとく#で記載していました。♯♭の根拠があいまいとの旨注釈を付けましたが,やはり誤解招くので,表そのものをサブハーモニック系を♭系に書きなおしました。 数値そのものは同じなので性質に変化はありません。数値よりも音名に目が行きますからね。のちのものはF#以外♭で書いてあります。

オイラー律は#♭対称形が基本です。
むしろ5度圏の方が右側(♯側)には変化記号がつかず,左側(♭側)にばかり変化記号(下げて行く場合♭)がつきますので,音名はアンバランスに見えるだけです。
用いる純正和音の種類により(オイラー表から拾い出す音により)非対称になります。

オイラー律に対する見解が異なるようですが,オイラー律はある特定の音律というよりも純正音の選択規則と認識しています。(kotenさんが短調型と指摘しているのは、典型的なオイラー律の非対称型です。)ですから、ピタゴラスもキルンベルガーIも長調系も短調系もみなオイラー表の中に含まれ(5度圏でもいいのですが,和音の純正度を見るにはこの方が見やすい),どの純正律がオイラー表のどこに位置するか検討すれば,何を狙っているのか(間違っているか),一目でわかると思います。

狭い意味でのオイラー律は表で示した15音型、さらに狭義にはkotenさんが短調型という(私はこれ長調型だと思うのですが)、非対称型だと認識します。

(7倍や11倍を含むものは,別の図表で見る必要がありますが,取りあえずは除外)
by Enrique (2012-06-23 07:10) 

koten

Enriqueさん、追コメおおきにです。

私が上に書いた
>オイラーの純正律って、よく見ると「究極の#指向音律」
というのは、ドデカゴンの表を見て書きました。
つまり、ドデカゴンのオイラー音律(表)では、「Cをルート」にして派生音は全部#音で書かれているのです。
 
 私の見解では、今回の修正音律が「親玉」(少なくとも親玉の中の一つ、下手すると(笑)『大ボス』)で、他の(一般市民に公表されている)純正律は全て「派生形」と考えられます(理由:そう考えないと辻褄が合わないから)。
 で、オイラーは、親玉純正律の「新しい使い方」、「新たなルート音」を提示したもの、と考えられます。(ヴァロッティに対するヤングに近い感じのノリ)。

 その辺のことも余裕あったら今日記事書きたいのですが、今日は家族イベントが多くてどうなることやら(汗)


by koten (2012-06-23 19:14) 

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