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GW特別編(続4)~収穫の時は来た!~前期バロックは宝の山だ!!-(続)楽譜調査の旅 [純正ミーントーン(ノーマル中全音律)]

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(続き) 
前回記事の最後に
>この頃の最も一般的な音律が「通常の純正なミーントーン」であり、その音律だとD♯の音が「不正」すなわちE♭音なので(特に持続音のオルガン用の曲としては)D♯音は「使えない音」と考えられていたから。
 と書きましたが、「じゃあフレスコバルディは、ホ短調の鍵盤曲ではD♯音を一切使わなかったのか?」というと、それは違っていて、いわゆる舞曲系の曲については、D♯音、Ⅴ(B)の和音、さらにはV→Ⅰの終止法を大胆に(普通に?)使っています。

 これはフレスコバルディのホ短調のバレットの出だしと最後です。
017.JPG

016.JPG 

 8小節の短い曲ですが、D♯音を当たり前のように使い(鉛筆で①②③④と書いたように、4つも使っている!)、Ⅰ(Em)→V(B)で始まって、V(B)→Ⅰ(EmまたはE)で終わっています。これは一体どういうことなのでしょうか。

 まず考えられることは、このような舞曲系の曲は、専らチェンバロやクラヴィコード用、つまり、減衰音の楽器、調律変更が可能な楽器のための作品であって、オルガンで弾かれることを想定していないのではないか、ということです。

 で、仮にそれが正解だとしても、さらなる問題として、「では、フレスコバルディ自身、さらには当時の人たちは、こういったD♯音を使うホ短調曲を演奏する時は、調律替え(E♭キーの音の高さを調節して正規のD♯音の高さまで「下げて」おくこと)をしたのだろうか?(或いは、チェンバロやクラヴィコードに対しては、当時から「妥協的な音律」が使われていたのだろうか?)」との疑問がつきまといます。そしてこれは、結論を出すことが可成り難しい問題と感じます。

 この曲に対する現段階での私見としては、楽譜を見る限りでは、
 フレスコバルディからの以下のようなメッセージ、つまり、
 「D#音を調整可能な環境であるならば、そうしても構わない。ただ、私としては、D#音の使用法には気を使っていて、そのまま(つまりE♭音)で弾けるように作曲している。だから、まずはE♭音のままで練習してみてくれ。そして、どう弾いたらより好ましくより自然に感じるかを研究してみてくれ。そうすれば貴殿は、舞曲に対する演奏テクニックのノウハウを会得することができるだろう。」
 というメッセージが込められているように思えてならないですね、少なくともこの曲に関しては。

 どういうことかと言うと、4つのD♯音の内訳につき、①は弱拍の音、②はタイ音Bの前の音、④は繋留の解決音で弱拍かつ短い音符じゃないですか。
 で、弱拍とかタイの前とかの知識が無い人でも、①②④のD♯音は汚い響きであることが手伝って、繰り返し練習している内に「ここは短く弾くべき音だ」って気付くはずなんですよ。
 一方で、強拍にある③のD♯音が問題ですが、ここはアクセントというか苦悩の表現というか、そんな感じじゃないですかね。だから無理に短くしようと意識する必要はなく堂々と弾けば良いのではないかと。もともと短い音符ですし。
 その他、①②③④のいずれのD♯も下のB音から1オクターブ以上離していて、しかも前半の最後と後半の最初はV(B)ではなくて、Ⅲ(G)の和声ですよね。これはD♯の使い方に可成り気を使っているなぁと感じます。

この曲については、近いうちに弾き比べ演奏upしてみたいですね、、、今日中に録音できるかな。

(こうご期待?)


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REIKO

この(実はE♭である)D#ですが、ロ長調の長三度として使ったら完全にアウトでも、ホ短調(和声的短音階)で属和音として使うのなら、ギリギリ我慢できるのではありませんか?
(この場合は「減四度」音程でも可なのでは?)
スカルラッティでは「代用」はほぼ確実に短調部分で起きているのですが、そのパターンの1つがこれだと思います。
どれくらい不正音程が目立つかは、前後の流れにもよりますが・・・。
ともあれ演奏アップを楽しみにしています。

ゴルトベルク変奏曲も、繰り返し記号の後、ホ短調部分でB-D#和音が何度か出ます。
R3(笑)だと、B-D#間4つの五度のうち2つが広い五度になってしまうのでかなり厳しいですが、それでも何とか「耐える」と感じています。
これがもしロ長調のB-D#であれば、他がほとんど純正長三度なのに、突然広すぎる長三度が出て、違和感があると思います。
で、ミーントーンは純正長三度の美しさがウリなのに、ミーントーン時代の鍵盤曲って意外と短調のものが多いですよね?
これって「短調の方が音律的に無理がきく」のと関係ありませんかね?
by REIKO (2012-05-04 22:00) 

koten

REIKOさん、コメントありがとうございます。

>ホ短調(和声的短音階)で属和音として使うのなら、ギリギリ我慢できる
・・・この問題、非常~に難しいですよね(悩)。というか、まずは「作曲家」によっても見解が違うってことですよね。
現段階の私見では、、、
ヘンデル:俺は我慢できないね! そんなの論外!
フレスコバルディ: 私は少なくともオルガンでは使えないと思っている。
 的な感じですかね。一人一人調べる必要あるかなと。

ミーントーンの短調問題ですが、これも難しいですよね。私見では、あれだけ短調の曲が多いのだから、短3度が純正になる純正律系の音律も使われていたのでは無いか?(その前のエリザベス朝時代の鍵盤楽器では使われていたみたいだし、イタリアでは分割黒鍵楽器が流行っていたし)とか、色々思案を巡らせているのですが、見解を出すのが難しく感じます。
 それと、音楽史全体でみると、長調曲と短調曲は割とバランス良く作られている印象もあって、だとすると「長調偏愛主義」だった古典派の時代が一種異常(笑)だったのかな、との感もありますね。
 ま、でも、
>「短調の方が音律的に無理がきく」
ってのはその通りなんじゃないですかね。
by koten (2012-05-05 09:24) 

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