ギター黄金時代の検証~ソルの名曲「月光」編~(愛の周波数のオマケ付き) [純正律(Just Intonation)]
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というわけで、消去法により、この記事を書くことにしました・・やはり飲酒状態(←結局飲んでる(汗))&低気温下での楽器演奏録音upはしんどいですね。
余力もないので早速本題(汗)。
今回取り上げる曲は、ギターの「黄金時代」を代表する作曲家であり「ギターのベートーベン」とも称されるフェルナンド・ソル(Fernando Sor, 1778年2月13日- 1839年7月10日)の小品で、ソルが作ったエチュード集の中でも特に有名な、一般に「月光」と呼ばれるロ短調エチュード(作品35の22)です。
これは前半部の楽譜
前に解説したように、ソルの時代に使われていたギターの典型的なフレッティングはイ長調が「純正律」になり(つまりA、E、Dの和音の3度も5度も全て純正になる)、そのため、B-F♯の5度が非常に狭い「禁則」和音になると考えられます。
子供用ギターのため全体的に4度高いですが、この禁則和音の響きを鳴らします。
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
分かりますでしょうか。非常に狭い5度ですね。
このため、前に書いたように、この時代のギター作曲家は、主和音の5度が「禁則」になるロ短調での作曲を避けたのですが(勿論ロ長調も避けた)、ソルはロ短調での作曲に果敢に挑戦しています。ただし、ソルほどの大作曲家であっても、B-F♯を同時に「弾く」(打弦する)ことが出来ないロ短調曲での「大曲」は作ることは出来ず、エチュードのような小品にとどまっています。そして、このエチュードロ短調「月光」でも、B-F♯を同時に「弾く」(打弦する)ことは避けるように作曲されています。
スクロールだと見にくいので、もう一度楽譜を再掲します。
上の写真で、1小節目の頭で先ずBの低音(バス)が鳴らされ、2拍目で直上のF♯音が鳴らされます。このときには、Bのバスは可成り減衰しているので、B-F♯の唸りは殆ど気になりません。気になるような場合は、最初のBを弱く弾くべきなのかもしれません。
さらに、このBのバスは、3小節目以降は鳴らされるのが回避され、9小節目(3段目の左端の小節)になってようやく「2拍分だけ」鳴ることが「許され」ます。つまり、第9小節は曲の出だしと同じような感じと思いきや、楽譜の音価が異なって書かれているのです(第2&9小節目の下のF#音も違う。)。
前半部の最終小節での(上から)B⇒F♯⇒B音も要注目です。B⇒F♯の「4度」音は同時に鳴って(響いて)いることが許され、その一方で、F♯⇒Bの「5度」音は同時に響かせないように記されています。つまり、この曲の前半最後のB音を弾く際にはF♯音を「消音する」ことが、イ長調純正律型ギターを弾くときの「たしなみ」となっていたのではないでしょうか。
そういったことに注意して下記音源(前半部のみ)を聴いてみると、今までとは全く違った新たな「発見」があること間違いないでしょう(※ただ、これ弾く際には「9小節目のB音が2拍で打ち止め」まで意識してなかったかも(汗)・・前半部の最後は意識して弾いてます。)
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
では後半部に行きましょう。
楽譜写真にありますように、後半部はコード的にはBmで始まって、F♯7 ⇒ Bm ⇒F♯ ⇒ Bm ⇒F♯7 ⇒Bm ⇒F♯・・と、Bm中心で進行していきますが、それにもかかわらず、何故か一向にBのバス音が鳴らされず、低音はF♯のオルゲルプンクトのような感じで進行して行きます。何故でしょうか? そうです。B-F♯の5度が「汚いから」です。例えば後半の頭でBのバスを弾いたりすると、上のF♯音との関係で曲が「台無し」になってしまうのです。
後半部のみの音源です。ここでは「リピート繰り返し」を入れて演奏してますが、繰り返した後の方が消音に気を遣って演奏しましたので、これに注意して聴かれると新たな発見があるかと思います。
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
総じて、この曲では、1弦2フレットの高いF♯音が鳴らされる場合に、極力下のB音を使わないように注意深く作曲されていることが分かります。つまり、前半の8,10小節目、後半の1,8,18,24,31小節目などを見ると明らかであり、さらに前半の2小節目、後半の第5,9,25,30小節目などは「2音の響き」自体はあるので「ギリギリ」の線を狙っており、いずれにしても「同時打弦」は回避されていることが分かります。これは「単なる偶然」で片付けられる問題ではないのです。(追記:後半の第9小節目は「勝負」音かも知れませんね。つまり、この小節は、前半部の頭などとは違って「強い表現」が求められるところであり、B-F♯5度の「禁則」和音を敢えて強く響かせる箇所とも考えられます。)
さらにもっと沢山調べれば、新たな事項がもっと発見出来るのでしょうけど、流石に疲れてきたため(爆)、この辺にしておきます。
最後に通し演奏です。
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
この「イ長調純正律」型ギターでの月光、単なる一愛好家の私&おもちゃギターなんかじゃなくて、プロの方の最高級手工ギターでの「本気演奏」を是非聴きたいですよね・・・本当、一体あと何年かかるんでしょうね? 日本で「脱・平均率(←律?)化」が達成されるのって。。。
(ぼそぼそ・・・あぁ恨めしい・・・ウラメシ~ m( ̄_ ̄m )~†┏┛墓┗┓†~(m ̄_ ̄)m (超爆))
ではそういうことで、皆さま良い芸術の晩秋秋~初冬(笑)を!!
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というわけで、消去法により、この記事を書くことにしました・・やはり飲酒状態(←結局飲んでる(汗))&低気温下での楽器演奏録音upはしんどいですね。
余力もないので早速本題(汗)。
今回取り上げる曲は、ギターの「黄金時代」を代表する作曲家であり「ギターのベートーベン」とも称されるフェルナンド・ソル(Fernando Sor, 1778年2月13日- 1839年7月10日)の小品で、ソルが作ったエチュード集の中でも特に有名な、一般に「月光」と呼ばれるロ短調エチュード(作品35の22)です。
これは前半部の楽譜
前に解説したように、ソルの時代に使われていたギターの典型的なフレッティングはイ長調が「純正律」になり(つまりA、E、Dの和音の3度も5度も全て純正になる)、そのため、B-F♯の5度が非常に狭い「禁則」和音になると考えられます。
子供用ギターのため全体的に4度高いですが、この禁則和音の響きを鳴らします。
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
分かりますでしょうか。非常に狭い5度ですね。
このため、前に書いたように、この時代のギター作曲家は、主和音の5度が「禁則」になるロ短調での作曲を避けたのですが(勿論ロ長調も避けた)、ソルはロ短調での作曲に果敢に挑戦しています。ただし、ソルほどの大作曲家であっても、B-F♯を同時に「弾く」(打弦する)ことが出来ないロ短調曲での「大曲」は作ることは出来ず、エチュードのような小品にとどまっています。そして、このエチュードロ短調「月光」でも、B-F♯を同時に「弾く」(打弦する)ことは避けるように作曲されています。
スクロールだと見にくいので、もう一度楽譜を再掲します。
上の写真で、1小節目の頭で先ずBの低音(バス)が鳴らされ、2拍目で直上のF♯音が鳴らされます。このときには、Bのバスは可成り減衰しているので、B-F♯の唸りは殆ど気になりません。気になるような場合は、最初のBを弱く弾くべきなのかもしれません。
さらに、このBのバスは、3小節目以降は鳴らされるのが回避され、9小節目(3段目の左端の小節)になってようやく「2拍分だけ」鳴ることが「許され」ます。つまり、第9小節は曲の出だしと同じような感じと思いきや、楽譜の音価が異なって書かれているのです(第2&9小節目の下のF#音も違う。)。
前半部の最終小節での(上から)B⇒F♯⇒B音も要注目です。B⇒F♯の「4度」音は同時に鳴って(響いて)いることが許され、その一方で、F♯⇒Bの「5度」音は同時に響かせないように記されています。つまり、この曲の前半最後のB音を弾く際にはF♯音を「消音する」ことが、イ長調純正律型ギターを弾くときの「たしなみ」となっていたのではないでしょうか。
そういったことに注意して下記音源(前半部のみ)を聴いてみると、今までとは全く違った新たな「発見」があること間違いないでしょう(※ただ、これ弾く際には「9小節目のB音が2拍で打ち止め」まで意識してなかったかも(汗)・・前半部の最後は意識して弾いてます。)
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では後半部に行きましょう。
楽譜写真にありますように、後半部はコード的にはBmで始まって、F♯7 ⇒ Bm ⇒F♯ ⇒ Bm ⇒F♯7 ⇒Bm ⇒F♯・・と、Bm中心で進行していきますが、それにもかかわらず、何故か一向にBのバス音が鳴らされず、低音はF♯のオルゲルプンクトのような感じで進行して行きます。何故でしょうか? そうです。B-F♯の5度が「汚いから」です。例えば後半の頭でBのバスを弾いたりすると、上のF♯音との関係で曲が「台無し」になってしまうのです。
後半部のみの音源です。ここでは「リピート繰り返し」を入れて演奏してますが、繰り返した後の方が消音に気を遣って演奏しましたので、これに注意して聴かれると新たな発見があるかと思います。
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
総じて、この曲では、1弦2フレットの高いF♯音が鳴らされる場合に、極力下のB音を使わないように注意深く作曲されていることが分かります。つまり、前半の8,10小節目、後半の1,8,18,24,31小節目などを見ると明らかであり、さらに前半の2小節目、後半の第5,9,25,30小節目などは「2音の響き」自体はあるので「ギリギリ」の線を狙っており、いずれにしても「同時打弦」は回避されていることが分かります。これは「単なる偶然」で片付けられる問題ではないのです。(追記:後半の第9小節目は「勝負」音かも知れませんね。つまり、この小節は、前半部の頭などとは違って「強い表現」が求められるところであり、B-F♯5度の「禁則」和音を敢えて強く響かせる箇所とも考えられます。)
さらにもっと沢山調べれば、新たな事項がもっと発見出来るのでしょうけど、流石に疲れてきたため(爆)、この辺にしておきます。
最後に通し演奏です。
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
この「イ長調純正律」型ギターでの月光、単なる一愛好家の私&おもちゃギターなんかじゃなくて、プロの方の最高級手工ギターでの「本気演奏」を是非聴きたいですよね・・・本当、一体あと何年かかるんでしょうね? 日本で「脱・平均率(←律?)化」が達成されるのって。。。
(ぼそぼそ・・・あぁ恨めしい・・・ウラメシ~ m( ̄_ ̄m )~†┏┛墓┗┓†~(m ̄_ ̄)m (超爆))
ではそういうことで、皆さま良い芸術の晩秋秋~初冬(笑)を!!
すごい綺麗ですよ!
響きが美しい分、短調のもの悲しさが余計に引き立つ印象です。
禁則五度は、ギターの場合ピアノのように「ガーンと弾く」楽器じゃないので、それほど狭くは聴こえませんね。
むしろ私には、キルンベルガー第二法の「狭い五度」に近いように聴こえます。
この音律&調だと、B-Dはピタゴラス短三度ってことになりますね。
一方、F#-AやC#-Eは純正短三度なので、いろいろな広さの短三度が鳴っている・・・ということでしょうか。
by REIKO (2011-11-26 01:08)
REIKOさん、コメントありがとうございます。
( ^_^)o~~■P~~ 朝の珈琲どぅぞ ♪
>すごい綺麗ですよ!
・・・どもども、ソル先生も草場の陰で喜んでいる、、はずです(笑)
>禁則五度は、・・・それほど狭くは聴こえません
・・・・私もそう思います。ギターという楽器が記譜上の音より1オクターブ下の音を使う(つまり鍵盤楽器よりも低い音域を使う)ことも関係してそうですよね。
>この音律&調だと、B-Dはピタゴラス短三度
>一方、F#-AやC#-Eは純正短三度なので、いろいろな広さの短三度が鳴っている
・・・流石に鋭いですね、確かに色々な短三度が鳴ってます。
復習しますと、イ長調純正律では、B-DはⅡの和音の構成音「レファ」なのでP短三度、F#-Aは同様にⅥの「ラド」なので純正短三度、C#-EはⅢの「ミソ」なので純正短三度です、お見事!(祝)
by koten (2011-11-26 08:12)