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昔と今とで如何に価値観が違うか? についての考察(調律替えの面倒さ) [音律(調律)の基礎知識]

以前に
>今後の記事投稿予定をノルマって?みる
と題して、
「⑥9月の発表会のための曲決め」の他に、
① 昔と今とで如何に価値観が違うか? についての考察
  ⇒五度の価値、調律替えの面倒さ、などなど
②「鍵盤スコラダトゥーラ」(笑)を実践していそうな作曲家は誰か?
 ⇒そりゃあ「あの人」でしょう(笑)
③ シントニック・コンマ(入り五度)分割の技法
④ バンの完全鍵盤は「ディスインフォメーション」なのか否か?
⑤ バロック時代のニ長調鍵盤曲の特徴
 を挙げたので、休日を利用して少しずつでも書いて行きたいと思った次第。

 まず、「①昔と今とで如何に価値観が違うか?」の内の
「調律替えの面倒さ」に関する事項をメモ風に書いていくと、

昔の鍵盤楽器(チェンバロ、クラヴィコード、フォルテピアノ):弾いている内に(例:数十分で)調律が狂ってくるのは「当然」。ゆえに、調律は演奏者本人で出来なければならない(それが出来ない演奏者は「論外」)。楽器所持者は「調律用具」を必ず持っている。これらを踏まえると、楽器は必然的に、(曲間でも)出来るだけ「楽に」、「素早く」調律できるような設計となる。
  vs
現代の鍵盤楽器(モダンピアノ):一度行った調律が出来るだけ長時間狂わないような設計とする(例:鉄骨のフレーム、太くて重くて強い張力で調律される弦、など)。ゆえに、調律は演奏者本人で出来なくても「何ら問題はない」。「調律用具(チューニングハンマー等)」を持っていない楽器所持者の方が圧倒的多数(実際、比較的最近までチューニングハンマーは「販売御法度」だったらしい。)だから、専門家(調律師)でなければオイソレと調律できないような楽器設計とする(例:アップライトピアノの場合、上蓋のみならず、重い前蓋を開けて移動させないと調律できない。)。これでは曲間での調律など「とうてい無理」。

 となる訳です。で、チェンバロ用とモダンピアノ用の調律用具について写真に撮ったので載せると、こんな感じです。(大きさ比較のため、ごま塩瓶(笑)とHDD/DVD/VHSコンパチブル機用リモコンも撮影してます)
70グラムvs500グラム.JPG

 大きさもそうですが、重量が、チェンバロ用(左のT字型)=70グラム弱vsモダンピアノ用(右のL字型)=約500グラムと、圧倒的に違います。

 要するにチェンバロ用の調律道具は「~ハンマー」と呼ぶにはほど遠い華奢なものでして、ポケットにも入るサイズなのですが、モダンピアノ用調律道具は明らかにチューニング「ハンマー」であり、ぶっちゃけ十分「凶器」にもなり得るサイズ&重さなんですねこれが(怖!w)。

 で、モダンピアノの調律はこの「ハンマー」の長い柄の部分を有効利用して(つまり梃子の原理で)、強い張力で貼られた弦を1鍵盤につき複数本(高音側で3本、低音側で2本)調弦するわけで、上述した「蓋移動」もあり、これでは曲間での調律など「とうてい無理」、「明らかに不可能!」な訳ですよ。そもそも、一鍵盤(一打撃装置)に対して「複数の弦」を調律するため、他の弦を消音しながら調律することになり、そのため、チューニングハンマーの他に「消音用の器具」も必要になりますし。

 これに対して、チェンバロの調律は、上記華奢な道具を使って、弱い張力で貼られた弦を1鍵盤につき1本調弦すれば良いので(上記「消音用の器具」は不要)、要するに圧倒的に「楽に」かつ「素早く」調律できる訳です。ちなみにウチのチェンバロ(2段鍵盤)の場合、譜面台を若干ずらすだけで全ての弦(8フィート上下鍵盤分+4フィート)を調律することができます。

追記写真:譜面台をずらして(作業時間1~3秒程度w)、ずれてきた音程を直すところ。
IMG_5791[1].JPG
 何カ所かずれた音を直す場合などはこれで済みます。本格的に調律するときは譜面台が邪魔になるので他の場所に移動させますが、そんなに重くはないし、作業も単に「持ち上げて外す」、調律後に「再度はめ込む」だけです。

 なので、「現代の感覚」、「現代の常識」に基づけば、鍵盤楽器演奏における曲間での調律(替え)など「あり得ないでしょ?アナタ頭がオカシイんじゃないの?」と罵倒(?)されかねないのですが、「昔の実情」を考えてみると、少なくとも「昔は違ったでしょ?」と疑問を投げかけることくらいはできるかなと、そう思う訳ですね。

 現代楽器でも、クラシックギター他の弦楽器を弾いている人ならば、曲間での調律(狂いの修正、更には変則調弦(スコラダトゥーラ)への調律替え)なんて「当たり前」と思っている人が圧倒的多数だろうし、実際、クラシックギターでは「演奏中」に調律を直すことだって「慣れた人なら当たり前」なんですよね。

 昔の鍵盤楽器の演奏者でも、流石に「演奏中」に調律を直すことはしなかったでしょうけど(←但し譜面台を外して弾けば「やって出来ないことはない」w)、曲間でなら、狂ってきた幾つかの音を直したり若干の調律替え(例えばある箇所の♭音を♯音に変えるなど)をすることは、当たり前のように行われていたのではないか、と思う訳です。もちろん「演奏者本人」が行うんです、そんなこと改めて書くまでも無く(笑)。

 (続く?)

 


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夜に音源追記!!! これが純正律の本質か? ~昼休みつぶやきシリーズ~ [音律(調律)の基礎知識]

昼休みつぶやきシリーズ

 フレット楽器の純正律の研究を始めてから色々と考えさせられることが多い。総じて、毎日が楽しくて仕方がない(笑)。

 古典調律を本格的に研究しようと思った切っ掛けは、「生楽器でのミーントーン体験」だった気がする(何しろあの「生まれて初めての生楽器による純正長3度の洪水」体験は本当に凄かった。未だ体験していない人が或る意味羨ましい(爆))。
 だから、このブログのタイトルも「ミーントーン大好き!」になっている訳だ。

 しかしながら、西洋の音楽理論を本格的に勉強しようと思ったら、やはり出発点を純正律としないと「分かるものも分からなくなる」のではないか、との感が次第に強くなってきた今日この頃である。逆に言うと、純正律を勉強することで、ミーントーンやピタゴラスを実践しても「どうしても分からなかったこと」が「あっ!そうだったのか!」と分かるようになるのではないか、と感じ始めている。

 一例を挙げよう。

 純正律(以下「PT」) vs 代表的音律であるピタゴラス(以下「PG」)、ミーントーン(以下「MT」)、(本来は論外音律であるが(爆))12等分律(以下「ET」)

 問1:純正律とこれら3種の音律との「本質的違い」は何か? 言い換えると、PG、MT、ETに共通する事項であってPTには備わっていない事項(≒性質)は何か?

 ヒント:制限時間はオクターブ(8)分&下の□を見よ!

---1(ド)分経過------


---2(レ)分経過------

---3(ミ)分経過------
---4(ファ)分経過------


---5(ソ)分経過------

---6(ラ)分経過------


---7(シ)分経過------
---8(ド)分経過------

・・はい!時間です。

 正解は、
 PG、MT、ETに共通する事項
 =音階(ドレミファソラシド)において「全音が相互に等しい」

 純正律(PT)=「全音が2種類ある」
  ということである。

 つまり、
 PG、MT、ETは、ドレミファソラシドが
「ド○レ○ミファ○ソ○ラ○シド」という構造なのに対して、
 純正律(PT)は、
「ド□□レ□ミファ□□ソ□ラ□□シド」という構造なのだ!
 (↑□一つだと小全音、□□だと大全音、以下同じ。)

 このことから何が分かるかというと、例えば、
 上記3種の音律では、
 イ短調とニ短調の短3度和音に関し、
 どちらも同じ構造すなわち「ラ○シド」、「レ○ミファ」及び音幅(すなわちPはP短3度、MTやETはそれよりは広いが純正より狭い短3度)
 になるのに対して、

 純正律(PT)は、
 イ短調とニ短調の短3度和音に関し、
 相互に違う構造すなわち「ラ□□シド」、「レ□ミファ」になるがために、
 「相互に違う音幅」になるのだ!!!!(←私的には大発見!!!!(笑))

  具体的には、イ短調の短3度和音「ラ□□シド」は大全音が入っているので
 『純正短3度(5:6)』になるのに対して、
  ニ短調の短3度和音「レ□ミファ」は小全音が入っているので
 『ピタゴラス短3度』になるのだ!

 つまり、「音階中」に構成される「長」3度の「種類」は、4種の音律のいずれも「1種類」となるが、
 「音階中」に構成される「短」3度の「種類」は、PG、MT、ETでは「1種類」となるのに対し、純正律(PT)では「純正」と「P」の『2種類』を味わうことが出来るのだ!!!

 なので、教会旋法(何故かマイナーな「エオニア(=エオリアン?)」vsどういう訳か有名で人気が高い「ドリア」)についても、PG、MT、ETで弾いても「どっちも同じじゃん!」としか感じない(はずだ)が、純正律(PT)で弾けば「全然違うじゃん!!」ということになる(はずだ)。

 面白い、何と面白いのだろう純正律理論(笑)。この調子で行けば私も音楽博士?(爆)
 

------------------------------
音源追記:
教会旋法のエオニア(=エオリアン?) vs 「ドリア」について、
先ほど録音したので音源upします。但し基準ピッチが高めです(モダンより半音高い感じ)。



順番に鳴らしてますが、低い方が純正短3度&エオリアン、相対的に4度高い方がピタゴラス短3度&ドリアです。


 いやぁ、本当、純正律は凄いですわ・・・古典調律の研究をミーントーンから始めてしまったことに今更ながら後悔しています(泣)。 読者の皆さんも、多くの人がサイト上で主張している「純正律は(実用音律として)不可能」という言葉にだまされないようにして欲しいと強く願う次第です。 「不可能」と主張している人の殆どは、「何も実験していない人」だと思います。

 例えば幼稚園で歌う歌なんて凄くシンプルだし、純正律の適用範囲のものが殆どなのだから、電子鍵盤楽器(例えばカシオ製)を純正律にした伴奏で歌えば、凄く音感の良い子供が育つと思うのですが、上の人が「不可能」と主張している今の日本の社会では難しいでしょうね。 音楽界の上の人は、子供の将来を何も考えていないのでしょうかね・・・。


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昼休み作成、公開レジュメシリーズ2(笑)「ケルナー音律の「良いとこ取り」ミーントーンを脳内設計してみる!」 [音律(調律)の基礎知識]

 
お題:昨日の昼休みに書いた内容を更に発展させてみる。

 (昨日に書いた)ケルナー音律の構造(以下の数字はセント(cent)値を用いた)
C-4- G-5-D-5- A-5-E-◎-B-5-F♯-◎-C♯-◎-G♯-◎-E♭-◎-B♭-◎-F-◎-C

 ケルナー音律の良い点(昨日の結論)
 『長3度も5度も「ギリギリ」の値を追求している。』
  ⇒
 ①C-Eの長3度が(純正よりも3セント高いが)⇒純正に感じる!!!(驚)
 ②狭い5度について、耳障りな箇所が無い。

 昨日とは違う曲で改めてケルナー音律の演奏を聴いてみよう(と書いてyoumusicのアクセス数を稼ぐ(笑))。
http://www.youmusic.jp/modules/x_movie/x_movie_view.php?cid=6&lid=2684
  ↑
 古典派時代のハ長調作品

http://www.youmusic.jp/modules/x_movie/x_movie_view.php?lid=2685
  ↑
 ロマン派時代のハ長調作品(古典派に比べて転調が大胆です)
http://www.youmusic.jp/modules/x_movie/x_movie_view.php?cid=6&lid=2785&more=related
  ↑
 20世紀の作品(嬰ハ短調)


 上記ケルナー音律の特徴を通常のミーントーンに加えるとどうなるか?
 (以下【 】部分が変更点)

C-4- G-5-D-5- A-5-E-【4】-B-5-F♯-【5】-C♯-【5】-G♯-【狼音程】-E♭-【5】-B♭-【5】-F-【5】-C

このような構造とすることにより、
E♭、B♭、F、C、G、D、A、Eの8つの長3和音については、
 ①長3度が(純正よりも3セント高いが)⇒純正に感じる!!!(驚)
 ②狭い5度について、耳障りな箇所が無い。

 というメリットを得られることになります・・・・十中八九(←リスク担保記載(汗))。

 そして、純正ミーントーンのウルフ(狼)5度音程は(5.5×11-24=)60.5-24=36.5セント広い5度になるのに対して、この音律だと、
(5×9+4×2-24=)45+8-24=29セント広い5度になるので、ウルフ5度が
36.5-29=7.5セント改善されることになります。

 さらに、純正ミーントーンの悪い長3度は(36.5-(5.5×3)+22=)36.5-(16.5)+22=20+22=42、つまり純正より42セント広い音程(音幅)になるのに対して(※ちなみに42÷3=14(平均律長3度)です。)、
 この音律だと、
(29-(5×3)+22=)29-15+22=36セント広い音程(音幅)となり、とどのつまり、(悪い長3度が)42-36=6セント改善されることになります。

 興味の有る方は、上記構造を「平均律との音程差」に換算して、電子楽器などで試されると良いでしょう・・・え、「平均律との音程差」の換算までやってくれって? すみません、ちょっと計算が続いて頭が疲れたので(泣)、気が向いたらやりますね(汗)。
 いやぁ、木曜日って結構疲れが溜まっているんですよね。金曜日は「わーい、明日から休みだぁ」ってんで浮かれているんですが、木曜日はどうもいけません(笑)。これから少し昼寝します。

 それでは皆様、今日(の昼休み)はこの辺で!



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12/8深夜補足版(昼休み作成、公開レジュメ(笑))「ケルナー音律、私はこう評価する!」 [音律(調律)の基礎知識]

お題:昼休みの小一時間でケルナー音律の良いところを抽出して誉めてみる。

 ケルナー音律の構造(以下の数字はセント(cent)値を用いた)
C-4- G-5-D-5- A-5-E-◎-B-5-F♯-◎-C♯-◎-G♯-◎-E♭-◎-B♭-◎-F-◎-C

 キルンベルガー第3音律(以下KB3)
C-5.5-G-5.5-D-5.5-A-5.5-E-◎-B-◎-F♯-2-C♯-◎-G♯-◎-E♭-◎-B♭-◎-F-◎-C

 ヴェルクマイスター第1技法第3法(以下WM3)
C-6- G-6-D-6- A-◎-E-◎-B-6-F♯-◎-C♯-◎-G♯-◎-E♭-◎-B♭-◎-F-◎-C

 ケルナー氏が著した本(「チェンバロの調律 -バッハのひびきを再現する-」(H.A.ケルナー著・郡司すみ訳、東京音楽社.))の雰囲気:
 氏は、キルンベルガー第3よりもヴェルクマイスター第3の方を高く評価している感がある。(ちなみに氏は、キルンベルガー「第2」については低い評価を下している(第52頁:「推奨できない・・・第Ⅲの調律法よりも遙かに劣っている」)。なので「第1」なんてのは「問題外」なんだろう(汗)。) 平均律を評価していないのは当然として(笑)、ミーントーンの調律替えについては第28頁でちょこっっっっっとだけ述べている(G♯→A♭への変換)。

書籍サイトです。
http://books.yahoo.co.jp/book_detail/AAF23568/
http://www.bookoffonline.co.jp/old/0012132566

 ケルナー音律に対する評価検討:
 結果的にWM3とKB3の両方の「改良版」という内容(構造)になっているのではないか。
 一言で表すと、『長3度も5度も「ギリギリ」の値を追求している。』

 ①C-Eの長3度について:
 KB3:±0(純正長3度)
 WM3:+4(純正には感じない)
 ケルナー音律:+3 ⇒純正に感じる!!!(驚)
  結論:WM3を改良した結果となっている。長3度において「純正+(約)3セント」という値は、「(現代人にとって)ギリギリ純正に感じることができる閾値」であると思われる。

 ②ホ長調のトニックとドミナントであるEとBの和音について:
 KB3:長3度が+20(ピタゴラスに近い)
 WM3:長3度が+16(平均律よりも2セント劣る)
 ケルナー音律:+17 ⇒WM3よりも1セント劣るが、KB3より3セント改善されている。この3セントは何かというと、上記C-Eの長3度で「削ぎ落とし」て「稼ぎ出した」ものと言える。(ある意味「涙ぐましい努力」といえるかも(汗))

 ③狭い5度について
 KB3:-5.5(ミーントーン5度)⇒場合により若干耳障りに感じることあり(特にギターに適用した場合)
 WM3:-6 ⇒(体質等にもよるだろうが、)耳障りに感じる人が多いのでは?
 ケルナー音律:-5 ⇒ギリギリセーフ!(笑)(ギターでも大丈夫!)

         以上、要点終わり

ケルナー音律ギターの演奏です(他にもたくさんあり)。
http://www.youmusic.jp/modules/x_movie/x_movie_view.php?lid=2687

ケルーナー音律ピアノの演奏です(他にも少しあり)。
http://www.youmusic.jp/modules/x_movie/x_movie_view.php?cid=6&lid=2775&more=related

ケルナー音律チェンバロだけ無いのが残念(YAMAHAのMysoundに投稿した記憶があるが、サイトが消滅した(泣))
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(11/17小修正)クラシックギタリスト用講座:1/6分割法(ヤング音律)とケルナー音律とヴェルクマイスター音律との比較 [音律(調律)の基礎知識]

今日の記事の趣旨:クラシックギター奏者にも分かるように、「1/6分割法(ヤング音律)」と「ケルナー音律」と「ヴェルクマイスター音律」の3つの比較説明を試みる。

    キルンベルガー第3を比較対象としない理由:ホ長調のケアが薄いので没(汗)。
    ミーントーンを比較対象としない理由:この音律は「別格」だから(笑)。
    純正調を比較対象としない理由:フレット位置が演奏可能な位置に出来るか?につき未だ検証していないため

【レジュメ】
 ヴェルクマイスター音律(第1技法第3番)の特徴

IMG_4771.jpg
   ↑
 すみません、C-Eの長三度の数値間違えました(汗)

 これが正解です、(22-(6×3))=+4セントですね。
   ↓

IMG_4774.jpg
   ↑
 言い訳:小生、「引き算が出来ない」訳じゃないんです(爆)、鉛筆で書いたり消したりしているので、これは「消し忘れ」の誤字なのです・・・(^^;) 
 でも、この誤字、みんな気付かなかったでしょ?(笑) こういう小ミスが結構多いんです、この業界(汗)


 長所:
  純正5度が多い(12個の5度の内「8つ」が純正である)。
   ⇒ギターに適用した場合の有利な点:
   ギターの開放音である④弦D-⑤弦A、⑤弦A-⑥及び①弦Eの3箇所を純正4(ないし5)度に設定できる。つまりこの3箇所については「ハーモニクス調弦」できる!

 難点:
  狭い5度が「純正-6セント」である。
  (この狭い5度の唸りを「耳障り」と感じるのは、私だけではないはずだ)

 良くもあり悪くもある点:
 平均律と比較したとき、よく使うA,E,Bの和音の長3度の響きが2セント劣化する(純正3度より16セント広い!)。一方で、A,Eの和音の5度は「完全な純正(±0.000・・セント)」である。これをどう評価するか?

--------------------
1/6分割法(ここではCスタートとなるヤング音律(ヴァロッティはFスタート))の特徴

IMG_4769.jpg

 長所:
  全体のバランスが非常~に良い。
  狭い5度の唸りも殆ど気にならない(純正-4セント)。
  しかもピタゴラス音階までちゃんと確保されている!
⇒古楽界で非常に人気が高いのも頷ける。私も大好きだし(笑)
 やや難点:
  ギターの開放弦のいずれも純正4度(ないし5度)にならない(平均律フレットと同様に「ハーモニクス調弦」できない。)。
  よく使うEの和音につき、その長3度は平均律と同じ(純正+14セント)だが、5度が平均律よりも2セント劣化しているため、その分だけ劣った響きがする。Bの和音の長3度は平均律より4セント劣化。
    ⇒※Gスタートの音律にすると、この問題が全て解消される!

 
  【↓↓ これがGスタートヤングの正体だぁ~!!(笑) ↓】
GSY撮りなおしIMG_4777.jpg


--------------------
 ケルナー(伝バッハ?)音律の特徴

IMG_4770.jpg

 長所:
  ヴェルクマイスター法に次いで純正5度が多い(12個の5度の内「7つ」が純正である)。
   ⇒ギターに適用した場合の有利な点:
   ギターの開放音である⑤弦A-⑥及び①弦Eの2箇所を純正4(ないし5)度に設定できる。この2箇所については「ハーモニクス調弦」できる!
  ※狭い5度の「狭さ」が正に絶妙!!(純正-5セント)。
   ⇒受忍限度といわれているミーントーン5度「純正-5.5セント」より約0.5セントだけ改善、これの「0.5セント」が凄く大きい!
  ピタゴラス音階も確保されている。
  
  koten君の私見; ヴェルクマイスター音律と1/6分割法の「良いとこ取り」をすることで、前者の不満点(5度の唸り)と後者の不満点(開放弦間の純正音程がない)を同時に解決した音律と評価することが可能。
 (「キルンベルガー第3と似ている」と仰る方もいるが、私に言わせれば両者は「似て非なるもの」である)


 やや難点:
 平均律と比較したとき、よく使うE,Bの和音の長3度の響きが3セント劣化する。一方で、Eの和音の5度は「純正(±0.000・・セント)」である。また、Bの和音の5度は、(純正-5セントなので、)平均律より3セント劣化した響きである。
これをどう評価するか?
 koten君の私見・・・Bの和音はともかくとして、とりあえずEの和音の長3度の響きをもう少し改善した方が良さそうである。
   ⇒そこで今回の提案音律が出来た。

 じゃ、今日はここまでってことで(汗)

---------------
【イッテツ】:おっ! いつの間にかトップページの模様が変わってるな・・雪なんか降らしちゃってどうしたのよ?
【koten】:いやぁ、もう秋じゃなくて冬ですよ、、、、今朝なんか寒くてビックリしました。で、冬眠していない(笑)今の内に表紙変えておこうと思って。

【イッテツ】:いよいよ逃げ切り体制(?)って訳か。
【koten】:そうです、寒くなると色々とおっくうになりますからね(汗)
 
 というわけで、皆さま、風邪には十分お気を付けて!!

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【徹底検証】整数比和音の核心に迫る!! [音律(調律)の基礎知識]

【今回の検証対象】
8:9:10(大全音と小全音)
20:25:32(1オクターヴを長三度分割した和音)

【本記事のレジュメ】
 kotenは、キルンベルガーの「純正作曲の技法」を読み、また、インド音楽の音階を調べている内に、以下のような素朴な疑問に見舞われるのであった。

①大全音(8:9)には本当に「協和性がない」のだろうか?
②純正律やミーントーンの減4度ないし増三度(25:32)は、本当に「ウルフ音程」なのであろうか?
 ※ティーブレイク(笑):増三和音(オーグメント・コード)は、本来、純正律やミーントーンで奏されるべきではないだろうか?
③総括:整数比和音を余りになおざり(ないし過小評価)していると、陰で「インド人に馬鹿にされる」のではないだろうか?

 さて、今宵の実験検証では、あなたの耳が『どれだけ平均律に毒されてしまっているか?』が分かるかもしれない。


----「音程検証劇場」 これより開幕です----------------------

【検証その1】:本当に大全音(8:9)には協和性が認められないのか?

 【イッテツ】:お前さん、今日は2回目の記事じゃん。どうしちゃったのよ、この頑張りようは?(笑)
 【koten】:いやぁ、整数比の和音について色々調べている内に、「西洋音楽、このままじゃ何かマズイんじゃないか?」と危機感が沸いて来てしまって、居ても立ってもいられなくなりましてね・・・あと、もう午前零時回っちゃったんで、ブログの日付けデータとしては31日のものですね、これ(泣)

 〔M〕:日付けデータはどうでも良いですから(汗)・・・一体、西洋音楽の何がマズイんですか?
 【koten】:古典音楽理論書の大ベストセラーであるキルンベルガーの「純正作曲の技法」を読んでいて、「長2度(8/9)」(すなわち周波数比8:9の大全音)に協和性が無い旨のことが繰り返し説明されているので、「何かおかしいな、この本」って感じ始めたんですよ。

 【イッテツ】:具体的にはどういった説明がされているんだい?
 【koten】:東川氏の訳本(春秋社)の34頁と35頁を拾い読みしますと、
『誰しも感ずるところでは、長2度には調和ないしは協和はない。・・・(中略)・・・短3度5/6はいつも協和音程と考えられるのにたいして、長2度8/9はきまって不協和とみなされる。・・・(中略)・・・耳にとっては8/9はすでに難しい・・・(中略)・・・8/9は確実に不協和なので、音程比7/8は、われわれの耳にとって、協和が終わって、不協和が始まる境界線であるように思われる。』
 と、もうこの2頁で、読者に押しつける&あたかも読者を一気に洗脳する(爆)かのように、「長2度(大全音)は不協和」ってことを繰り返し主張しているんですよ。何かオカシイと思いません?

 〔M〕:うーん、私は長2度(大全音)だけ特別に注意して聴いたことが無いから良く分からないですが・・。言われてみると、平均律の長2度(大全音)はそんなに綺麗な印象はないですよね。
 【koten】:いや、ここは平均律なんかじゃなくて、ちゃんとした「整数比」の和音の説明なんですってば。現代のモダンピアノ奏者ならスルーしてしまう記述かも知れませんが、例えば純正律やピタゴラス律をマスターされたヴァイオリン奏者とか金管奏者の方なら、この説明読んで「ふざけるなっ!!(激怒)」って憤慨するのが普通じゃないかなと、私思ったんですけど。
 【イッテツ】:ワシ的には確かにこの説明は嫌じゃな、ワシの愛するピタゴラスが冒涜されているような感じさえするな。

 【koten】:という訳で、私、居ても立ってもいられなくなって(笑)、先ほど純正律の8:9、9:10、8:9:10(大全音、小全音、大全音と小全音によるいわゆる「ド・レ・ミ」)を録音してみたんです。まずはこれを聴いて下さい。「ド・レ・ミ」→「ドレ(大全音8/9)」「レミ(小全音9/10)」の順で収録してます。電子チェンバロの音ですが、これでも十分に分かるはずです!!




 〔M〕:うーん、言われてみると、「レミ(小全音9/10)」よりは「ドレ(大全音8/9)」の方が遥かに綺麗とは感じますね。調和ないしは協和があるかどうかは、調和(協和)の定義が良く分からないのでコメントし難いですが。
 【イッテツ】:ワシ的には「レミ(小全音9/10)」はともかくとして、「ドレ(大全音8/9)」の方は綺麗に感じるぞ。これだけ綺麗なんだから「調和ないしは協和がある」って言いたいところじゃ。
 【koten】:そうでしょ、普通の感覚の普通の人だったら『ドレ(大全音8/9)は綺麗』って感じなきゃオカシイんですよ(笑)。トドメにこれ聴いてください。周波数比8:9:10の「全部鳴らし」ってやつです。




 〔M〕:あーー、これは綺麗! 何か体に「ビビっ!」て来ますね(笑)
 【イッテツ】:うぉ~痺れるな~!! 何か凄く良い感じじゃ。
 【koten】:これが「整数比和音」の本質ですよ。平均律で現代人が麻痺して失ってしまった「何か」がここに凝縮されているんです(笑)。

------------------------------------
 ナレーター:ここで10分間の休憩をいただきます。


---------第2部の開幕です-------------------------

【検証その2】:純正律やミーントーンにおける減4度ないし増三度(25:32)は、本当に「ウルフ和音」なのか?

 【koten】:じゃあ後半行きますね。次は可成り高度です。「反論者多発」は覚悟の上です(笑)。
 〔M〕:今度は何を検証するんですか?

 【koten】:純正律やミーントーンにおいて「減4度」とか「増三度」とか言われている周波数比25:32の和音を検証します。
 【イッテツ】:これは可成り複雑な和音じゃないか。これ、長三度としては「使い物にならない」和音なんだろ?
 〔M〕:「ウルフ三度」とも呼ばれてますよね。

 【koten】:そうです。この和音は私もずっと「不協和音」、「ウルフ三度」、「使えない音程」だとばかり思っていたんです。でも、昨日、この音程が「整数比」だと分かって驚愕して、さらには今日、インド音楽の音程を調べている内に、「それはちょっと違うんじゃないか?」、さらには『25:32すら音楽的に使いこなせないようじゃ、これはもう音楽家として失格(モグリ)ではないか?』とさえ感じ始めちゃったんですよ、実は(汗)。
 【イッテツ】:そりゃまた極端な説だね。反論来るよそりゃ(笑)。

 〔M〕:でも、今日、Enriqueさんへの追記レス(下記サイトのコメント欄)で説明されたように、
http://meantone.blog.so-net.ne.jp/2010-10-28
『インド音楽では長三度(4:5)と短三度(5:6)の中間の(三度)音程として沢山の種類の「中立音程」を使う』、この中立音程は『49:60, 40:49, 30:49, 49:80,・・・といった整数比で構成される』わけですよね。これって西洋音楽で使う整数比和音よりずっと複雑な比率ですものね。

 【koten】:それです、正にそれ。Mさんナイスフォロー!(笑) そうなんですよ。このインド音律の比率を見て、『インド人はこんな複雑な比率さえ使いこなしているのに、西洋人(さらにはキルンベルガーのあの(笑)記載)は一体何?、、何様なの?(爆)』って感じ始めちゃったんですよ。 それで、物は試しとばかりに、純正律(orミーントーン)のC-Cの1オクターブを3つの長三度、つまり①C-E、②E-G♯の2つの純正3度と、③G♯(A♭)-Cの所謂「ウルフ3度」に分けて弾いてみたんです・・・そしたらこれがまたビックリ!!!
 〔M〕:何が起きたんです?(汗)

 【koten】:ウルフなんて全然ないんです、G♯(A♭)-Cだけ弾いている分には。いやあ新発見ですよこれは。
 【イッテツ】:何じゃそりゃ? とりあえず音源を聴きたいところだね。
 〔M〕:同感です。聴きたいです。

 【koten】:じゃあ行きますよ。これです。あ、それから、この2つ目の音源では最後にワザとG♯(A♭)-C-D♯(E♭)のウルフ3和音を入れているので誤解しないで下さいね。ウルフとして聞こえるのはG♯(A♭)-D♯(E♭)のウルフ5度音程ですので。






 〔M〕:うーん。最後のウルフ5度は確かに酷いですね(汗)。25:32の減4度和音も、私の耳では「綺麗」には聞こえなかったです。
 【イッテツ】:ワシ的には、最後のウルフ5度に比べれば、25:32はそれ程ひどくは聞こえなかったな。

 【koten】:じゃあ最後にこれも聴いてください。前半が純正律のEの和音(E:G♯:B(H)=4:5:6)で、後半がEのオーグメント(5度を半音上げた)和音(E:G♯:C=20:25:32)です。どうぞ!!



 〔M〕:あ、なるほど、後半の和音もそんなに酷くないと言えば酷くない気がしないでもない(?)ですね。

 【イッテツ】:ワシ的には、前の和音は勿論じゃが、後の和音も何か「整数比」っぽい感じがしたな、確かに。
 【koten】:そうなんですよ!! 人間、耳が良くなればなる程、整数比に対する聴覚が、相当に複雑な比でも判別できるレベルまで研ぎ澄まされて来るはずなんですよ。実際インド音楽やっている人はその感覚持っている訳ですし。

 〔M〕:その「整数比」を嗅ぎ取る鋭敏な聴覚が、平均律ばかり使っていると「麻痺してしまう」ってことですね? kotenさんの仰りたいことは。
 【koten】:そうです、正にその通り!! 流石はMさん(笑)。 このままじゃ確実に、西洋音楽の人はインド音楽の人に馬鹿にされますよ・・・ってもう既にされているんでしょうけど(泣)。 だってインド人が、「あははっっっ、西洋音楽の奴らって、本っっっ当に頭が※(←ピー音)じゃないの!!! 『耳にとっては8/9はすでに難しい』なんて、それどんな音楽なんだよ! もぅ可笑しすぎて笑いが止まらないよ。」って陰で言っているのが聞こえるようじゃないですか(汗)。
 あと、これは補足ですが、昔の曲の楽譜を分析して実際にミーントーンのピアノで弾いてみると、上述した凄く広い3度やオーグメント(5度半音上げ)の和音を実に上手く使っている曲が結構あることが「確信」できるようになるんですよね。 ですので、近い内にそれを紹介したいなぁ、って思ってます。そんなところですかね、今日は・・。

 【イッテツ】:あと、お前さん、まだレジュメの「ティーブレイク」の内容を述べてないじゃん(笑)。
 【koten】:あ、そうか、そうですね(笑)。 ええと、今回実験してみて、上述した増三和音(オーグメント・コード)は、本来、純正律やミーントーンで演奏されるのが「筋」じゃないかなって思いました。いずれかの音律であれば、3つの音の周波数がキチンとした整数比(20:25:32)になりますので。
 逆に言うと、偉大な作曲家ならば、この整数比和音を曲の中で実に巧妙に上手く使っている訳で、それは純正律やミーントーンを勉強しつつ楽譜を分析すれば自ずと分かってくることであり、それに対して、平均律なんてインチキな音律(笑)使っていたら、この素晴らしい「知的価値」は逆立ちしても絶~~対に、分からない筈なんですよ、私に言わせれば(笑)。
  (【イッテツ】:やれやれ、調子に乗ってくると直ぐ「偉そう~」な論調になってくるよな、コイツ(笑))

 〔M〕:あれっ? オーグメント・コードって「3」和音ですよね? ミーントーンだと「純正よりも狭い5度」を使うので、整数比にならないのではないですか?
 【koten】:ちっちっち、Mさん読みが浅~い(笑)。オーグメント・コードは5度を半音上げるので、結果的に5度音程は使わないんですよ。(上述の例だと、純正3和音である4:5:6(E:G♯:B(H))の場合、E-B(H)が5度になるが、オーグメント・コードだとE:G♯:B♯(←つまりC)になるので、結果的にE-Cの「6度」となる。)
 1オクターブを3つの「整数比」の長3度に分割するのは、純正律もミーントーンも同じでしょ? オーグメント・コードでは、その分割配置された3つの音を使うことになるんです。
 〔M〕:なるほど~、納得です。
  (【イッテツ】:やれやれ、これも以前の「ピタゴラスコンマ無理数」論みたいに誤った情報だったりしてな(笑)、コイツ筆が滑りやすいから。読者の方も全て鵜呑みにするなよな、、、最終的には「アマチュアの独り言」だしな(爆))

 【koten】:ん? イッテツさん何か仰いましたか?
【イッテツ】:いやいや何でも(汗)。そろそろ気が済んだかい?

 【koten】:いやあ、おかげさまで。「喉につかえてた魚の骨が取れた」ような、そんな爽快感で一杯ですね今は(笑)。
 〔M〕:どういう例えですかそれは(汗)
【イッテツ】:じゃ、そろそろ終わろうぜ。 読者の皆さま、コイツの長文に付き合ってくれて有り難うな~!!

 【一同】:皆さま、良い芸術の秋を!!m(_ _)m
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WMとKBの「第3」の悲劇~秋の夜長のミステリー~ [音律(調律)の基礎知識]

WMとKBの「第3」の悲劇~秋の夜長のミステリー~

 A.ヴェルクマイスター(1645-1706、独、以下「WM」)の考案した音律である第1技法第3番(いわゆる第3法、以下「WM3」)とJ.P.キルンベルガー(1721 - 1783、独、以下「KB」)の考案した音律である第Ⅲ(以下「KB3」)を以下に比較してみる。

要点:
 どちらも「第3」だが意味合いが違う。
 一見、内容が似ているようで実は結構違う。
【共通点】
 ①純正5度(ピタゴラス5度、周波数比2:3)が沢山ある(KB3は7個、WM3は8個)。
 ②狭くした5度の内、C-G、G-D、D-Aが狭い点では共通する。
 ③完全純正和音(周波数比4:5:6)が一つも無い。
 ④純正短3度音程(周波数比5:6)も無い。
 ⑤「12の調のいずれでも演奏可能」と一般には言われている(ようだ)。
   ※但し、ローランド社の最新の電子チェンバロ(C-30でしたっけ?)の説明書では、「WM3は12の調すべてで演奏可だが、キルンベルガー第3はハ長調以外は厳しい」というようなことが書かれていた(と思う)。当時キルンベルガー贔屓だった私は思わず「むっ!」ときたので強く印象に残っているのだ(笑)。
 
 (訂正)いずれも、C♯・D♯・E♯(=F)・F♯・G♯・A♯・H♯(=C)・C♯がピタゴラス音階になる・・・と昨日書きましたが、違いますねこれ、すみません(汗)。
 WM3はピタゴラス音階になりますが、「KB3」は、F♯-C♯の5度にスキスマを配置してしまったため、ピタゴラス音階によるドレミファソラシドを生成するのに必要となる「6つのピタゴラス5度の連鎖」に一つ足りないんですね・・(ちなみに「KB1」、「KB2」ならば、C♯からDまで7つのピタゴラス5度を積み重ねるので、G♯ベース及びD♯ベースによる2種類のピタゴラス音階ができます(ですよね皆様?))。
【相違点】
 ①WM3は、ピタゴラス・コンマ(約24セント、531441/524288、以下「pc」)を4分割して4箇所の5度に配置している。
 ②KB3は、シントニック・コンマ(約22セント、81/80、以下「sc」)を4つに分けて4箇所の5度に配置し、スキスマ(約2セントの余剰値、32805/32768)をfis-cis間に配置した。
 ③WM3には純正長3度が全く無いが、KB3には純正長3度がある(c-eの一つだけだが)。
 ④WM3ではC♯ベースでのピタゴラス音階(ドレミファソラシド)ができるが、KB3では出来ない。

【音律に対するWMとKBの考え方、価値観等の違い】
【分割基準、比率に対する価値観など】
 WMは、徹底した「pc分割」主義といえる。「sc(単純整数比)+スキスマ」を考慮しておらず、結果的に、和音の「比率」に対するアプローチに欠けている。
 補足:(下記サイト参照。至る所にルート記号が出てくる(汗)。このルート記号はヴェルクマイスターの意図したもの(理想像=イデア)とは思われないが、結果的に狭い5度のイデアが「無理数」になってしまっている。 以下は私見だが、それが故に、WM音律の狭い5度は「耳障り」であり、この5度を美しく調律するのには相~当に高い技術が必要であると感じている。少なくとも私には無理だ(泣)、、各5度の唸りの数を聴いて、どうにかして整数比に丸め込んだりする技術が必要なのではないか。)
http://en.wikipedia.org/wiki/Werckmeister_temperament
 これに対して、KBは、一貫して「比率(整数比)」を重視している(すなわちイデアが有理数)。
 補足:上記のように、scはpcに比べるとシンプルな整数比であって、スキスマの方は複雑な比率となっている。scを4等分して配置したミーントーン5度は無理数(1.49534878122・・・)のようだが(野村満男著「チェンバロの保守と調律」第151頁を参照)、後述のように、キルンベルガーは、scを4等分にはせず、4カ所の5度をあくまで整数比で構成しようとした。
 スキスマについての私見:スキスマは、上記のように非常に複雑な比率ゆえ本来「ノイズ」の要因なのだが、約2セントと小さい値なので、これを5度内に組み込んでもそれほど耳障りにはならないと理解すべき、と最近考えるようになった。少し前までは、スキスマ=「長3度を純正に近づけるための『ありがたい貴重な2セント』」と位置づけていたが、人間変われば変わるものである(笑)
 以前、とあるサイトで「(pcを分割する)1/6分割法(ヴァロッティやヤング)と、(scを分割する)1/6ミーントーンと、では全然違う。後者の方が美しい!」というような記事を拝読したことがあるが、これはこういう意味だったのかぁ!(凄く納得&恐れ入りましたm(_ _)m)と改めて感じた次第である。(※補足:ただ小生、両音律の違いを未だ実際に試していないので、いずれは実験する必要があろう。音律論者は往々にして、このように実験の裏付けなしに発言することがあるので、読者は注意が必要であり、決して全てを鵜呑みにしてはいけない(笑)。結局、信じることのできる最後の拠り所は、他でもない自分の耳(音楽的な素養や経験等に裏付けられた聴覚)なのである。)

【純正長3度】
 WMは、発表した音律で純正長3度をことごとく放棄している。これに対して、KBは、発表する毎に純正度が低い妥協的な音律となって行ったが、それでも最後まで純正長3度を放棄しなかった。(但し、「第3」にすることで、ピタゴラス音階、ドミソ等の完全純正和音、純正短3度のいずれも失われてしまった。)
【vsミーントーン】
 両者ともミーントーン(中全音律)に対抗ないしこれを打破する音律(全ての調で演奏可能な音律)を作ろうとした姿勢が伺える。
 キルンベルガーは、「純正作曲の技法」中でミーントーン(中全音律)に全く言及していない(ミーントーンが好きでなかったのか?)。しかしながら、第3を発表することで、KBは結果的に大衆のミーントーン人気に「屈した」形になったと捉えることもできるのではないか(一種の敗北宣言?)。

【「第3」による悲劇】
 WM「第3」の普及によって何が起こったか?
 WM「第3」の(6セント狭い)耳障りな5度により、『受忍限度5度』の基準がここで確立されてしまったのではないか。
 言い換えると、純正律(Just intonation)やキルンベルガー第1などの22セント狭い(D-A)5度、キルンベルガー第2の11セント狭い(D-A)5度は、「あの(6セント狭い)WM3よりさらに狭いんだから、これは『試すまでもなく』聴くに堪えない(に違いない)」というイメージが植え付けられてしまったのではないか。
  ⇒私はこれを『Wの悲劇』と呼びたい(笑)。

 (補足:「純正作曲の技法」中でKBは、5度の受忍限度は「半コンマまで(←ここでは1/2sc(約11セント)の意である。)」ということを述べている。蛇足で言うと、KBは、この記述で、D-A、A-Eがそれぞれ半コンマ狭められた「KB2」の正当性を強く主張しているのだが、それと同時に、D-Aが1コンマ狭められた「KB1」を自己否定(少なくとも間接的に自己批判)してしまったことになる。)

 しかし、純正律及びキルンベルガー1,2などの狭い(D-A)5度は、「整数比」である。
   キルンベルガー1の狭い(D-A)5度の周波数比は、27:40
  (40/27=1.48148148・・の循環数である。)
   一方、キルンベルガー2の狭い(D-A)5度の周波数比は、けっこう複雑な比である(と書いてお茶を濁す(汗)・・・ちなみに「純正作曲の技法」中でKBは、「第2」におけるAの音程は、(Cの周波数を1として)「270/161」と定義している(同訳本(東川清一訳、春秋社)の第18頁参照)。つまり、長6度のC:Aの比率が161:271である(純正音程だと3:5)。
 とすると、・・・・ええとですね(汗)、「第2」におけるD(9/8)とA(270/161)の比率は、
(9×8/8):(270×8/161)だから、
 9:(2160/161)になって、これは即ち、
(9×161):(2160×161/161)になって、
1449:2160だけど、これはどちらも9で割れるから、
161:240か・・・これで合ってるよね(汗)。結構シンプルかも!(笑))

 (蛇足:上記のように、KBは、数の比率を非常に重要視しているのですが、一方で、「純正作曲の技法」中で、大全音(「8:9」の比率)には「協和性」が認められ難い旨を述べているんですよね・・・これはちょっと書きすぎじゃないか(ぷんすか!)と思うのは私だけでしょうか?(小生、最近になり、「大全音の音程は非常に美しい」と思えるようになりました。) これに対して、エマヌエルバッハの曲には、あたかも「この記述を批判しているのでは?」と思えるような書法が結構出てくるんですよね・・・これ、分かる人には分かりますよね?)

 それと、下記参照サイトにもあるように、ヴェルクマイスター自身は、白鍵の多い曲ならば「第3」ではなく「第2技法4番」を使うべき旨を示唆しているにも関わらず、現在では「第3」がオールマイティな音律として扱われ、WMの他の音律は全て忘れ去られてしまったのも、ある意味「悲劇」といえるのかも知れません。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1229648842

 KB「第3」の普及によって何が起こったか?
 上記WM「第3」の悲劇と相まって、より純正度の高いKB「第1」「第2」の存在が完全に忘れ去られてしまった。特に、KBが「純正作曲の技法」中で「最良のもの」と力説している第2の存在が忘れ去れたのみならず、「純正作曲の技法」中に書かれているのは「第3」であるとの誤解まで広まってしまった。これは悲劇以外の何ものでもないでしょう。

 【補足】:それと、上述のように、「第3」ではC-G-Dの5度も純正で無くなってしまったため、これによりピタゴラス音階も無くなってしまったのは悲劇ですよね。あと、第3音律を最初に提案した1779年のフォルケルへの手紙での提案は、4つの5度が「ミーントーン5度」じゃなかった可能性がありますね。下記は、ケレタートの「音律について(下巻)」の第213頁です。(「5度の縮小」の所をご参照あれ!)
IMG_4676.jpg

上記のように、4つの5度の縮小度が「不均等」になっていて、D-Aが一番狭く、C-Gが比較的純正に近いですよね・・・もしかしてキルンベルガーは、自分の音律が「ミーントーン化」することに最後まで抵抗したということでしょうか(?)。 ちなみにケレタート著「音律について」の上巻では、キルンベルガーが提案した各5度の比率値が明記されております。

IMG_4682.jpg

 これら各5度の広狭度も計算で確認せなあかんですかね(汗)・・・いやぁ、面倒ですわこれ(泣)、、、音律研究って大変でんがな(自爆)。

 話しの落ちとして、KBの「第1」「第2」は本当に使えない音律なのだろうか?というところまで言及したかったのですが、そろそろ制限時間がやって来ました(泣)。と言うわけで、今日は「秋の夜長の「第3」の悲劇」を書いてみました。

 それではみなさま、良い芸術の秋を!

【補足】:ケレタート著「音律について」の上巻の第59頁では、
 『自分の<<正しい作曲技法>>はバッハの理論であるというキルンベルガーの主張は、キルンベルガーによって提示された音システムはバッハのものであるということを意味するが、この主張はバッハの作品の音程を分析することによって、真実であることが証明された。』
 とか、色々書いてありますね。 これが本当だとしたら、鍵盤楽器奏者は、「キルンベルガー第2をもっと研究せな、お話しになりまへん!!」ってことになりますがな。 あんはん、こりゃあ、えらいこったっせ~!!

 というわけで、最後にキルンベルガー「第2」による演奏upをそっと加えておく私でした(笑)。

http://www.youmusic.jp/modules/x_movie/x_movie_view.php?lid=6046

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音律におけるセント(cent)を用いた様々な表記法及び数値計算法 [音律(調律)の基礎知識]

今日のお題:音律におけるセント(cent)を用いた様々な表記法及び数値計算法

【koten】:ええと、今日は長いこともあり、茶化さずに独り(?)でやります。

-----導入部----------------------

 前回まで、ピタゴラス・コンマ(P.C. すなわち純正五度を12回積み重ねて出来る約24セントの余剰量)とシントニック・コンマ(S.C. すなわちピタゴラス(純正)五度を4回積み重ねて出来る長三度(←別名「ピタゴラス三度」)と純正長三度との差分)について学習してきました。また、さらなる基礎知識として、『西洋音楽では伝統的に長三度の純正が重要視されて来た』こともお伝えしました。これだけ分かれば音律論が面白いようにドンドン分かってくるはずです。

 と言うわけで、今日はセント(cent)を用いた様々な表記法と数値計算法について学んで行きましょう。

-----序論----------------------

 音律をセント(cent)を使って表記するのに、

 【その1】:(12個の)各五度の幅(3桁の値)を書いておく表記法

 【その2】:(12個の)各音につき、平均律との音程(音高)差を書いておく表記法

 【その3】:(12個の)各五度の幅を純正五度を基準として書いておく表記法(1桁又は2桁のセント値)

 【その4】:(12個の)各五度の幅を平均律五度を基準として書いておく表記法(同上のセント値)

 などがあります。
 この内のどれか1つが明らかであれば、上記他のいずれにも変換することができます。

 逆に、どれか複数の表記法を使って相手に音律のデータを伝える場合には、計算を間違ったり誤記があると、相互に矛盾が生じて相手が混乱してしまうので、最細の注意が必要となります(汗)。

 ちなみに音律をセント(cent)を使って表記することの便利さは、例えば、基準ピッチ(例えばAのHz値)をどのように設定しても使えること、音程を算出するのに簡単な足し引き算を使えば済むこと(つまり比率値を使った掛け算、割り算を行う必要がなくなること)、などが挙げられます。

-----本論----------------------

 さて、いよいよ小生の「うねうねフレット19世紀ギター」の音律に話を移します。
 まずはこのギターを使った昔(2007年11月)の演奏から・・これはソルの「3フレットまであればOK」の曲の内の一つである、エチュード作品31-2(イ短調)です。考えてみると、このギターでの演奏up世界発信は初ですね(笑)。




 この音律は、基本的には「Gスタートのヤング音律」のバリエーションとも言えるものでして、フレット改造の完成時に、キヨさんから次のような情報をいただきました。

>Gからの五度のセント値を記しておきます。
G-D:698  D-A:698  A-E:696  E-B:700  B-F#:698  F#-C#:698
C#-G#:702  G#-D#:702  D#-B♭702  B♭-F:704  F-C:702  C-G:700

        ↑ 
 これは、【その1】の「(12個の)各五度の幅(3桁の値)を書いておく表記法」に該当します!

 ここで必要となる基礎知識は、一部復習になりますが、
「セント(cent)」という単位は「十二平均律」を想定して作られたものであり、十二平均律では半音が100セント、長三度が400セント、五度が700セント、1オクターブが1200セントになる、ということです。

 なお、前回学習したように、十二平均律の五度は純正五度よりも2セント狭いものなので、純正五度は702セントになります。また、十二平均律の長三度は純正長三度よりも14セント広い(高い)ものなので、純正長三度は386セントになります。

-----五度の幅(数値)の評価--------------------

 では参りましょう!!
(1)C-Gの700セントとはいかなるものか? そう、これは十二平均律の五度です。純正五度よりも2セント狭い(わずかに唸りのある)五度です。
 同様に、E-Bも700セントなので、これも平均律の五度であることが分かります。

 (2)次、G-Dの698セントとはいかなるものか? 上記のように、純正五度が702セントなので、702-698=4です。純正五度よりも4セント狭い五度です。平均律の五度よりも2セント狭い五度です。音律に詳しい方ならば「ピタゴラスコンマ(24セント)を1/6に分割したもの」と直ぐに分かるでしょう。
同様に、D-A、B-F#、F#-C#も698セントなので、純正五度よりも4セント狭い(平均律よりも2セント狭い)五度であることが分かります。

 (3)では次、A-Eの696セントとは如何なるものか? もう分かりますね。純正五度が702セントなので、702-696=6です。純正五度よりも6セント狭い五度です。この6セント狭い五度(ヴェルクマイスター法の五度)というのはナカナカのくせ者で、人によっては耳障りな響きに聞こえます。かくいう私もヴェルクマイスター法の五度はやや苦手です(汗)。では何故この五度を採用したかって? 実はこれ、キヨさん提案による音律なんですよ(汗笑)

 (4)どんどん行きましょう・・C#-G#の702セントとは如何なるものか? これは上述したように、(周波数比2:3の)純正な五度(ピタゴラス五度)です。G#-D#、D#-B♭、F-Cにも純正五度があります。
 「ギターではあまり使わない五度が純正五度になっているぞ」「これは何故なのか?」と思った方は非常に鋭い人です。それは要するに、昨日学んだように、純正五度を集めても(積み重ねても)綺麗な長三度が出来ないからです。西洋音楽では伝統的に長三度の純正が重要視されて来たため、長三度を純正に近づけるためには五度を狭くしなければならないのです。そして、ピタゴラス・コンマが-24セント分しかないため、これを効率的(音楽的?)に振り分けようとすると、「良く使う調の五度に優先的に配分する」ことになるため、あまり使わない調の五度には、いわば「美味しい栄養の素」が回ってこない(笑)と言うわけです。

 (5)最後、B♭-Fの704セントとは如何なるものか? これは、純正五度よりも2セント「広い」五度です。この音律では、
 C-Gが純正よりも2セント狭い
 G-Dが純正よりも4セント狭い
 D-Aが純正よりも4セント狭い
 A-Eが純正よりも6セント狭い
 E-Bが純正よりも2セント狭い
 B-F♯が純正よりも4セント狭い
 F♯-C♯が純正よりも4セント狭い
 設定になっているため、その総量は2+4+4+6+2+4+4=26(実際は負の符号が付くので-26セント)となります。つまり、この音律では、五度の狭める総量を欲張って設定していて、ピタゴラスコンマの24(マイナス24セント)よりも2セントだけ狭い値としているのです。
 そのため、どこかで2セントの辻褄合わせ(汗)をする必要があり、これをB♭-Fに持ってきたという訳です。このように、「(良く使う調の長三度を出来るだけ綺麗にするために)狭い五度を欲張って配置し、(そのトレードオフとして)どこかに広い五度が出来る」という設定は、殆どのミーントーン系の音律に現れます(いわばミーントーンの常套手段)。

 以上のように、この音律では、(696,698,700,702,704セントという)5種類の幅の五度が使われていることが分かります。
 そして、この音律を今までのように五度圏サークル図に直すと、以下のようになります。
C(-2)G(-4)D(-4)A(-6)E(-2)B(-4)F#(-4)C#(0)G#(0)D#(0)Bb(+2)F(0)C

        ↑
これは、【その3】の
 「各五度の幅を純正五度を基準として書いておく表記法(1桁又は2桁のセント値)」に該当します!
        ↓

IMG_4579.jpg


-----長三度の幅の算出--------------------

 さぁ、もうお分かりの通り、この音律の長三度については、
C-E(ハ長調):S.C.(即ち22)-16=+6(昨日書いたヴァロッティの長三度と同じ、十二平均律よりも8セント改善))
G-B(ト長調):22-16=+6(同上、十二平均律よりも8セント改善)
D-F#(ニ長調):22-16=+6(平均律よりも8セント改善)
A-C#(イ長調):22-16=+6(平均律よりも8セント改善)
E-G#(ホ長調):22-10=+12(平均律より2セント改善)
B-D#(ロ長調):22-8=+14(平均律と同じ)
F-C(ヘ長調):22-10=+12(平均律より2セント改善)
Bb-D(変ロ長調):22-6+2=+18(平均律より4セント劣る)
Eb-G(変ホ長調):唯一のピタゴラス三度(平均律より8セント劣る)
C#-FとG#-C:ピタゴラス三度より2セント広い(平均律より10セント劣る)
 となります。

----十二平均律との音高差の算出----------------

 次に、この音律の各音を、十二平均律との音高差で表してみます。
 これは上述の【その2】の「各音につき、平均律との音程(音高)差を書いておく表記法」に該当します。

A(イ音)基準で行くと、
 ①A-Eの五度は、平均律では-2なのに、ここでは-6と狭くなっています。つまり、Aが同じ音高(±0セント)だとすると、この音律の方がE音が「低」いのです。どれだけ低いかというと、
 -6-(-2)=-6+2=-4セント、つまり4セントだけ低いです。

 ②次に、E-Bの五度は、平均律もこの音律も-2です。そこで勇んで「Bの音が平均律と同じ高さか?」と言うとそうではありません(汗)。前の数値(いわば実績)が繰り越されることを考慮する必要があるので、ここでは-4セント、つまりB(H)音は、平均律よりも4セントだけ低いことになります。

 ③同様にして、F#、C#、G#、D#、・・・が計算できます(但し、実績値の繰り越しが段々と増えて行き、次第に煩雑となり計算が間違えやすくなっていきますので要注意です(汗))。

 ④逆に、Aから「左回り」に五度の音高差を計算してみます。
A-Dの五度は、平均律では-2なのに、ここでは-4と狭くなっています。つまり、Aが同じ音高(±0セント)だとすると、この音律の方がD音が「高」いのです。どれだけ高いかというと、
 -2-(-4)=-2+4=2セント、つまり2セントだけ高いことになります。
 (①では平均律の-2を引いていたが、この左回りの計算ではこの音律の値を引くことがポイントです。)

  ⑤次に、D-Gの五度は、平均律では-2なのに、ここでも-4と狭くなっています。つまり、仮にDの音が同じ音高(±0セント)だとすると、この音律ではG音が2セント高いことになりますが、②で学んだように前の数値が繰り越されます。具体的には、D音は実際にはこの音律の方が2セント高いので、
 2+2=4となり、この音律のG音は、平均律のそれよりも4セント高いことになります。

 ⑥同様にして、C、F、B♭、E♭・・・が計算できます。

 ⑦ちなみに、③で計算したD#の値と⑥で計算したE♭の値が合致していない場合には、どこかで計算間違いをしています(汗)。

 ⑧ここではギターの音律なので、チューニングするためには、1~6弦の開放弦の音であるEADGB(E)の値が分かれば十分です。
 ⑨なぜなら、このチューナーが使えるからです(えっへん!)

IMG_4580.jpg

   ↑
 平均律との音高差が1セント単位でデジタル表示される機能付きのもの(SEIKOのSAT501)

 ⑩というわけで、このギターの各開放弦における十二平均律との音高差は以下の通りです。

1&6弦の開放弦のE音=-4セント
  5弦の開放弦のA音=±0セント
  4弦の開放弦のD音=+2セント
3弦の開放弦のG音=+4セント
2弦の開放弦のB音=-4セント

---むすび---------------
 以上、長文&数字が沢山になりましたが、お分かりいただけたでしょうか?

 初学者の方は、音律論や古典調律の話しになると「訳の分からない数値が沢山出てくる(悩泣)」ように感じるかと思われますが、「何気ない一見無味乾燥な数値の裏には実はこんなにも沢山の意味があったのだぁ!」ということが上手く伝わればなぁ、と思った次第です。

                      それではまた!!

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(20121001補足)シントニック・コンマの概念につき、小学生でも分かるような説明を試みる! [音律(調律)の基礎知識]

今日のレジュメ:

長三度音程=五度音程を4つ重ねたもの(と考えることができる)

例えば、C-Eの長三度は、C-①-G-②-D-③-A-④-E

ピタゴラス律の長三度(但し基準音から4オクターブ上)は、3/2*3/2*3/2*3/2(すなわち(3÷2=1.5の4乗)=81/16=5.0625になり、純正長三度である5/4=1.25の倍数(すなわち1.25*2*2=5.0)と合致しない。
 この差分が「シントニック・コンマ」である(約22セント)。
 ピタゴラス律の長三度は、正確に表現すると、81/(16*4)=81/64(=1.265625)であり、一応「整数比」であるが、きわめて単純な整数比である純正長三度に比べると、協和性および美しさにおいて全く劣る(と言われている)。

平均律では、各五度を2セント縮めているが、長三度は2(セント)*4(個)=8セントしか改善されていない。すなわち、平均律の長三度は、22-8=14セント高い(広い)ものであり、この状態から純正三度にするには14セント低く(狭く)することが必要。

これに対して、ミーントーンでは、11個の五度を5.5セント縮めているので、5.5(セント)*4(個)=22セントとなり、長三度が純正となる。

リュートやビオラダガンバで良く用いられる(と言われている)1/6分割法は、ピタゴラスコンマ(-24セント)を6つに分割し、その分割された-4セントを、連続した6箇所の五度に分配したもの。この音律では、最も綺麗な長三度は、4(セント)*4(個)=16セント改善され、22-16=6セント、すなわち純正三度まで6セントだけ高い(広い)レベルとなる。
(20121001補足:その後色々調べたところ、リュートやビオラダガンバでは、ピタゴラスコンマ(24セント)の6分割よりも、シントニックコンマ(約22セント)を6分割して配置した調律法の方が一般的(伝統的な調律法)だったようにも思えます。)

----本論--------------------

【koten】:今日はレジュメ書いてみたけど、あれで分かるかなぁ?
【イッテツ】:ここに読みに来る8割くらいの人は「もう分かってるよ、こんなの常識じゃん!」って思っているだろうな(笑)
〔M〕:でも、初学者の方もいることだし・・・「小学生でも分かる」ようなブログを目標としているんですよね。それって結構な野望ですよね(汗)

【koten】:あははは、じゃあ、最初からかみ砕いて解説しますか。
 ええと、西洋音楽では、長三度音程(例えば、ハ長調の音楽では、C(ハ音)-E(ホ音)の長三度)を沢山使いますが、音律論や鍵盤楽器の調律(実践)などでは、長三度=「五度音程を4回重ねて出来るもの」と考えます。

〔M〕:例えば上述のC(ハ音)-E(ホ音)の長三度の場合、C-Gの五度(これで1回)にG-Dの五度音程を重ねて(これで2回)、さらにD-Aの五度音程を重ねて(これで3回)、最後にA-Eの五度音程を重ねると、C(ハ音)-E(ホ音)の長三度が出来るって考えるんですよね。

【イッテツ】:うむ、そしてここからが重要じゃ! いままで勉強したピタゴラスの五度(すなわち周波数比2:3の純正五度)を4回積み上げて出来る長三度は、周波数比4:5の純正長三度にはならず、それよりも高い(幅広い)音程になってしまうのじゃ!

【koten】:ええと、具体的に計算すると、純正五度(ピタゴラス五度)を4つ積み上げてできる長三度(但し基準音から4オクターブ上)は、3/2*3/2*3/2*3/2(すなわち(3÷2=1.5の4乗)=81/16=5.0625になるので、純正長三度である5/4=1.25の倍数(すなわち1.25*2*2=5.0)とは合致しないってことですよね。

【イッテツ】:そうじゃ、そしてこのピタゴラスの5度(純正)を4回重ねて出来る長三度と、純正長三度との差分が『シントニック・コンマ』と呼ばれているものなのじゃ!
〔M〕:この差分の値は、電子チューナーで図ると、約「22セント」になりますよね。

【koten】:ええと、時間が無くなってきたのでほぼ棒読みしますと(汗)、ピタゴラス五度を4回重ねてできる長三度は、正確に表現すると、81/(16*4)=81/64(=1.265625)であり、一応「整数比」なんですが、極めて単純な整数比である純正長三度に比べると、協和性および美しさにおいて全く劣る、と言われてますよね。
 図を示しますか・・・はい、どうぞ。

IMG_4578.jpg

〔M〕:現代で普通に使われている十二等分平均律では、全ての五度を2セントずつ縮めていますが、長三度は2(セント)*4(個)=8セントしか改善されていません。
 ここで図を示します・・・はい、こちらを御覧ください。

IMG_4576.jpg

 すなわち、十二平均律の長三度は、22-8=14セント高い(広い)ものであり、この状態から純正三度にするには14セント低く(狭く)することが必要なのです。


【イッテツ】:ほっほっほ、ここでワシの番か、嬉しいのう。
これに対して、ミーントーン(中全音律)では、11個の五度を約5.5セント縮めているので、5.5(セント)*4(個)=約22セントとなり、主要な8つの長三度が純正となるのじゃ。この図を見るがよい!

IMG_4577.jpg


http://www.youmusic.jp/modules/x_movie/x_movie_view.php?lid=2539
〔M〕:(そしてここでこのミーントーンギターの演奏を無理矢理聴かせてアクセス数を稼ごうって魂胆ね(汗))

【koten】:ちなみに、リュートやビオラダガンバで良く使われている(らしい)「1/6分割法」という音律は、ピタゴラスコンマ(-24セント)を6つに分割し、その分割された-4セントを、連続した6箇所の五度に分配したものです。
 ここで図を示します・・・図示のものは「ヴァロッティ」という人が考え出した音律ですが、「ヤング」という人が考案した音律で-4セントをCから分配する方法も良く使われています。

IMG_4575.jpg

 この音律では、最も綺麗な長三度は、4(セント)*4(個)=16セント改善され、22-16=6セント、すなわち純正三度まで6セントだけ高い(広い)レベルとなります。

(20121001補足:その後色々調べたところ、リュートやビオラダガンバでは、ピタゴラスコンマ(約24セント)の6分割よりも、シントニックコンマ(約22セント)を6分割して配置した調律法(それを11箇所に配置する1/6ミーントーンや、それを6箇所に配置するいわゆる「ジルバーマン」)の方が当時の一般的な調律法だったような雰囲気(いわゆる「匂い」)を感じます。この問題に関しては外国のサイトを色々と調べると参考になるかと思われます。)

シントニック・コンマの解説としては、こんなところですかね?

【イッテツ】:シントニック・コンマ(-22セント)の値はピタゴラス・コンマ(-24セント)の値と近いとか色々あるが、それは先日ぺかっちさんにコメント欄で先に言われてしまったしな(泣)
http://meantone.blog.so-net.ne.jp/2010-07-06

〔M〕:それって何だか「笑点」の喜久扇さんみたいですわ(笑)
【koten&イッテツ】:なるほどぉ、喜久扇さんかぁ~~ あっはっは、これは傑作・・・は~あ(脱力)

〔M〕:こんな感じですが、小学生の皆さま、シントニックコンマについて分かって頂けましたでしょうか?

【一同】:それではまた!


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リベンジ! ピタゴラスコンマを力ずくで計算する(その2) [音律(調律)の基礎知識]


【koten】:う~ん、昨日の記事、mixiマイミクのTさんからお叱りを受けちゃったです(泣)
【イッテツ】:要するに、「単純に3を掛けるだけだと正確でない& 読む人(特に初学者)が理解できない場合が有り得るので、ちゃんと正確に計算しろ!」ってことだろ?

〔M〕 :ふぇ~音律(調律)論って、結構厳格なんですねぇ(しみじみ)・・
【koten】:まぁねぇ~、この分野は、数値が少しでもズレると意味が全く変わっちゃう場合が多いですよね。特にセント値だと、5度の幅が0.5セント違うだけで全く別のものに感じることあるし(例えば、ケルナー音律の-5セント狭い5度と、ミーントーンの-5.5セント狭い5度と、ヴェルクマイスター法の-6セント狭い5度の如し)。

【イッテツ】:そんじゃ、今日は昨日のリベンジと行くか!
【koten】: 行きましょうか。
〔M〕 :頑張ってくださいね~(←他人事)

【koten】:何言ってるの! Mさんがやってくれなきゃだよ(笑)。
〔M〕 :えっ何? 何で私がやるんですか?(困惑)
【イッテツ】:まぁ読者サービスってことで。こんなツマンナイ計算、普通の人じゃぁとても12回分も読んでられないって! 楽しく読むためには、我々が面白おかしく解説しないとさ。

〔M〕 :はあぁ・・そうですか、分かりました、それなら私がやりますよ。
【koten】:そうこなくっちゃ!


---リベンジ! ピタゴラスコンマを力ずくで計算する(その2)-------

〔M〕 :こんばんは、Mです、ええと、これからピタゴラスコンマを力ずくで計算します(こっそり電卓使いますけどね(笑))。
 本日のここでのルールは、
 ※初期値であるA(イ音)の値を「55」ヘルツ(Hz)に設定する。
 ※5度間の音の間隔につき、「厳格な純正5度」とし、単純に3を掛けて「純正5度+1オクターブ」としてお茶を濁すことは禁止する。(要するに、元の音に「3」を掛けて「2」で割る、言い換えると、元の音に1.5を掛けるようにする。)
 ですね。では行きますよ~!

① まず、55ヘルツのA(イ音)から純正5度(周波数比2:3)でE(ホ)の音を作ると、
(元の音に「3」を掛けて「2」で割る、換言すると1.5を掛けることになるので、)
 55×3÷2、すなわち、55×1.5=82.5(Hz)となる。
(【イッテツ】:ひそひそ・・初っぱなから小数点が出てきたな(汗)【koten】:ひそひそ・・出てきましたね。この先どうなってしまうのやら)

② 次の5度(B(ロ)音)を純正5度で作ると、同様に、
 82.5×1.5=123.75
   (【イッテツ】:ひそひそ・・あ”~小数が第2位まで行っちゃったじゃん、煩・雑・~(泣)【koten】:ひそひそ・・まぁまぁ落ち着いてイッテツさん、今日は少数とトコトン戦いましょうよ・・)

③ 次の5度(F#(嬰ヘ)音)を純正5度で作ると、
 123.75×1.5=185.625
   (【イッテツ】:ひそひそ・・これってさぁ、1回計算する毎に小数の桁が1個増えて行くんぢゃないか?【koten】:ひそひそ・・どうもその気配が漂ってきましたね(汗))

④ 次の5度(C#(嬰ハ)音)を純正5度で作ると、
 185.625×1.5=278.4375
   (【イッテツ】:ひそひそ・・ぐわぁ! 早くも少数の桁が整数の桁を上回った!【koten】:ひそひそ・・「もうどうにでもしてくれ!」って感じですね(汗))

⑤ 次の5度(G#(嬰ト)音)を純正5度で作ると、
 278.4375×1.5=417.64875

   【イッテツ】:あ”~?小数が5桁かよ・・勘弁してほしいよな、もう(汗)
   【koten】:これ何ですかね? 何かもう「端数⇒不協和音」って感じ? 純正5度を積み重ねているのに協和音が出来てる感じが全っ然しないですよね!?
 〔M〕:ちょっと! 表に聞こえてます(怒)!「ひそひそ・・」モードでやって下さいよ、まだ半分も行ってないんですから。
  (【イッテツ&koten】:はーい(しょぼーん))

〔M〕:続き行きますよ、ええと、
⑥ 次の5度(D#(嬰ニ)音)を純正5度で作ると、
 417.64875×1.5=626.473125
    (【koten】:ひそひそ・・うわっ、ついに9桁(汗)・・昔の8桁の電卓だとエラー表示ですよね 【イッテツ】:ひそひそ・・ふっ、ワシ、もぅどうでもいいよ・・)

⑦ 次の5度(A#(嬰イ)音)を純正5度で作ると、
626.473125×1.5=939.7096875
    (【koten】:ひそひそ・・あ~なんだかなぁ・・これだから1.5を掛けるのってやりたくなかったんだよなぁ  【イッテツ】:ひそひそ・・いいんじゃないの? どうせ「派生音」だし 【koten】:ひそひそ・・イッテツさん、美人のMさんに叱られたからって、そんなに投げやりにならないでくださいよ~(汗))

⑧ 次の5度(F(ヘ)音)を純正5度で作ると、
 939.7096875×1.5=1409.56453125
    (【koten】:ひそひそ・・ほらほら、「幹音」なのにこんな有様ですよ(泣)【イッテツ】:ひそひそ・・うぅぅ~ワシの信奉するピタゴラス(の純正5度)がこんな半端な数字に~(号泣))

⑨ 次の5度(C(ハ)音)を純正5度で作ると、
 1409.56453125×1.5=2114.346796875
    (【koten】:ひそひそ・・あれ~少数の桁が9桁ですよ。。もう目も当てられない。【イッテツ】:ひそひそ・・本当、「純正音程」って数字じゃ無いよなこれ!)

⑩ 次の5度(G(ト)音)を純正5度で作ると、
2114.346796875×1.5=3171.5201953125
    (【koten】:ひそひそ・・これ入れてあと3回です、頑張りましょう。 【イッテツ】:ひそひそ・・ふっ、ワシらが何を頑張るんだか(汗))

⑪ 次の5度(D(ニ)音)を純正5度で作ると、
 3171.5201953125×1.5=4757.28029296875
   (【koten】:ひそひそ・・それにしても、windowsに附属している電卓って便利ですよね。桁数も多いし。【イッテツ】:ひそひそ・・でもさぁ、答えの数字をコピペできないじゃん、ケチだよなwindows附属電卓。書き写しているときに書き間違いが発生するんじゃね?)

⑫ お疲れさまでございます(汗)・・いよいよ最後の5度(A(イ)音)を純正5度で作ると、
 4757.28029296875×1.5
  =7135.920439453125(Hz)

 【koten】:おー!! やりましたね。
【イッテツ】:うむう、Mさん御苦労であった!

〔M〕 :未だ終わってないです~。ええと、これを元のAの音の55Hz又はそのnオクターブ上の音(110,220,440,880ヘルツ・・)に合うかどうか検証するときには、2の倍数で割れば良いので、
 7135.920439453125÷2=3567.9602197265625
 3567.9602197265625÷2=1783.98010986328125
1783.98010986328125÷2=891.990054931640625
891.990054931640625÷2=445.9950274658203125
445.9950274658203125÷2=222.99751373291015625
 222.99751373291015625÷2=111.498756866455078125
 111.498756866455078125÷2=55.7493784332275390625(ヘルツ)
 となって、やはり今回も、元のA(イ音)の数値(55ヘルツ)とは合致しませんよね~この差(約24セント)が「ピタゴラスコンマ」の正体ってことで

IMG_4571.jpg

 これで、めでたしめでた・・・えと、あらら? 前回と微妙~に値が違いますよ!?
http://meantone.blog.so-net.ne.jp/2010-07-06

【koten】:前回(6年前)は、使った電卓の有効桁数の関係で、どこかで丸めた(値を切り捨てた)のかも知れませんね(汗)・・マイミクのTさん、もしかしてこの事を言いたかったのかなぁ。
【イッテツ】:って言うか、この計算も果たして合っているのかいな?
【koten】:今回使った電卓は、桁数多いし、前回(6年前)に使ったものよりは性能良いと思うんですけどね・・
 
【イッテツ】:ま、いいわな、雰囲気だけでも味わって(?)もらえれば・・(←いいのかそれで?(汗))
【koten】:○○大学古典ギタークラブの皆さま、今回の解説は分かりやすかったでしょうか?(汗)

 【一同】:それではまた!





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ピタゴラスコンマの概念を(今さら&偉そう~に)解説してみる [音律(調律)の基礎知識]

 【koten】:さてさて、今日もやって来ました、「ミーントーン大好き!」のコーナー(☆◇やんややんや◇☆)
 【イッテツ】:今日は何の議題かいな?
 【koten】:今日は音律の議論をする上で必ず知っておかなければならない「ピタゴラスコンマ」の解説でもしましょうか?

 〔M〕:それ、ここに来るような人はみんな知っているのでは?(汗)
 【koten】:いや、最近、○○大学古典ギタークラブの人が読みに来てるはずだから、その人達のために。あと、昨日の19世紀うねうねフレットギターの音律の数値を発表しようと思ったのだけど、その「数値の意味」を読者全員に理解してもらうためには、基礎知識の講義もしておかないと、、、でしょ?

 【イッテツ】:出来るだけ多くの人に理解してもらおう&布教しようって算段か・・お前さん、ナカナカやるじゃないか(笑)
 【koten】:何せ「悪」ですからね(笑)
 〔M〕:それじゃ、早速はじめましょうよ。

 【koten】:ほいほい・・・ええと、○○大学古典ギタークラブの皆さま(特に現役生の方)、クラシックギターでは「即効性」のない知識かも知れませんが、「ピタゴラスコンマ」は結構重要&分かると非常に面白いものですので、まずはこれだけでも知っておいていただけると嬉しいです。
 ちなみに当クラブのOB会MLに入っている方は、ここをクリックすれば解説に辿りつけます。

http://file1.grp.yahoofs.jp/v1/sAwzTJxQDLxbtp3OMdVLdNp1_a54XAagglBT27xS7a_z9OE5pyyvCJ7LfP-2-GmCxxdhy1R1vQgwZJLQ9Mj4QdmcvEU/%80%A0%A3%BE%AE%C0%EE%A4%CE%C3%CF%B2%BC%BC%BC/%80%A0%A3%A5%DE%A5%CB%A5%A2%A5%C3%A5%AF%A4%CA%C9%F4%B2%B0%28%5E_%5E%3B%20%28%80%A0%A3%B4%C0%A1%CB/%80%A0%A3%C4%B4%CE%A7%CF%C0%C6%FE%CC%E7%B0%CA%C1%B0

 OB会ML入ってない方で興味がある関係者の方(現役生又はOB)は、是非MLに入ってくださいね~
 これで終わってはイジワルなので(笑)今回だけ(?)は、コピペしますね。

---コピペモード(若干修正&図の加え等あり)------------
調律論の基礎知識

*「オクターブ絶対」の原則

*「きれいな5度(できるだけ純正に近い5度)を作るよりも、
 きれいな3度(できるだけ純正に近い3度、特に「長」3度)を作る方が重要である。」

*「(その調の)3度がどう調整されるか(純正にどれだけ近いか or
  遠いか)によって、(その調の)『性格』が決まる。
 (ex.明るい/暗い、力強い、華やか、透明感がある、などなど)。」


【ここから本論!】
※純正5度を積み重ねると、なぜ「元の高さよりも高くなってしまう」のか?<以下、【力技モード】(^_^; (汗)>

 ex.A(イ)の音(110Hz,220Hz,440Hz,880Hz,・・・)を基準に考えてみると、

1.純正5度(周波数比2:3)でE(ホ)の音を作ると、
・・330Hz,660Hz,・・となる。
(↑要するに、元の音に「3」を掛けて、適宜「2」で割れば良い。)

2.次の5度(B(ロ)音)を純正5度で作ると、
・・495Hz,990Hz,・・となる。

3.次の5度(F#(嬰ヘ)音)を純正5度で作ると、
・・742.5Hz, 1485Hz,・・となる。

4.次の5度(C#(嬰ハ)音)を純正5度で作ると、
・・(すみません、小数点でてくると煩雑になるので、以下は整数値の値だけ記しますね(汗))・・・・4455Hz・・となる。

5.次の5度(G#(嬰ト)音)を純正5度で作ると、
・・(小数点の値は省きます~)・・・・13365Hz,・・となる。

6.次の5度(D#(嬰ニ)音)を純正5度で作ると、
・・(同上ですぅ~)・・・40095Hz,・・となる。

7.次の5度(A#(嬰イ)音)を純正5度で作ると、
・・(同上ですぅ~)・・・120285Hz,・・となる。

8.次の5度(F(ヘ)音)を純正5度で作ると、
・(同上ですぅ~)・・360855Hz,・・となる。

9.次の5度(C(ハ)音)を純正5度で作ると、
・(同上ですぅ~)・・1082565Hz,・・となる。

10.次の5度(G(ト)音)を純正5度で作ると、
・(同上ですぅ~)・・3247695Hz,・・となる。
11.次の5度(D(ニ)音)を純正5度で作ると、
・(同上ですぅ~)・・9743085Hz,・・となる。

12.お疲れさまでした(笑)・・いよいよ最後の5度(A(イ)音)を
純正5度で作ると、
・(同上ですぅ~)・・29229255Hz,・・となる。
 ↑
 この(計算上の)周波数はすでに可聴範囲をめちゃくちゃ超えている(笑)はずなので、何オクターブか下げる(2の倍数で割る)必要があります。(実践ではオクターブ下げて小数点付きのもっと低い値を採用して「音階」を作っていくことになります。)

で、2で割っていくと、
・・・7136.048584
   3568.024292
   1784.012146
    892.006073
    446.0030365
    223.0015182
    111.5007591
       ・・・・・となります(計算合ってるよなぁ?(^_^; (汗))

 要するに、元の音のA(イ音)と一致するためには、上記の110Hz,220Hz,440Hz,880Hz,・・・となる必要があるのに、周波数比2:3の純正5度を(12回)積み上げて行くと、実際には、最後のA(イ音)になる(はずの)音高が、約111.5Hz,約223Hz,約446Hz,約892Hz,・・・に上ずってしまい一致しない(泣)、というわけです。

※↓下手ですが、一応図を描いてみました(平成22年7月6日追加!)。
IMG_4571.jpg

 この余った音程は、『(平均律の)半音の約1/4』であり、これを調律の世界では「ピタゴラス・コンマ」と呼ぶのです。つまり、周波数比2:3の純正5度は、(ピタゴラスによって、紀元前(今から2500年以上も昔(!!))に既に発見されていた、と考えられていることから)、別名「ピタゴラスの5度」とも呼ばれ、このピタゴラスの5度を積み重ねることで生じる剰余量が「ピタゴラス・コンマ」という訳です。

 一方、チューナーなどで使っている「セント」という単位は、(平均律の)半音を『100(等分)に分割した値』です(対数、logの世界)
(故に、平均律の半音音程=100セント、あらゆる調律法における1オクターブ=1200セント)。      ↑
                            ↑ 
               これが「オクターブ絶対の原則」の表われ、と言えます。
               これを前提としないと、内容が複雑になりすぎて、
               各調律法の比較等の議論が出来なくなってしまいます。
             
 そして、上記ピタゴラス・コンマは、約「24」セントです。

 付言すると、平均律の調律法は、全ての5度を(周波数比2:3の純正よりも)『2セントだけ狭くする(=わずかに唸らせる)』(すなわち2セント×12個の5度=24セント)ことで帳尻を合わせる(笑)方法なのです。 

 一方、(現代でも多くの超一流ピアニストが使っている)ヴェルクマイスターの代表的な調律法(第1技法第3法)では、「C-G間、G-D間、D-A間、B-F#間」をそれぞれ6セントずつ狭くして(6セント×4個の5度=24セント)、残りの8個の5度を2:3の純正(唸りが皆無)に調整する、いわゆる「不均等調律」の手法を採ります。このようにすると、「調号(#、b)の少ない調は長3度が綺麗になり、そうでない調は汚くなる」ことになりますが、「なぜそうなるのか?」については、次回以降に書こうと思います。

 以上、これだけ知っているだけでも、友人、知人等に差を付けて
「偉ぶる」ことができる(笑)ことは間違いありません。
                   <H16.11.30(火)>
---コピペモード終わり--------------------

 【koten】:今から約6年前ですか、・・この頃から既にうだうだ&長々と偉そう~に書いてましたね(汗)、既にこの頃から括弧書きを多用しているし。
 〔M〕:「自分の知識を披露する喜びに満ち溢れてている」って感じの文章ですね。
 【koten】:いやぁ恥ずかしかぁ、とても恥ずかしかぁ(汗)

 【イッテツ】:お、もうこんな時間だぞ!
 【koten】:う、まずい、チェンバロ練習しないと(汗)。。土曜日がレッスンなのに、全然弾けてないんですよ(泣)
 〔M〕:あらら、がんばってくださいね~

 【koten】:○○大学古典ギタークラブの方、分からないところがあったら遠慮なく質問してくださいね~ ではまた!



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