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昔と今とで如何に価値観が違うか? についての考察(調律替えの面倒さ) [音律(調律)の基礎知識]

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以前に
>今後の記事投稿予定をノルマって?みる
と題して、
「⑥9月の発表会のための曲決め」の他に、
① 昔と今とで如何に価値観が違うか? についての考察
  ⇒五度の価値、調律替えの面倒さ、などなど
②「鍵盤スコラダトゥーラ」(笑)を実践していそうな作曲家は誰か?
 ⇒そりゃあ「あの人」でしょう(笑)
③ シントニック・コンマ(入り五度)分割の技法
④ バンの完全鍵盤は「ディスインフォメーション」なのか否か?
⑤ バロック時代のニ長調鍵盤曲の特徴
 を挙げたので、休日を利用して少しずつでも書いて行きたいと思った次第。

 まず、「①昔と今とで如何に価値観が違うか?」の内の
「調律替えの面倒さ」に関する事項をメモ風に書いていくと、

昔の鍵盤楽器(チェンバロ、クラヴィコード、フォルテピアノ):弾いている内に(例:数十分で)調律が狂ってくるのは「当然」。ゆえに、調律は演奏者本人で出来なければならない(それが出来ない演奏者は「論外」)。楽器所持者は「調律用具」を必ず持っている。これらを踏まえると、楽器は必然的に、(曲間でも)出来るだけ「楽に」、「素早く」調律できるような設計となる。
  vs
現代の鍵盤楽器(モダンピアノ):一度行った調律が出来るだけ長時間狂わないような設計とする(例:鉄骨のフレーム、太くて重くて強い張力で調律される弦、など)。ゆえに、調律は演奏者本人で出来なくても「何ら問題はない」。「調律用具(チューニングハンマー等)」を持っていない楽器所持者の方が圧倒的多数(実際、比較的最近までチューニングハンマーは「販売御法度」だったらしい。)だから、専門家(調律師)でなければオイソレと調律できないような楽器設計とする(例:アップライトピアノの場合、上蓋のみならず、重い前蓋を開けて移動させないと調律できない。)。これでは曲間での調律など「とうてい無理」。

 となる訳です。で、チェンバロ用とモダンピアノ用の調律用具について写真に撮ったので載せると、こんな感じです。(大きさ比較のため、ごま塩瓶(笑)とHDD/DVD/VHSコンパチブル機用リモコンも撮影してます)
70グラムvs500グラム.JPG

 大きさもそうですが、重量が、チェンバロ用(左のT字型)=70グラム弱vsモダンピアノ用(右のL字型)=約500グラムと、圧倒的に違います。

 要するにチェンバロ用の調律道具は「~ハンマー」と呼ぶにはほど遠い華奢なものでして、ポケットにも入るサイズなのですが、モダンピアノ用調律道具は明らかにチューニング「ハンマー」であり、ぶっちゃけ十分「凶器」にもなり得るサイズ&重さなんですねこれが(怖!w)。

 で、モダンピアノの調律はこの「ハンマー」の長い柄の部分を有効利用して(つまり梃子の原理で)、強い張力で貼られた弦を1鍵盤につき複数本(高音側で3本、低音側で2本)調弦するわけで、上述した「蓋移動」もあり、これでは曲間での調律など「とうてい無理」、「明らかに不可能!」な訳ですよ。そもそも、一鍵盤(一打撃装置)に対して「複数の弦」を調律するため、他の弦を消音しながら調律することになり、そのため、チューニングハンマーの他に「消音用の器具」も必要になりますし。

 これに対して、チェンバロの調律は、上記華奢な道具を使って、弱い張力で貼られた弦を1鍵盤につき1本調弦すれば良いので(上記「消音用の器具」は不要)、要するに圧倒的に「楽に」かつ「素早く」調律できる訳です。ちなみにウチのチェンバロ(2段鍵盤)の場合、譜面台を若干ずらすだけで全ての弦(8フィート上下鍵盤分+4フィート)を調律することができます。

追記写真:譜面台をずらして(作業時間1~3秒程度w)、ずれてきた音程を直すところ。
IMG_5791[1].JPG
 何カ所かずれた音を直す場合などはこれで済みます。本格的に調律するときは譜面台が邪魔になるので他の場所に移動させますが、そんなに重くはないし、作業も単に「持ち上げて外す」、調律後に「再度はめ込む」だけです。

 なので、「現代の感覚」、「現代の常識」に基づけば、鍵盤楽器演奏における曲間での調律(替え)など「あり得ないでしょ?アナタ頭がオカシイんじゃないの?」と罵倒(?)されかねないのですが、「昔の実情」を考えてみると、少なくとも「昔は違ったでしょ?」と疑問を投げかけることくらいはできるかなと、そう思う訳ですね。

 現代楽器でも、クラシックギター他の弦楽器を弾いている人ならば、曲間での調律(狂いの修正、更には変則調弦(スコラダトゥーラ)への調律替え)なんて「当たり前」と思っている人が圧倒的多数だろうし、実際、クラシックギターでは「演奏中」に調律を直すことだって「慣れた人なら当たり前」なんですよね。

 昔の鍵盤楽器の演奏者でも、流石に「演奏中」に調律を直すことはしなかったでしょうけど(←但し譜面台を外して弾けば「やって出来ないことはない」w)、曲間でなら、狂ってきた幾つかの音を直したり若干の調律替え(例えばある箇所の♭音を♯音に変えるなど)をすることは、当たり前のように行われていたのではないか、と思う訳です。もちろん「演奏者本人」が行うんです、そんなこと改めて書くまでも無く(笑)。

 (続く?)

 


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REIKO

以前バロック・ハープを含む古楽アンサンブルのコンサートで、演奏中にハープの音が狂って、それに気づいた奏者はその音を「そっと」弾いて目立たないようにして曲を終え、その後でポケットから(笑)写真のチェンバロの調律ハンマーみたいな(もう少し小さかったかも)器具を出して、チャチャッと直してましたね。
そういう器具をポケットに入れてる・・・ということは、演奏中に音が狂うのは当たり前なんだろうな、とその時思いました。
当然ですが、すぐに狂うので自分で直せないと困るわけですよね。
(チェンバロとどっちが狂いやすいんですかね・・・?)
アンサンブルだったので、狂った音は小さく弾いいてごまかせても、ソロだったらちょっと苦しいですが。

by REIKO (2012-07-31 00:12) 

koten

REIKOさんコメントありがとうございます。

 おぉ、ハープの世界もそういう感じなんですね。

>(チェンバロとどっちが狂いやすいんですかね・・・?)
 私が今までに聴きに行ったチェンバロのコンサートでは、温度管理(空調)等に気を遣っているケースが多かったのか、曲間で「狂った音を直す」という行為を目撃(笑)したことがないんですよね実は。チェンバロの場合、温度湿度さえ変わらなければ、結構調律は持つみたいです。一方で、我々のようなアマチュアが長時間かけて行う「発表会」では、会場もそんなに高級じゃない(笑)場合が多くて空調を止めて行ったりするので、30分もすれば大分狂ってきますね。なのでその場合は先生が直す、というパターンが一般的です。

by koten (2012-07-31 06:39) 

koten

ちなみに発表会では「他楽器とのアンサンブル」も行うケースが多く、その場合はバロックピッチ楽器とモダンピッチ楽器とで出演者を前半後半に分けておき、前半終了時の休憩時間中に(トランスポーズ機能を使いつつ)先生が15分くらいで「全ての音の調律替え」をします。予め2台のチェンバロを用意できればベストなのですが、アマチュアの発表会レベルでは無理ですしね(汗)。

by koten (2012-07-31 07:00) 

koten

それと、故グスタフ・レオンハルトのチェンバロリサイタルでは前半終了時の休憩時間中にレオンハルト氏自らが調律を行っていたのですが、あれは「単に狂ってきた音を直しているだけ」だったのか、それとも「後半に弾く曲に合うように新たに調律し直していた」のかが謎でした。かなり時間をかけて調律していたので、もしかしたら後者かもしれませんね。


by koten (2012-07-31 07:11) 

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