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(その2)一般既存の純正律(オイラー含む)は親玉純正律の派生形なのか? [純正律(Just Intonation)]

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(続き)
 ③についてはこれで大体語ったですかね・・。
 ③の「結論」としては、
>「ゼロビート」本では、純正律が「ハ長調用」と「イ短調用」に分化しているけど、純正律ってもともと「そういうもの」なの?
 ・・否、「純正律」の根源的な姿は「そういうもの」ではなかった。少なくとも同一ルート音であれば、長調と短調の両方が使えるものであった、ということです。

では、次は②です。
「②ドデカゴンに載っている純正律は、同主調転調に対応できないものばかり。要するに「長調純正律」ばかり。短調純正律はどうしたの?」
 については、結論から書いてしまうと、上述した「王道」純正律が短調に関しては「これ以上無いほど完成されている」ので、純正律としての「短調専用音律」としてのバリエーション(変形例)が出なかった(作る必要がなかった)、というのが実情なのではないか、と推測しています。(この仮説の正否については、既存の「古い短調曲」の大部分がこの「王道」純正律に適用できることを実証する必要があると考えられます。前期~中期のバロック曲については今のところ良い結果が出ています。)
 一方、この「王道」純正律を長調「専用」として使用した場合の問題点を考えてみると、今度はハ調で考えると分かりやすくなると思いますので、新たに図を描きました。 

 短2修正_ド調で示した王道純正律基本サークル図.png 

 この図から分かるように、この音律では派生の♯音が一つしかありません。ですので、♯系への転調が不自由な訳です。これを読んだ人は「純正律って転調できない音律なのでは?」と感じると思うのですが、マールプルクやマッテゾン(オイラー等も同様)の音律構成を見る限り、ハ長調であってもEの和音を使えるような純正律の構成となっています。(写真再掲)

1776年、マールプルク発表の純正律
 
01マールプルクIMG_5717.JPG


 1717年、マッテゾン発表の純正律
02マッテゾンIMG_5718.JPG

   つまりどういうことかというと、これらの純正律では「短6のA♭音を増5のG♯(Gis)音に変えることによって、同主調転調を諦める代わりに平行調に転調できるようにした」ものであることは明らかです(但し、転調先のⅣの5度が禁則になるので完全ではありませんが)。さらには、短2のD♭を増1のC♯音に変えていますので、イ長調への転調も出来るようになっています。このように、左側の♭音を♯音(の位置)に調律替えすることによって、転調範囲を拡大していくことができます。

 つまり「純正律では転調ができない」というのは「単なる理論」だけの話で、「実用」上は可能なのです。(これも今後、実例挙げて演奏up等する必要があると思うのですが、ナカナカ時間が・・・(汗))

 さて、オイラーの純正律です(18世紀発表)。

05オイラーIMG_5721.jpg

 この音律は、音楽史的にどのような意義があるのでしょうか。
 これは私見ですが、オイラーは、マッテゾンらの長調(専用)純正律に対してこう感じたのではないかと。つまり、彼らが提案した長調専用純正律だと、シントニックコンマが3つもあって「美しくない」と感じたのと、長調専用純正律ならば、新たな音組織を案出することなく「既存の周知の音律を使って出来る」と気づいたんじゃないですかね(推測です)。
 つまり、オイラーが提案した純正律をこうしてEルートにすると、

06ルート音変更(オイラー)IMG_5722.jpg

 見事に「王道」形になるんですよね。言い換えると、ハ音ルートとした時に、ハ長調からホ(長/短)調への転調まで可能になっているということです。

 ちなみに前の記事のコメント欄で書きましたが、王道純正律を「回しただけのもの」(「その⑥」)が、Salomon de Causによって、既に1615年(17世紀なのでオイラーより前)に発表されています。


07サロモンデカウスIMG_5723.jpg

 この音律は、(REIKOさんが指摘されたように、)回転させてAルートにすると「王道」形になります。つまり、ハ音ルートとした場合に、ハ長調からイ(長短)調への転調が可能です。


 ②の結論としては、
>短調純正律はどうしたの?
 ・・既存の「周知」音律があれば十分で、新たに案出する必要がなかった、ということではないかと(但し今後の調査が必要)。

 で、最後は①です。
>①ルネサンス時代(1400-1600年頃)の純正律はどうなっているの? ルネサンス音楽こそ「純正律」でしょ?
・・・これも結論から書いてしまうと、今まで述べてきた「王道」純正律は、ルネサンス音楽で「極限まで使い倒された」可能性があるかな、とみてます。
 つまり、現在調査しているところでは、ルネサンスの鍵盤曲では、ルート音を所謂「G型」にすれば破綻なく弾ける曲を幾つか確認しています。ルネサンス曲は可成り独特ですので、更に調査すれば、もっと色々な「ルート音」の使い方が発見できるのではないか、と期待しています。

 そして、今まで述べてきたことを総合すると、この音律はこのようなポテンシャルを備えています。

(短2版)王道純正律の色々なルート音を示す図.png

 結論として、この「王道」純正律は、「曲を選べば、調律替えすることなく色々な基音の曲を弾ける音律」ということになります。凄いポテンシャルですよね。上の図を見れば分かるように、ハ音ルートの設定でハ調(長短)曲のみならず、「変ホ長調」、さらには「変イ長調(!)」の曲まで弾けてしまうのですから。

 
追記:「もしや」と思って今確認したのですが、この音律(ハ音ルート)であれば、ブルグミュラーの有名な「25のエチュード」の第1番「素直な心(ハ長調、A♭使用)」を弾いた後に、調律替えすることなく、第22番の「舟歌(変イ長調)」を何ら破綻せずに弾くことができます(!!!)。 もしかしたら、この22番はこの音律の新しい使用方法を提示してくれた「オイラーへの賛辞」の意味もあったりして。そうだったら素敵ですよね。

追記2:同第4番「子供の集会(ハ長調、A♭使用)」も問題ないです。第11番「せきれい(ハ長調)」は、後半にDm和音が出てきますが「勝負和音」でしょうこれは。なのでOKかと。
ちなみにC♯音がなくD♭型のため、19番の「アベマリア(イ長調)」は調律替えが必要です。9番の「狩猟(ハ長調)」も前半はクリアですが、後半でG♯とC♯音が出てきます。12番「さようなら(ハ長調)」については、D♯音が良く出てくるのですが、それはこの音律のE♭音で「代用」しても違和感無いです、驚きました。ただ、G♯音も出てくるので気にする人にとってはNGかと。13番「なぐさめ(ハ長調)」はOKじゃないですかね。第15番「バラード(ハ短調-ハ長調)」、正にこの音律のためにあるのではないでしょうか(笑)。中盤でC♯が2カ所ありますが、曲想からして調整しなくても良いのではないかと。第16番「小さな嘆き(ト短調)」は可成り微妙です(笑)、、、F♯が何故か凄く「低く」聞こえます。第18番「心配(ホ短調)」は代用音が結構あるのですが(A♯、D♯)、自然に聞こえます、OKかと。
第23番「帰途」は変ホ長調(ハ短調への転調あり)ですが、1カ所C♯の3連打がある以外はクリアです。曲想からしてC♯の調整はしないでもOKでは?  というか、この音律のD♭をC♯に変更すれば可成りの曲が弾けることになりますね。どうもそれが正解のようですね。場合により、A♭音はG♯との間に設定しておくことも考えられますし。
で、それを暗示するように、第25番「貴婦人の乗馬(ハ長調)」」では、A♭とG♯音を両方使ってます。

結論:「王道」純正律は、曲を上手く選べば、曲の基音が変わっても調律替えをする必要がない。 (これぞ正に「黄金音律」とも呼ぶべきものでは?)

 この「極めて優れた純正律」が、何故一般に知られていないのか、何故に電子楽器にプリセットされていないのか、何故に「歪められて」プリセットされているのか、等について、私たちは今後「自分たちの住んでいるこの社会、この地球の「人間世界」は一体何なのだろう?」ということをも含めて、良~く考えてみる必要があるかも知れませんね。

  それではまた!

追記:
再稼働反対の4万人規模のデモ、ようやく報道されたようですね(一方「NHK」は?)http://www.youtube.com/watch?v=dTuHOAW0DVM&feature=g-all-lik


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