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GW特別企画!- 収穫の時は来た、前期バロックは宝の山だ!!-その1  [純正ミーントーン(ノーマル中全音律)]

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 というわけで、今回もやって来ました祝日特別特集、随時更新シリーーーーズ(やんややんや!)。

今回はミーントーンと前期バロック鍵盤曲との関係を徹底解剖したいと思うのであります。
まずはこちらの写真をご覧ください。

009.JPG

例によって手書きで汚くてアレなのですが(汗)、これは今朝どういうわけか天から啓示(笑)が来まして、その啓示内容が「お主、ミーントーンと前期バロックを極めたいのなら、まずは『ホ短調』について研究するが良い。そうすれば今まで分からなかったことが、目から鱗が落ちるように分かるようになるであろう、ふっふっふ・・」とのことだったので、各種ミーントーン(中全音律)についての音程の違いを確かめるべく、行きの通勤電車中で書いた資料な訳です。
左から、
①通常のミーントーン(1/4シントニックコンマ×11,以下①または「純正MT」)

②プレトリウスの修正ミーントーン(以下②または「PT」)

③シュニットガーの修正ミーントーン(以下③または「SG」)

④REIKOさん発案によるウルフ3分割型の修正ミーントーン(以下④または「R3」)です。

いずれもウルフ5度の位置を動かさないこと(つまりG♯-E♭固定)、分割鍵盤は対象外(D♯はE♭音を使う)として、以下調べていきます。

まず、ウルフ5度の広さ(唸りの酷さ)は、①(+36.5、単位はセント、以下同様)→②(+25.5)→③(+14.5)→④(+8.5、但し3カ所に出来る)の順で、大幅に改善されて行きます(ウルフを挟むG♯音とE♭音の両方をずらして行くため)。

次に、ホ短調の和音を考えた場合、①②③④のいずれも幹音(白鍵、ナチュラルキー)の高さ関係は同じなので、Ⅰの主和音(Em和音)の響きはどれも同じになります。
 他方、最も重要かつダイナミックに変化するのは、Ⅴの属和音(B和音)とピカルディ終止で使うⅠの長和音(E和音)の『長3度の純正度』です。(何故にダイナミックに変化するかと言うと、VではB-「D♯(つまりE♭)」を、ⅠではE-「G♯」を使うため。「 」は各音律間でシフトする音。)
つまり、
①の純正MTでは、属和音が+42(セント、以下同様)→終止和音が±0(純正)、故に「落差」は42セント
②のPT型では、属和音+36.5→終止和音+5.5、落差は(36.5-5.5=)31セント
③のSG型では、属和音+31  →終止和音+11、落差は20セント
④のR3型では、属和音+28  →終止和音+14、落差は14セント
となります(数値誤りがあればご指摘ください。)。
 これから分かるように、不快な属和音(いわゆる「鞭(ムチ)」)と心地よい終止和音(いわゆる「飴」)との『落差』が最も大きいのが①の純正MTで、②③④になるにしたがって緩やかになって(馴らされて)行きます。
 (余談:ぶっちゃけたイメージとしては、「地獄(大貧民的Ⅴ)から天国(大富豪的Ⅰ)に一気に昇れる」のが①、それ以外の②③④は、「それほど酷くない地位(貧民Ⅴ)からまあまあの地位(富豪Ⅰ)に落ち着ける」的な感じでしょうか(?))
 ともあれ、①②③④のいずれの音律であっても、ホ短調の属和音(B)と終止和音(E)の3度の響きに「差別化」がされていることが分かります。

 これに対して、24調すべてを演奏することを目指した所謂「ウェルテンパラメント」系の音律では、ホ短調の属和音(B)と終止和音(E)の3度の響きに差別化がされていない設計のものが多いのです。で、またもや汚い手書き資料を(汗)
010.JPG

左の「WMⅢ」が有名なヴェルクマイスター第1技法第3法、右の「KBⅠ,Ⅱ,Ⅲ」がキルンベルガー音律(第1、第2、第3番とも同じ)です。その右にケルナー音律の図を書こうとしたのですが、ここで通勤最寄り駅に着いてしまったため断念しました(汗)。
図に書きましたように、
WMⅢでは、ホ短調の属和音、終止和音とも+16(12ETより2セント劣化)⇒落差0
KBでは、ホ短調の属和音、終止和音とも+20(12ETより6セント劣化)⇒落差0
です。
 ちなみにケルナー音律では、1/5PC(つまり4.8セント)狭い5度が1個含まれるので、ホ短調の属和音、終止和音とも12ETより(8-4.8=)3.2セント劣化することになり、ええとつまり(汗)、(14+3.2=)+17.2セント(落差0)になるはずです(数値誤りがあればご指摘ください、以下同様)。

 このように、ウェルテンパラメント系の有名な音律では、ホ短調の属和音(B)と終止和音(E)の3度の響きの差別化(鞭と飴)を考慮していない(←悪く言えば「ピカルディ終止の意義が半減ないし没却される」)ものが多いという点で、ミーントーンとは明確に区別することができます。

追記:チェンバロ業界から文句が来るかも知れないので(汗)一応フォローしておくと、現在のチェンバロ界で「万能音律」的に扱われているヴァロッティやヤングの音律では、ホ短調の属和音(B)と終止和音(E)の3度の響きに差別化がなされています。但し、その「落差」は4セントなので、ミーントーンよりもずっと小さい値です。

(余談:音律関係書籍やサイトなどで「WMⅢは出来るだけミーントーンのイントネーションを残すように考慮されて作られた音律である」などの見解を見かけることがありますが、少なくともホ短調に関しては????(←疑問度極大化モード)ですね(そもそもヴェルクマイスターは12ET擁護論者ですし))。

 そんなこんなで、基礎知識としてこれだけでも知っておけば可成り役に立つであろうと思われます。

 では次に、前期バロックのホ短調の鍵盤曲について調べてみましょう。続きは明日ということで。

 みなさま幸せなゴールデンウィークを!!

執筆予定メモ:

驚愕! ホ短調の大曲で属和音(B)さらにはD♯音、それどころかBのオルゲルプンクトすら一切使わない曲を発見・・しかも作曲者はあの有名な巨匠※※※※(笑)

スウェーリンクは極力回避の姿勢か。 

フローベルガーの工夫。

ケルルは両刀使い?(オルガン用とチェンバロ用の違いか)

ヴェックマンは大胆だった。

など盛りだくさん、こうご期待


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コメント 2

REIKO

R3のREIKOです。(爆)
このウルフ三分割音律って、(等分か不等分かなど)分割の割合はともかく、たとえ文献に記録されてなくても、やってた人はいたと思うんですよね。
単に離れすぎてるG#とE♭を「ちょこっと寄せる」だけなので、簡単だし。

>「WMⅢは出来るだけミーントーンのイントネーションを残すように考慮されて作られた音律である」などの見解

私もこの見解?には「何言ってんだおめ!」という言葉を投げつけたいですね。(笑)
そもそもミーントーンの五度を使っていないし。
まだキルンベルガーIIIの方が、ミーントーンの名残を感じます。

>ケルナー音律

昔買ったCDをチェックしてたら、ホグウッドが80年代に録音したバッハ「フランス組曲」(+他に2組曲)が、一組曲ごとに違った古典調律で演奏されていました。
(ホグウッド自身が解説でそう書いている)
しかしこれが、1/5コンマ・ミーントーンのウルフ回しとか、ト長調に移調したヴェルクマイスターとか、「何ヤッてんだおめ!」的なモノばっかりなんですよぉ~(^ ^;)
その中には「G#を少し下げたケルナー」ってのもありました。
これはおそらくE-G#和音対策なんでしょうね。
音を3つくらい変更したヤングIIなんてのもあって・・・(もうヤングIIじゃね~だろおめ!)

>ヴェックマンは大胆だった

それはもしかして、A♭・D#・A#などを大胆に使っているという意味ですか?
だとしたら理由は◆◆◆◆ですよ、きっと♪
by REIKO (2012-05-04 21:31) 

koten

REIKOさん、コメントありがとうございます。

>やってた人はいたと思う
・・・そうですね、可能性高そうですよね。前に書いた「広い5度ウルフを3分割するとバランスが良くなる」旨のノウハウはフランス人発見のもののようですが、ジョビン音律の内容からしてバッハも当然知っていただろうし、だとするとノーマル・ミーントーンでも当然試している可能性高いですよね。小生、(ウルフ移動なしの)修正ミーントーンと言えばプレトリウスかシュニットガーしか思い浮かばなかったし、純正より広い5に対しては悪いイメージしか抱いてなかったので、思わず「これは盲点、やられた!」と思いましたね(笑)。

>まだキルンベルガーIIIの方が、ミーントーンの名残を感じます。
 そうですね、キルンベルガーIIIって要するに、脱ミーントーン&純正律化(ないし復活?)を目指したキルンベルガーが、

①白鍵を純正律にするⅠを発表 →狭い5度が不評だった→②白鍵を「準」純正律にするⅡを発表 →それでも不評が出たので、仕方なく白鍵の音程を、当時の一般的音律だったミーントーンに「苦渋の思いで(笑)」近づける妥協案を(フォルケルへの手紙で)いくつか提案し、その中で結局一番人気になったのが、白鍵音程が普通のミーントーンに最も近い案だった、そしてこれが今のKBIII、ってことですよね。

>ト長調に移調したヴェルクマイスター
 これ凄いですね(笑)、、調律替えして使うウェルテンペラメント系って一体(汗)

>音を3つくらい変更したヤングII(もうヤングIIじゃね~だろおめ!)
・・爆笑、これ最高!(笑)
 しかし古き良き時代じゃないけど、正統性の問題はおいておいて、色々な古典調律を布教しようとするホグウッドの「強い意志」が感じられて何か良いですね、そのCD聴いてみたいなぁ。(でも、古楽奏者の「上の人」がこうまでしてミーントーンを避けていたというのは、やはり「闇の勢力(イ※ミナティなど)」の強い圧力があったんだろうなぁ、と推測されますね。)

>それはもしかして、A♭・D#・A#などを大胆に使っているという意味ですか?
 そうですそうです。 今回はそこまで記事書けないかも知れないので、REIKOさんに続きの執筆お願いしようかしら(爆)

by koten (2012-05-05 09:06) 

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