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(8日夜補足)古典派の純正律理論についてのメモ書き [純正律(Just Intonation)]

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REIKOさんへのブログのコメント書いている内に色々と思い出して来たので、メモっておかねば(汗)。


古典派ピアノソナタの第2楽章が下属調で書かれる理由:

古典派のソナタは、基本的に純正律の理論がベースになっている。

 例えば第1楽章がハ長調の場合、音階の出だしが「ドレミ」になるが、この「全音」構造は大全音⇒小全音である。
 これに対して、第2楽章を「属」調(つまりト長調)で作ると、音階の出だしが「ソラシ」になるが、この全音構造は「小」全音⇒「大」全音になってしまい、不格好になる。

 一方、下属調(ヘ長調)の場合、音階の出だしが「ファソラ」になり、この全音構造は「大」全音⇒「小」全音になるので、主調と相似形になる。従って、純正律をベースとする古典派では、第2楽章を下属調で作る。

 第2楽章を下属調とするメリットは他にもある。つまり、第1楽章のⅡの禁則和音(この場合D-A)につき、第2楽章を属調(ト長調)とするとD-Aが「属和音」となってしまうため、作曲上の制限が非常に大きくなる。
 これに対して、下属調(ヘ長調)では、D-AはⅥ(6)の和音になるため、この和音の回避が非常に楽になる。

 で、この原則に敢えて挑戦したのが、モーツァルトの有名な初心者用のK.545(ハ長調)ソナタの第2楽章である。これについてはREIKOさんブログのコメント欄に書いて来ましたのでどうぞ。
http://handel.at.webry.info/201111/article_1.html


 で、これを書いていて疑問に思ったのだが、

古典派のピアノソナタは、基本的に純正律の理論がベースになっているので、第1楽章の音階の開始が「大全音⇒小全音」構造になることが必要となるのであれば、では、例えばト長調の曲を書くときには「調律替え」が必要ということか??? それと、調律替えが面倒だったから、ト長調のソナタを書くのは回避される傾向にあったのか?⇒モーツァルトはト長調のソナタは少ないはず。
 k283ト長調の楽譜を見る限りは、GABで始まるメロディーがない(!)。低音では沢山使っている。3楽章では、3度上の音程と重ねて使っている。しかも、Dの和音の使い方を至る所で工夫している。
 ⇒なので、「調律替えはしない」でそのまま使っていると言えそう。
 但し、Dの和音(属和音)の使い方に気を配る必要があり、曲(特にメロディー)が作りにくいことは確かなので、ト長調は好んで使う調ではなかったようである。



話が飛んで、ジュリアーニのギター曲の「ソナタ・エロイカ」(イ長調)を見てみる。
 ⇒やはりB(つまりⅡ)の和音の使い方に相当気を遣っている。最も多いパターンが、バスをBではなくF♯で使うこと。これはソルのロ短調エチュードと同じ発想。なので、この曲もイ長調純正律が使えそうな雰囲気濃厚である(というか、もう決まりでしょ(笑))。

 こうしてみると、古典派のピアノソナタとギターソナタとでは、「同じ視点」で考えることが出来そうだ。(ハ長調ベースとイ長調ベースが違うだけ。)


では、ピアノソナタでもっと凄い調の場合は調律替えはどうしてたのか?
 例えば変ホ長調とか。 
 というか、それこそ「ニ長調」は?・・これはいくら何でもハ長調純正律ベースでは出来ないはず!(しかもモーツァルトはニ長調ソナタを結構沢山作っている)
  ↑
二長調ソナタ、個人的願望としては「ミーントーン」ベースであって欲しい!(爆)

 ⇒今後の課題とする。とりあえずもう寝る(笑)
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(8日夜、割り込み補足)
 そうだそうだ、思い出した。K333はミーントーン曲だったじゃん(汗)。
 先ほどREIKOさんブログに書いて来た内容を自己引用しましょう。

>・・・何年か前にヘンデルの曲で使った(1/4)ミーントーンの「ウルフシフト」をモーツァルトにも適用できるのか?について検討したことがあったんですよ。で、そのときK333の変ロ長調曲(♭2つ)には適用できるな、という結論に達したんですね、これも今日思い出しましたよ。
 具体的には、これは素直にB♭基準にするんです、つまりF♯-D♭がウルフ5度です。これだと第2楽章の3小節目冒頭で「ぞぞ」って来て、さらには3楽章なんかではウルフ音程出まくりなのですが、これが妙に「痛快」なんですよ。ただ、これは未だ「生楽器」では試してないので何とも言えないのですが、少なくともウチの電子チェンバロでは逝けます(笑)。
>このK333は、楽譜を見ても実際弾いてみても「凄くのびのびと自由に書かれているな」と感じます。特に上昇スケールの使い方や圧倒的な「音の多さ」からしても。 こういうのは典型的なミーントーンの曲じゃないかなと思うんですよ。ミーントーンはⅡの和音や大全音小全音の凸凹に気を遣わなくて良いので、自由に曲が書けるように思えます。
 「ウルフシフト」については、モーツァルトは若い頃に(ミーントーンの国イギリスで)クリスチャン・バッハと合っていたし、その後ヘンデルの曲を研究しているので、絶対知っていたと思います。
クリスチャン・バッハのウルフシフトについては後で記事を書く予定です。

(引用終わり)
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(6日夜補足)
 古典派の話ではないのだが、以前にどなたかから、「昔はコード(ないしカデンツァ)進行がⅠ⇒Ⅴ⇒Ⅳ⇒Ⅰではなく、Ⅰ⇒Ⅳ⇒Ⅴ⇒Ⅰだった」旨のコメントをいただいたことがあった。
 これって要するに「昔は純正律を使っていた」という証拠にもなるのではないか? つまり、純正律にとってⅤ(属調)よりもⅣ(下属調)の方が親和性があるのですから。

で、これを更に突っ込んで考えたとき、「ん、とすると、バロック曲(例えばフーガ形式)におけるⅠ⇒Ⅴの進行は「純正律を前提としていない」ことの証拠になるとともに、バッハのフーガでも出だしに「Ⅰ⇒Ⅴ」転調しない場合や主題の音の選択に工夫がある曲(例えば半音階的主題とか? 或いは短調の曲とか?)は、「もしかしたら純正律適用の余地があるのか?」などと妄想がふくらむ今日この頃な訳ですよ。

 いやあ、やっぱり最高やね、音律研究(笑)


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(8日夜補足)
 で、古典派ピアノソナタの話に戻すと(汗)、
 古典派のソナタ形式(←ピアノ以外も含む?)では、第2主題が属調(Ⅴ)で出現するのが通常だが、この第2主題は、第1主題とは「対照的」な音形で作られる。何故か?⇒第2主題が第1主題と「同じ」(相似形)だったら、属調だと「大全音小全音の関係で不格好になるから」ではないのか?

 だから、もしもソナタ形式の第2主題出現の「ルール」が属調ではなく「下属調」であったならば、第2主題は第1主題と「同じ(相似形)」になる、もしくは少なくとも作曲者の頭の中でそういう「心のベクトル」が働くであろう。モーツアルトの初心者用ハ長調ソナタ第1楽章の主題の再現部が下属調で書かれたのも、要するにそういうことではないのか?

 以上は、古典派の「基準音律」が純正律であった場合を想像(妄想?)した上での話である。


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コメント 2

REIKO

「古典派ピアノソナタの第2楽章が下属調で書かれる理由」は、第一楽章第二主題が(通常)属調で出るため、第二楽章も属調・・・では被ってしまうから・・・ではないのでしょうか????
かといって、全然関係ない遠隔調では、1つの作品として統一感が無いです。
あくまで「近親調でまとめる」という観点から、属調・下属調がバランス良く配分されるようにしたのでは?

それからモーツァルトは、たとえハ長調ソナタでも、純正律は関係ないと思いますね。
彼のモチーフは「ドミソ」メインでできているイメージが強いため、つい純正音程を意識してしましいますが、事実は全く逆と感じています。
純正律(系)、ミーントーン系では、旋律がギクシャクしてダメです←モーツァルトの場合は、これが致命的。
これでは全く「美しく」なりません。
しかも、主題間の移行部や展開部では色々な和音や音の進行が使われているので、話はそう単純じゃないんですよね。
理論ベースでは、古典ソナタ形式の「背後」に、純正律的な思想?があるのかもしれませんが、実際に純正律で作曲していたとはとても思えないんですけど???
まして「調律替え」なんて言ってたら、昔に逆戻りになってしまうし・・・。

>例えば変ホ長調
モーツァルトの変ホ長調ソナタは、当該調の長三度がかなり広い音律で立派に美しく鳴ります・・・純正長三度の必要性は全くないのです。
つまりモーツァルトは「旋律中心」の書法なので、ショパンほどではないが、長三度より五度純正を優先した音律が向いているんですよ。
純正長三度を「捨てた」ことが、彼の新しいところだったのはないでしょうか?

>モーツァルトはニ長調ソナタを結構沢山作っている
ニ長調のK284とK311第一楽章、冒頭フォルテの主和音は、どちらもアルペジオの波線がついてますが、これはこの調の主和音があまりキレイでない(純正音程を含まない)ことの証拠ではないでしょうか?
(第一番ハ長調の冒頭主和音さえ、アルペジオになっている⇒とにかくモーツァルトは3~4音の和音で、この波線が多い)
K576は、ユニゾンの分散和音音型で始まるので、D・F#・Aのバランスさえ良ければ、純正音程が無くても支障はないです。

とにかくモーツァルトは(同時打鍵の)和音では全く「勝負していない」んですね・・・。
(ここがベートーヴェンとは決定的に違うところ)
純正音程を多く持つ音律で作曲していたら、もっと和音メインの書法が目立つ曲が多くなっていたと思います。

by REIKO (2011-11-07 16:30) 

koten

REIKOさん、コメントありがとうございます。((( ^_^)且~~

>「古典派ピアノソナタの第2楽章が下属調で書かれる理由」
・・この理由ですが、私も本で読んだ訳ではなく(というか、どこにも書いてないですよね、この理由。)、私の場合、ネットでどなたか(古楽科の人だったか?)が発言しているのを記憶したか、あるいは夢枕に出て来たか(爆)、ですね。
 最近、ネットで仕入れた情報と夢枕に出て来た情報の区別がつかなくなってきて困っているのですが(汗)、ネットで仕入れた情報(古楽情報)としては、
>この時代のピアノ曲は「和声の実験場である」
 というのと、
>昔の音楽は「科学」だった。
というのが特に印象に残ってます。

補足(自己引用):
>どこにも書いてないですよね、この理由
・・例え書いてあっても、どうも「平均律的考え方」のフィルターがかけられているような気がしてならないんですよね。
 例えばk311ニ長調は定石通り第2楽章がト長調ですが、k576ニ長調の第2楽章は属調のイ長調だし、k284ニ長調もト長調の楽章を避けてますよね、、、どうもモーツァルトは何らかの理由でト長調を嫌っているように思えるのですよ・・ト長調曲は何か苦労して書いているような感じするし、音律の関係じゃないかなあと邪推している訳です。

 モーツァルトのピアノソナタの上声部って、下りは音階的に滑らかに降りてきますけど、登りの場合は3度跳躍したり、ト長調だったら移動ド読みでドレミ(GAB)で開始する音型を使わなかったりと、何か「凄い制約的」な感じがするんですよね。これもどうも「音律と直接関係している」としか考えられないのですよね・・・。

>旋律がギクシャクしてダメ
>つまりモーツァルトは「旋律中心」の書法
・・・上記「和声の実験場」であるのなら、旋律の流れは犠牲になりますよね。私、モーツアルトのピアノソナタの旋律って、凄い「機能的」な感じがするんですよね。(各第2楽章はそうでもないですが)

>実際に純正律で作曲していたとはとても思えないんですけど???
・・・それでも純正律的な「法則」には当てはまってしまうんですよね、曲を分析していると。
 私、玉木さんのHPの掲示板で質問していたときにフォルテピアノのプロの方が発言してくれて、そのときに確かこんなことを述べられたんですよ。

 私はモーツァルトを(個人では)純正律で弾いているが、人前で弾くときは頭がおかしい人と思われるのがオチなので、ヴァロッティなどの妥協的な音律で弾いている、だけど本当は当時の響きを再現したい。アマチュアの人はガチでやってほしい。
・・・という感じでした(その後、玉木さんの掲示板はシステムの関係で廃止になっちゃいましたね)。
 私的にも家のKBⅡピアノで弾いて違和感を感じないので、純正律系で考えていますが、ただ、モダンピアノと古楽器のフォルテピアノだと響きがそれはそれは全然違うと思うのですよね、、、ああ古楽器欲しい(笑)

>つい純正音程を意識してしましいますが、事実は全く逆と感じています。
・・・とりあえずREIKOさんの結論を楽しみにしてます。
 私的には今のところ純正律的な視点から考えてます、ということで。


by koten (2011-11-07 23:44) 

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