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遂にパズルのピースが繋がった?(ロ短調での作曲回避とソルの偉大さetc) [音楽理論(フレット楽器)]

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時間が無いので要点だけ。

 昨日の夜にコメント欄で書いたように、19世紀ギターの時代の主流音律(もしかすると「規格」音律?)はイ長調純正型だった。

 このため、B-F♯は、「禁則5度」(純正から約22セント程度狭い、いわゆる破綻した5度)になった。
 それが故に、当時のギター作曲家は主和音(Ⅰの和音)の5度が禁則になるロ短調で曲を作るのを避けた(例えばカルカッシのエチュード作品60には1曲もない)。
 (ギター奏者なら御存じの通り、ロ短調は結構弾きやすい調であるにもかかわらず。)

 これに対して、ソルは果敢に挑戦したのだ! ソルのエチュードシリーズの楽譜をみよ!!
 但し、ソルもこれらのロ短調練習曲でB-F♯を「同時」に鳴らすことは極力さけている。下手すると、「同時鳴らし」の曲は1曲もないのでは?(未だ未確認)。 ちなみにニ長調曲とか他の調ではBmやBの和音は「主和音(つまりⅠの和音)」ではないので、B-F♯同時鳴らしの曲は結構見つかるはずだ。


 とりあえずこんなところで(さあ今日は仕事が一杯で大変だ(汗))

--平成23年11月1日昼休みに追記----------------

>ソルもこれらのロ短調練習曲でB-F♯を「同時」に鳴らすことは極力さけている
・・クラシックギター奏者であれば、ソルの数々の「ロ短調」練習曲が、「凄く苦労して書かれている」ということが楽譜上、あるいは弾いてみて雰囲気だけでも感じとれることであろう。

例えば、作品31-18では、前半部は「ベース音」がなく、後半部になってようやく出てくる。この後半部の出だしでは、Bと2オクターブ離れたF♯が「一度」に出てくるが、楽譜ではあたかも「同時に鳴らすな」と訴えているように、Bの音の「位置」がF♯よりも「前」に書かれているだろう(少なくとも現ギ社の紺色の表紙の楽譜ではそうなっている。)。つまりここは、Bを先に弾き、F♯は後で鳴らさなければならないのだ。 何故? それはB-F♯の5度が汚いから。

(※同日夜追記:但し、この楽譜上の「位置離れ」は、音符の旗のスペース上の関係と考えた方が自然な気もしてきた。いずれにしても、B-F♯が汚い5度であれば、演奏者はその奏法を工夫する必要に迫られることは間違いないだろう。 なお、ソルと同時代のアグアドについては後述。)


 超有名な「月光」(作品35-22)でも、低音にB音が殆ど使われていないことに「何故?」と思った人が沢山いるのではないか。私もそうであった。長い間謎であった。やっと分かった。一番最後の和音も「BDB」であり、F♯が使われていない。これも「何故?」と思った人が沢山いるのではないか。何故? それはB-F♯の5度が汚いから。

 作品60-20も、月光と同じようにBの低音が殆ど用いられておらず、専らF♯が低音の主役である。苦労して作ったんだなぁ、ということがしみじみ分かる。

 作品60ー20については懐かしい想い出がある。社会人になってもギターへの情熱を捨てきれず、大学時代のサークルの夏合宿に参加して、発表会でこの曲を弾いたときのことだ(4曲弾いて、2曲目がロボスのガヴォット・ショーロ、3&4曲目がクレンジャンスのラメント1番&2番)。当時は他人の演奏に関しての感想を書く「批評用紙」という制度?があった。後の飲み会の席で、その批評用紙を回し読みしていたとき、一人だけ(私の演奏した)作品60ー20について「この曲、全然良いとは思わないです!」旨の感想が書かれてあり、(他の人からは概ね好評だったので)「おや?」と思った。名前も書いてあったので書いた人が分かったのだが、それを書いた人は、そのときの女性部員で「以前はピアノを習っていた」という人だった。その人は「ピアノを弾くと頭が痛くなる」というようなことを述べていた。つまり平均律が苦手なのだと思う。(ちなみにその人は双子である。今の職場にも双子の人がいるが、どうも双子の人は「感受性の非常に強い人」が多いように感じる。)
 
 で、その時はあまり気にも留めなかったのであるが、今こうして振り返ってみると、「あぁ、彼女の方が遙かに音楽センスがあるんだなぁ」と感心するとともに(ちなみに批評用紙での彼女の感想はクレンジャンスの曲については「凄く良かった」旨が書かれてました。つまり、(作曲家の)「想定音律」と(実際の)「演奏音律」が一致する演奏には共感できて、一致していない演奏には共感できなかったわけです)、「音楽的なセンスのある人が苦労(≒泣き寝入り)しなければならない今の世の中って一体何なの?」という疑問がにわかに湧いてくるのである。


 あまり愚痴を言っても何なので話を戻すと、
 要するに、この時代のギター曲は、イ長調が純正、B-F♯の5度がウンと汚い、などを念頭に置いて楽譜を分析すると、「あ、そうだったのか!!!」と目から鱗が落ちる体験を沢山できる、ということである。

 そろそろ昼休みが終わるので、今回はこの辺で。

----同日夜追記------------------

余談: ソルと同時代のアグアドの曲の楽譜では、B-F♯の5度を無造作に使っているケースが多く(例えば全音の「アグアド35のエチュード」(大沢編)の第3曲目ホ長調の8小節目、第9番ホ長調の後半部、第11番ホ長調の前半部、などなど)、またソルでも書かなかった「へ短調(←!)」のエチュードを作っているので、アグアドのギターの音律(フレッティング)については別の観点から行う必要があると感じる。

 但し、いずれにしても、編者や時代の変遷などにより音が加えられたり変えられたりする場合があるので、最終的には、いわゆる「原典」を参照しなければならないであろう。


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コメント 4

REIKO

>アグアドの曲の楽譜では、B-F♯の5度を無造作に使っているケースが多く

それはやっぱり別音律(というか別ギター)だったんでしょうね。
以前、ホセ・ミゲル・モレノが来日した時、公開レッスンを見学しに行って(生徒さんはバロック・ギターやビウエラだった)、「何故自分はアグアドを弾かないか」みたいな話題になったんですよ。
モレノの細かい説明は忘れましたが、要するに彼はアグアドをあまり高く評価してないようでした。
(ぶっちゃけ、「つまんねー作品だから弾かない」ってことですかね)
・・・そのことを、妙によく覚えています。(笑)
ピアノもそうかもしれませんが、A級音楽家⇒作曲に困難が伴っても、良い音律、B級音楽家⇒適当な凡音律・・・な図式があるかのかも。
確かソルって、ギターのベートーヴェンとか言いますよね?
by REIKO (2011-11-04 13:19) 

koten

REIKOさん、コメントありがとうございます。( *´∇`)_旦~~

 おぉ、REIKOさんもギター公開レッスン行かれるんですか!(驚)

>ソルって、ギターのベートーヴェン
・・そうです、その通りです。ソルは、(他の多くのギター作曲家とは異なって、)少年時代に厳格な音楽の基礎教育を受け、ギター曲以外にもオペラ曲とかカンタータとか交響曲とか室内楽とか、他分野にわたって曲を作ったのですが、自分の曲に作品番号を付けたのは「ギター作品だけ(!)」なんですよね。
 つまり、ソルは自作曲の中でもギター曲には並々ならぬ自信をもっていたのですが、そういう事も相まって、私は「ソルのギター曲が12等分平均律(前提)の訳、絶対にあ・り・得・な・い!!!」と強く思っていたんですよ。本当、今回「動かぬ証拠」が見つかってほっとしてます。(これでも業界が無反応だったら、私「ブチ切れる」だろうな(爆))

>A級音楽家⇒作曲に困難が伴っても、良い音律
・・・その傾向は確かにありますよね。ただ、モーツァルトどうしましょ?(笑)
 それと、バッハなんかは逆に音律面でも「懐が広すぎて未だに良く分からん」的な感がありますね(汗)。バッハはオルガン作曲家でもあったし、全体的にはミーントーン系が合いそう(≒無難)な気はしますが、KB系も結構ありそうな感じだし。

by koten (2011-11-04 23:09) 

Enrique

REIKOさんに指摘されてしまった(笑)。
ソルとアグアドは同時代ですが,音楽的内容はかなり落差がある様な気がします。どちらも難しいですが,ソルは弾きたいという気が起きますが。。。あまり弾いていないですが,超有名な「序奏とロンド」も単なる技巧曲では?と感じます。だから先ずソルの検証が先でしょうね。
by Enrique (2011-11-05 07:32) 

koten

Enriqueさん、nice&コメントありがとうございます。

 そうなんですよね、私もアグアドはちょっと、、、。まぁでもアグアドギターのフレッティング&音律をJUSTで当てちゃえば評価が一変する可能性もありますよね。私、「序奏とロンド」は結構好きですね。でも、それ以外のアグアドの有名曲って何かありましたっけ?って感じなんですよねアグアドは(汗)。
by koten (2011-11-05 08:37) 

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