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(11/11修正版)ミーントーンフレットにすると楽器が「良く鳴る」理由について考えてみる [古典調律vs平均律(率)]

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【今日のレジュメ】
ミーントーン(中全音律)は、平均律と比較して「他の弦が共振(共鳴)しやすい」システムになっている!!
特に、1弦4フレット又は3弦1フレット(G♯音)を弾いたときの6弦5倍音の共鳴、
    1弦2フレット(F♯音)を弾いたときの4弦5倍音の共鳴、
    2弦2フレット(C♯音)を弾いたときの5弦5倍音の共鳴、など
 には目を見張るものがあり、この共振(共鳴)現象は、平均律のフレット及び調弦方法では絶対に起きない。

(Enriqueさんに教えていただいた秘技(笑)リンク方法)→「ここ」をクリックしてみよう!

---【導入部】---------------------
 ギターのフレットをミーントーンフレットにする実験を開始してから、もう4~5年は経っていると思います。

 一番最初にミーントーンフレット化を施したギターは、ペペ(pepe)の「ps58」という弦長580mmの子供用ギターでした。このギターは、可成り昔に某中古楽器展示場で1万円くらいで購入したのですが(ソフトケース付き)、当然のことながら平均律(野村氏の書籍からは、どうも「率」の方が正確な用語のようですが、ここでは「律」で統一します。)に配置されたフレットでした。

 このギター、弦長が短くボディも小さいので、「ルネサンスリュート曲の練習用に良いのではないか」と考えて購入したのですが、当時持っていた手工ギターと比べると当然「鳴り」が悪い楽器であり、結局そのために長い間「放置状態」に置かれました。

 そして確か平成17年だったと思うのですが、チェンバロ経験が10年くらいになり、ギターの平均律フレットの響きに限界を感じ(我慢の閾値を超えた)、さも当然の如くこのギターが最初の「実験台(悪く言えば犠牲者(汗))」となったわけです。12フレットを除く全てのフレットがニッパで引き抜かれ、代わりに針金の「仮フレット」が木工用ボンドで取り付けられました。もっとも簡単で且つ効果的な古典調律は何か? を検討したところ、「ミーントーン(中全音律)に違いない」との確信(直感)が生じ、korgのチューナーで計測しながらフレット(針金)の位置を調整し、接着しました。

 平成18年に某会誌に投稿した記事の一部を抜粋しますと、
『新たな位置のフレットから得られる純正3度の響きは素晴らしいものでした。実験対象となったギターは大量生産による安価な楽器で、鳴りが悪いため全く使っていなかったのですが、フレット位置変更後は極めて美しい和音の響きが得られ、しばらくは高い手工ギターそっちのけ(笑)でこの楽器ばかり弾いてました。
 より具体的には、純正長3度の和音を聴きながら色々な曲を演奏すると、平均律ギターで感じていた「違和感」「疲労感」が無くなり、それどころか逆に「演奏欲」が次々に沸き出て来るという凄い体験をすることができました。』
 と記述しております、あぁ懐かしい(笑)。

-----休憩(別名:本論)-------------------- 

【koten】:あぁ駄目だ、真面目に書いていたら息が詰まってきた(汗)。

【イッテツ】:前置きが長いよ! 結局、要点は何なの?
【koten】:ですので、ミーントーンフレットにすると楽器が「良く鳴る」理由をこれから書くんですけどね・・・。

【イッテツ】:「一行」で言ってみぃ、一行で!(笑)
【koten】:え”~一行ですか? それキツイっすよ(泣)。 前に、ミーント-ンのフレット位置は「自然ハーモニクス(弦の整数比分割)の位置と非常に近い」からどうのこうのって説を展開したじゃないですか、確かあれイッテツさんの説ですよね。
http://meantone.blog.so-net.ne.jp/2010-06-19

【イッテツ】:そうだったっけ(汗)・・・で、それがどうかしたのか?
【koten】:この説「だけ」だと、どうも説得力が弱いって感じたんですよ。で、あれからずっと他の有力な理由を考えてましてね・・。

【イッテツ】:ほう、お前さん理由が分かったのかい?
【koten】:要するにミーントーンは、平均律と比較して「他の弦が共振ないし共鳴しやすい」システムになっているんですよ。つまり、ミーントーンの「フレット位置」と隣接開放弦の「純正から5.5セントずらす」調弦方法の『組み合わせ』が(あ、一行超えちゃったな(汗))。

〔まぁや〕:ちゅ、抽象的すぎてマーヤ分っかんない~(じたばた)
【koten】:あ、マーヤちゃんいたのね(↑何かキャラの設定(精神)年齢がいきなり低くなったような気がするが・・(汗))

【イッテツ】:マーヤちゃんの為(?)に、もう少し具体的に説明してくれるかい?
【koten】:そうですね。平均律だと、5度と4度(←つまり隣接開放弦)は、2セントしかずれてないので、純正に極めて近いじゃないですか。ただ、平均律だと、長3度は14セントずれて、短3度は16セントもずれるんです、純正から。
〔まぁや〕:それは分かりますぅ。
【koten】:一方、ミーントーン(中全音律)だと、5度と4度(←隣接開放弦)は平均律よりも唸って5.5セントのずれになりますが、主要な長3度は純正(±0セント)で、短3度は5度と同じ5.5セントのずれですよね。

〔まぁや〕:質問~! どうしてミーントーンでは、短3度の(純正からの)ずれが、5度のそれと同じ値(5.5セント)になるんですか?
【イッテツ】:後でワシが教えちゃる。 
【koten】:後回しですか。新しいパターンですね(笑)。
      それでですね。ミーントーンフレットってこんな感じじゃないですか。

IMG_4457.jpg

 これだと実際には、4弦1フレットがE♭音になり、3弦1フレットがA♭になるので、一般(?)には4弦と3弦の「小半音」位置(1フレットとナットとの間)に補助フレットを付けて、それぞれ4弦(新)1フレットでD♯音、3弦(新)1フレットでG♯音を出せるようにしますよね。ミーントーンのシステムでは♯音が♭音より「低い」音になりますので。

 そうした上で、ミーントーンの調弦及びフレット位置によれば、特筆すべき点として、
  1弦4フレット又は3弦1フレット(G♯音)を弾くと、6弦5倍音の共鳴現象が生じ、
  1弦2フレット(F♯音)を弾くと、4弦5倍音の共鳴現象が生じ、
  2弦2フレット(C♯音)を弾くと、5弦5倍音の共鳴現象が生じますよね。
 この共鳴現象は、平均律のフレット及び調弦方法では絶対に起きないんです。長3度が純正から「14セント」もずれてますから。この14セントのずれは共鳴現象にとって「致命的」なずれとなります。

 上記は「長3度」に関する現象を取り上げただけで、実際にはミーントーンの調弦及びフレット位置によれば、5度に関する共鳴現象も生じます。純正からのずれが「5.5セント」というのはそれほどのずれではないんです。他の音程に関する共鳴現象(例えば短3度)については、自分の中で未だ消化(解明)しきれていないため、記述を控えます。今後の研究課題ですね。

  という訳で、ミーントーンギターによる演奏upは今まで結構行いましたが、上記共振(共鳴)現象を味わうには、和音が比較的少ないこの投稿曲が良いと思います。
http://www.youmusic.jp/modules/x_movie/x_movie_view.php?cid=6&lid=2922

 (このギターは、上述した弦長580mmの子供用ギターのミーントーン改造版です。量産ギターの割にもの凄く「良く鳴っている」と思いませんか? 貴殿の平均律フレットギターでこういう響きは出せますか?)


【イッテツ】:久しぶりに長演説(?)したけど、言い尽くしたかい?
【koten】:これで「分かる人」は分かるんじゃないかな・・。

【イッテツ】:そういえばさぁ、このブログ、タイトルにいつの間にか「~音程は自分で作ろう~」っていう標語が加わっているな(笑)。
【koten】:あ、本当だ。誰が書いたんだろう(爆)


-----追記-----------------------

〔まぁや〕:質問~! どうしてミーントーンでは、短3度の(純正からの)ずれが、5度のそれと同じ値(5.5セント)になるんですか?
【イッテツ】:5度(例えばドソ)=長3度(ドミ)+短3度(ミソ)だからさ。
    ドミが純正(4:5)でミソも純正(5:6)であれば、ドソも純正(4:6→2:3)になる。
    ミーントーンでは、ドソ(5度)を5.5セント狭くして純正長3度を作るので、長3度のドミが純正だと、ミソが純正より5.5セント狭くなるって寸法さ。
    同様に、平均律では、ドソ(全ての5度)を2セント狭くして14セント広い長3度を作るので、長3度が14セント広いと、短3度は14+2=16となって、逆に16セント狭くなるのさ。

----------------------------
 と言うわけで、それでは皆さま、良い芸術の秋を!!

----11/11補足追記------------

 【追記の要点】:短3度(長6度)の共鳴現象についての記述を削除しました。

 ギターでの短3度(長6度)音程に関する共鳴の発生原理は、長3度や5度の場合と明らかに異なり、同様に論じることができません。
 すなわち、例えば6弦E音について考えてみると、ミーントーンフレットでは、4フレット部分のハーモニクス(5倍音)はEの長3度音(すなわちG♯音、理論的には実音のG♯とのズレが全く無い音)であり、7フレット部分のハーモニクス(3倍音)はEの5度音(すなわちB音、理論的には実音のBと5.5セントずれた音)になりますが、3フレット部分のハーモニクス(6倍音)は短3度音(G音)ではありません。つまり、3フレット部分のハーモニクスは、「6」倍音ですので、3倍音のオクターブ上のB音(5度音)が出ます。
 さらには、自然倍音列において、「短3度ないし長6度」音程の倍音はありません。
 (下記サイト参照)
http://www.animato-jp.net/~se/baion.html

 言い換えると、E音の6弦では自然倍音列にG音を有していないので、例えミーントーンフレットをもってしても、1弦(開放でE)の3フレットを弾いてG音を出しても、6弦はG音を発しないことになります。
 ですので、エリート読者からの鋭いつっこみ(笑)が来る前に、とりあえず短3度(長6度)の共鳴現象についての言及を削除しました。
 ともあれ、ミーントーン仕様にしたフレット楽器が12平均律仕様のそれよりも「良く鳴る」ことは明らかですので、この理論的根拠を出来るだけ詳しく解明し、かつ、「出来るだけ簡明に説明できる真人間」になる(笑)ことが、今後の課題ですね。

 さらには、長3度の共鳴現象発生について『どこまで(何セントまで)のズレなら共鳴が発生するか?』を突き止めることが、今後の非常に重要なテーマになると思います。長3度が純正から14セントずれている12平均律に対しては、この14セントが「許容範囲外の致命的なズレ」と評価することができますが、では「どの程度ならば許容範囲内のズレなの?」ということです。
 (「共鳴現象の正否」と人間の耳に「美しく」感じるか否かとは、別問題として区別して扱うことが可能であると思われます。)
 長3度の共鳴現象発生について、岸啓子さんの「音律の検討 Ⅲ. ― 12等分平均律、バッハ音律、ヴェルクマイスター音律、. ヤング6分の1各音律における和音の響きの相違」という論文(11/11現在、インターネットで入手可能です。)では、現代のピアノで実験を行った結果が報告されており、そこでは、ヤング音律(p.c.(ピタゴラスコンマ24セント)を6分割して配置する調律法)の純正から「6セント」広い長3度であれば、許容範囲であり共鳴が確認された旨が述べられています。
 今回の2010年弦楽器フェアで出典された大西達朗氏製作のうねうねフレットギターの音律は、koten君により設計・提案されたものですが、この音律の最良の長3度は、純正から「7セント」広いものとなっています。さて事実はいかに?(笑)
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夢笛myu

今回のお話、ちょっと手強かったです(汗)。じっくり腰を落ち着けて読まないと理解できませんでした。
デモ演奏のシチリアーナ、たしかに第5倍音の共鳴がきれいに聞き取れます。普通のギターには無い甘い響きで、チェンバロ演奏を聴いているような気分になります。
ただ正直に告白すると、やはり私には5度のずれ(狭さ)が気になってしかたありません。その理由を詮索すると、リコーダーアンサンブルでは何はさて置いて5度を純正に吹くことが求められる、場合によっては、少し「広め」くらいに吹いた方が好まれる?故かも知れません。もしかしたら、合唱の場合でもそういう傾向があるのでは?リコーダーアンサンブルと合わせている時は、平均律の5度でもその狭さが気になって、ついついチョーキングしたくなります。
by 夢笛myu (2010-11-11 12:50) 

koten

 夢笛myuさん、正直な感想及び詳細なコメントに大変感謝いたします。

 5度のずれ(狭さ)が気になるとのお気持ち、凄く良く分かります。何を隠そう、私もこの5度の狭さに慣れるまで可成りの年月(少なくとも3年以上?)を要しました。気分や体調や選曲等によっては、今でもこの5度が「若干耳障り」と感じることすらあります。-5.5セントの5度は、ギリギリの許容限界値(まさに閾値)のように感じます(だからこそ、キルンベルガー第2や第1の5度は正に「盲点」だった訳ですが。)。
 究極において、私も「純正調」指向型人間なんだなぁと最近強く感じます。

 それにしても、平均律の5度(-2セント)でも「その狭さが気になる」とは、本当に凄い耳をお持ちですね(驚愕)、、、とにかく感心しきりです。
by koten (2010-11-11 18:34) 

koten

追記:
 一般にガンバやリュートなどでは、所謂「1/6分割法」が人気があると言われてますが、これにも凄く納得できるものがあります。つまり、PCの1/6分割では、狭い5度が-4セントになるので、ミーントーンの-5.5セントに比べて「耳障り感」が格段に減るんですよね。

 ちなみに今回の2010年弦楽器フェアで出典された大西達朗氏製作のうねうねフレットギターの小生設計の音律ですが、最も狭い5度は「純正-5セント」です。私の感覚では、-5.5セントと-5セントとでは「雲泥の差」があって、ミーントーンの-5.5セントよりも「耳障り感」が明らかに減ると感じます。 私、結構耳が良い?(笑)
by koten (2010-11-11 18:44) 

夢笛myu

PCの1/6分割? パソコンの分割?? ピタゴラスコンマの事だと気づくのにちょっと時間かかりました(汗)。
普通の人にとっては、何でパソコンを六分割するの?
-4セント≒32円安???
まったく意味不明でしょうね(笑)
大西さんの工房は愛知県にあるのですね。
資金と時間があれば、行ってみたいです。
by 夢笛myu (2010-11-12 14:50) 

koten

夢笛myu さん、コメントおおきにです。

 PCにつき、書くときに『「p.c.」って書いた方がユーザーフレンドリーだろうな』、と思いつつも、「ま、いいかっ」って感じで書き流してしまいました(汗)、以後気をつけます。
 (「PC」に比べて「p.c.」の方が押圧操作(処理工程)に手間(時間的コスト)がかかるんです、、と言い訳を書いてみる(笑))

 セントについては、流石に「cent」まで表記する気力が・・・いっそ「セント⇒セント(cent)」って単語登録しておこうかな(汗)

ちなみに最初の方の記事では気合い入れて丁寧に書いてました。
http://meantone.blog.so-net.ne.jp/2010-07-09

 ヨメの現在の実家が名古屋ということもあり、機会があれば私も行ってみたいですね、大西さんの工房。
by koten (2010-11-12 15:48) 

koten

余談:単語登録につきmixiで披露しましたが、
「おんりつ」と入力すると下記が出力されるようにatokに単語登録してます(笑)。
パターン1.
C--G--D--A--E--B(H)--F♯--C♯--G♯--E♭(D♯)--B♭(A♯)--F--C
パターン2.
C--G--D--A--E--B(H)--F♯--C♯--G♯--E♭(D♯)--B♭(A♯)--F--C
パターン3.
A(0cent)B♭[A♯](cent)B[H](cent)C(cent)C♯(cent)D(cent)E♭[D♯](cent)E(cent)F(cent)F♯(cent)G(cent)G♯(cent)

by koten (2010-11-12 15:52) 

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