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H23年1月30日補足:鍵盤楽器への純正律適用可能性についての中間(?)報告~文化の日によせて~ [純正律(Just Intonation)]

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「文化の日」によせて、「鍵盤楽器への純正律適用可能性」について纏めてみる。


【レジュメ】
 「いわゆるバッハ以前の作曲家」の鍵盤楽器曲について、実際にミーントーン調律で生チェンバロで弾いてみたところ、現在のところ、以下のように感じている。

  ※ミーントーンの性能を生かし切れていない曲が余りに多いと感じる。
  →少なくとも純正律を「強く意識して」作られているという心証を受ける。
  ※さらには、ミーントーン調律でも「演奏して満足できない」曲が多すぎる(余りにも多い! これはオカシイ!)と感じる。
  →鍵盤楽器でも実際に「純正律」が使われていたとしか考えられない、との確信を持つに至る。

 典型例:
  W.バード(William Byrd, 1540? – 1623年、英国)の「THE BATTELL」→5度のビート(唸り)が大きいミーントーン調律では、途中で疲れてしまい、とても最後まで弾ききれるものではない。(この手の曲は色々な作曲家が作っている。)

 ※※DAの(純正-22セントの)狭い5度は、想像する(?)ほど酷いものではない。

 ハ長調→純正律へのあこがれ(?)
 参考(証拠?)写真
 J.A.ラインケン(Johann Adam Reincken, 1643 - 1722年, オランダ)の組曲集の目次
 D.ブクステフーデ(Dieterich Buxtehude, 1637頃-1707年, 独)の組曲集の目次

 余談:(現代の「耳の良い」フレット楽器奏者が平均律フレットの楽器を「我慢して」弾いているように、)「分割鍵盤」衰退後のいわゆるバッハ以前の作曲家兼オルガン奏者は、純正律でないオルガンをいわば「我慢して」弾いていたということは考えられないか?
(さらには、「分割鍵盤」は「ミーントーンの異名異音実現のため」という論調が多いが、何故に「「純正律」実現のため」という考え方が出来ないのか? ハナっから無視?)

-----第1部終わり、ここで15分間の休憩をいただきます。-----------------

【koten】:うーん、上記のようにレジュメ形式にすると、「要点が分かりやすくなる」一方で、何か味気ない感もありますよね・・。
〔M〕:「ミーントーンの性能を生かし切れていない」って例えばどういうことですか?
【koten】:要するに、ミーントーンでは色々な和音や転調が使える筈なのに、そう言った側面から見て「非常に大人しい曲」が多いんですよね、「この曲の和音や転調の使用範囲なら、純正律でも全然OKじゃん」って感じる場合が凄く多いんです。

【イッテツ】:ふーん、じゃぁ、ミーントーン調律でも「演奏して満足できない」曲についてもう少し詳しく教えてくれよ。
【koten】:そうですね。いやぁ例を挙げれば本当にキリがなくて、ここでは書ききれないですね(汗)。音律実験シリーズで例示したガルッピのハ長調ソナタもそうですし、総じてハ長調の曲が多いのですが、そうでない曲でも、マニアックなところでは例えば前期バロックで「ヴェックマン(Matthias Weckmann, 1616- 1674年、独)、下記サイト参照」って作曲家がいるのですが、この人の「ニ短調」のトッカータなどは、私、ミーントーンでは全然満足できないです。「DA」が狭い純正律で弾いて「あ、これだ!!」って感じしましたもん。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%86%E3%82%A3%E3%82%A2%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%9E%E3%83%B3

〔M〕:誰ですかそのヴェックマンって人?(汗)
【koten】:マニア向けに分かりやすく言うと(笑)、フローベルガーとともに「フレスコバルディ」の弟子をしていたことがある作曲家です。フレスコバルディやフローベルガーは有名ですが、ヴェックマンは素晴らしい曲を作ったにもかかわらず最近まで殆ど忘れられた存在となってしまっていた。フレスコバルディやフローベルガーについては「平均律にも理解を示した」、「平均律をも使いこなした」旨の逸話(?)がありますが・・。

【イッテツ】:それって何か意味深だな・・もしかしてそれって、『フレスコバルディやフローベルガーは、「音楽業界(音律界?)が将来「平均律」隆盛になることをも想定に入れて曲を作っていたが、ヴェックマンはそうでなかった』ってことかい?
【koten】:そうです、正にそれ!! ジャスト(JUST)です(笑)、あくまで推測ですけどね。少なくとも最近までの音楽業界は、「平均律」というフィルターを掛けて曲の善し悪しが判断されていたことは確かですよね。「平均律」で演奏して、「この曲つまんない」、「幼稚だ」、「こんな曲は弾くに値しない」、「この作曲家のどこが良いのか分からない」、「曲は良いはずなのに、私、才能がないのかな」・・・などなど、思い当たる人多いんじゃないですか? というか私もそうでしたし(汗)。

〔M〕:なんか耳の痛い話です(汗)・・・では、上述の「典型例」についても少し説明御願いします。
【koten】:そうですね、これは9曲からなる組曲なのですが、楽譜の一部(写真)をちょっとだけでも紹介すれば、もう一発でわかるでしょ、こんな感じです。
IMG_4705.jpg

IMG_4706.jpg

IMG_4707.jpg


【イッテツ】:なんか「C」の3和音ばっかりだな(汗)・・。
〔M〕:最後の写真凄いです(笑)。

【koten】:これ、今日の夕方に生チェンバロを純正律(詳細後述)に調律して、蓋を全開にして弾きまくったのですが、家族の誰からも「うるさい」などの文句は来ませんでしたよ。赤ん坊と嫁さんはスヤスヤ寝てたし。おそらくミーントーンで弾いたら文句来たでしょうね・・って言うか私、それだと疲れて弾ききれないし(汗)、勿論こんな曲モダンピアノで弾いたら「論外中の論外」ですよね(爆)。

〔M〕: ハ長調→純正律へのあこがれ(?)の参考(証拠?)写真についても御願いします。どちらも鍵盤楽器(足ペダル無し)用の作品ですよね?

【koten】:そうです。どちらも大バッハが旅行して聴きに行って、彼に大きな影響を与えた作曲家ですよね。まず、これがラインケンの組曲集の目次です。
IMG_4708.jpg

補遺:ラインケンにつき下記サイト参照。上述したヴェックマンと親交があったようです。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A8%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%83%80%E3%83%A0%E3%83%BB%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%B1%E3%83%B3

【koten】:そしてこれがブクステフーデの組曲集の目次です。
IMG_4710.jpg

補遺:ブクステフーデにつき下記サイト参照。ヴェックマン、ラインケンのいずれとも親交があったようです。(まぁ狭い業界ですものね。)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%AA%E3%83%92%E3%83%BB%E3%83%96%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%95%E3%83%BC%E3%83%87

【イッテツ】:なるほど、どちらも前半はハ長調のオンパレードだな。

〔M〕:あっ、そろそろ休憩時間が終わりみたいです(汗)

【koten】:あらら、じゃあちょっと伝言をひとつ・・・Enriqueさん、先日の「整数比和音」関係の記事がmixiの下記日記のコメント欄でも話題になってますので、よろしかったらどうぞ。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1612424809&owner_id=17562685

------第2部-----------------------
 議題:現代の電子楽器/電子チューナーに組み込まれている「長調用純正律(JUST)」の「F♯」音の位置に対する大いなる疑問

 「音律実験シリーズ」で演奏投稿upした電子楽器の「純正律(JUST)」でのハ長調曲の音律は、(純正-22セントの)狭い5度の位置が「D-A」、「H-F♯」、「B♭-F」に配置されている(G♯-E♭は超広い所謂ウルフ5度)。

 実物(?)写真の紹介
平島達司著「ゼロ・ビートの再発見」(技法編、東京音楽社)より第43頁

IMG_4712.jpg


 この狭い5度の配置は何を意味するか?
 →何と、D-F♯の長3度が、純正より「22セント」も狭くなる。広いのではなく「狭い」のである・・・なんじゃぁこりゃあ!??

 おそらく(up演奏に対して)殆どの人が感じたであろう、『こりゃぁ「F♯」の音が低すぎる!(困惑)』・・・その原因はここにあったのである。
 ちなみに狭い5度を『F♯-C♯』間に配置すればこんなことにはならない。
 
 では、「H-F♯」に狭い5度を配置した理由は?
 ※同書第44頁「たとえばE-G♯の長3度を純正にするためです。」・・しかしですね平島先生、E-G♯の長3度を純正にしたいのであれば、狭い5度を『F♯-C♯』間に配置すれば足りますよね。そうすれば、A-C♯、D-F♯、E-G♯のいずれも純正3度を確保でき、D-F♯の長3度が「破壊される」ような事態は生じないですよね。平島先生、私が知りたいのは、「何故に、「D-F♯長3度を破壊」し、「F♯音が低すぎると感じる」ような位置に、狭い5度を配置したのか?」なのです。

 「H-F♯」に狭い5度を配置した場合に、特別な利益を得る(ハッピーになる)のはどの和音か?と言うと、嬰ヘ短調の主和音です(F♯-A-C♯が純正短3和音になる)。
 しかしながら、ハ長調の曲で嬰ヘ短調の主和音は普通使わないのではないでしょうか? 「D-F♯長3度を純正にする方が遙かに重要ではないか?」と感じるのは私だけなのでしょうか・・。

 それでは、狭い5度を「D-A」、『F♯-C♯』、「B♭-F」間に配置した純正律って歴史的にあったの?
 →いわゆる「オイラーの純正律」がそうである。(ムラシンさんの下記サイトは参考になると思います。)
http://murashin.sakura.ne.jp/cache/default.mid_T33Eul-c.mid.htm
 しかし、一般社会(?)では「オイラーの純正律は実用化されなかった」なる論調が多い。本当?
★★★★H23年1月30日補足!!!(汗)★★★★★★★★★★★★★★★★★★
すみません、「オイラーの純正律」は、狭い5度を「D-A」、『F♯-C♯』の「2カ所」に配置するものであって、「B♭-F」は44(即ち2×S.C.)-24(p.c.)=20セント広くするようです。
私見(推測)ですが、要するにオイラーの主張は、「22セント狭い5度は2カ所だけに留め、それでいて純正3度は最大限の8カ所で確保し、さらに、広い5度の広さはミーントーンのウルフ5度ほど酷くない、どうだい、これ合理的かつ美しいだろう?」というものではないでしょうか? 
一方、古楽一般で重要とされないHとFisの長3度を純正とし、相対的に重要なB♭やE♭の長3度をいわば「見捨てて」しまったがために、オイラー律は「結局実用化されなかった」のかな、との感があります。なので、「オイラーの純正律は実用化されなかった」なる説は「本当」なのではないかと感じている今日この頃です。

 オイラーの純正律については、下記Enriqueさんの記事及びコメント欄も参考になるかと思います。
http://classical-guitar.blog.so-net.ne.jp/2011-01-24?comment
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


 東川清一編「古楽の音律」の第109頁(ヴァイオリンの音律-歴史的概観)より

IMG_4700.jpg

 本書の第109頁では「たとえば・・・の三つの5度を狭くするなら・・」と前置き(「たとえば」書き)して図示しているが、どうもこの5度配置は、既にルネサンス時代からヴァイオリンの音律として使われていたニオイを強く感じます。というか、「正常な感覚の普通の音楽家」なら、「D-A」に1シントニックコンマ狭い5度を配置したならば、次に狭い5度を置くとしたら「H-F♯」でなく当然『F♯-C♯』に配置するはずですよね。

★★★★H23年1月30日注記(汗)★★★★★★★★★★★★★★★★★★
>(換言すると、「オイラーの純正律」は、新考案(新たな提案)ではなくて、あくまでも「再発見」の域を脱していないものと考えられます。)
の記述を削除しました。 「オイラーの純正律」は、新考案(新たな提案)であると考えられます。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★



 蛇足:電子楽器にプリセットされているJUSTの音律は全く使い物にならないのか?
  この音律を意識したかも知れない曲候補(現在のところ候補は非常に少ないが)
  ラインケンの組曲第1番の出だし(この組曲は、ハ長調にも関わらず、多くの曲で序盤から「意味深なfis」が使われている)
IMG_4709.jpg


 でも、「総合的に見てどちらの純正律の方が良さそうか?」は、演奏upで比較するまでもなく明白じゃないですかね。今日は、「文化の日」ということもあり、チェンバロをオイラーの純正律にして色々と弾いてみたのですが、どうもピッタリ来る曲がヤタラと多い気がするのです。
★★★★H23年1月30日注記(汗)★★★★★★★★★★★★★★★★★★
>チェンバロをオイラーの純正律にして
の記述につき、
チェンバロを上記「古楽の音律」で説明されている純正律にして
が正しいです。具体的には、
『通常の所謂ハ長調専用の純正律の「H-F♯」の狭い5度を隣の「F♯-C♯」に移動させた設定』で、「D-A」、「F♯-C♯」、「B♭-F」の3カ所の5度を22セント狭くし(合計66セント狭い)、G♯-E♭の5度を66(即ち3×S.C.)-24(p.c.)=42セント広くする音律、さらに詳細には、
平均律とのピッチの差異(セント値)が、
C=+16
G=+18
D=+20
A=0
E=+2
B(H)=+4
F♯=+6
C♯=-14
G♯=-12
E♭=+32
B♭=+34
F=+14
とする音律です。
 この音律ですと、純正3度が(オイラーと同様に)8つ確保されるのですが、オイラーのようにHとFisの長3度は純正にはならず、代わりに(より重要で実用的な箇所である)E♭とB♭の長3度が純正になります。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 繰り返しになりますが、電子楽器やチューナーに入っている「JUST」は、明らかにfisの音が(とんでもなく)低いです。再度書きますが、純正のD-F♯長3度と比べと、22セントも狭い(fisの位置が22セントも低い)んです。幾ら何でもこれはオカシイですよね。まともな(?)音楽家なら誰でもこのオカシサに気づくはずですよね。
 「音律実験シリーズ」で投稿したJUSTでのハ長調曲の演奏は、Aの低さよりも「fisの低さ」の方が目立つのが分かるはずです。
http://www.youmusic.jp/modules/x_movie/x_movie_view.php?lid=6721

 何故こんな「一見使い物にならない」音律がプリセットされているのでしょうか?
 おそらく誰も「音楽(理論)的」に回答することは出来ないかも知れませんね(笑)
-----------
 【koten】:後半は良いですよね、これ以上詳しく解説しなくても・・
 【イッテツ】:そうだな、早く「真面目にクラシック音楽を勉強している者が報われる」社会になるといいな。
 〔M〕:・・・・・(絶句)。


 それでは皆さま、良い芸術の秋を!!m(_ _)m
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