音律におけるセント(cent)を用いた様々な表記法及び数値計算法 [音律(調律)の基礎知識]
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今日のお題:音律におけるセント(cent)を用いた様々な表記法及び数値計算法
【koten】:ええと、今日は長いこともあり、茶化さずに独り(?)でやります。
-----導入部----------------------
前回まで、ピタゴラス・コンマ(P.C. すなわち純正五度を12回積み重ねて出来る約24セントの余剰量)とシントニック・コンマ(S.C. すなわちピタゴラス(純正)五度を4回積み重ねて出来る長三度(←別名「ピタゴラス三度」)と純正長三度との差分)について学習してきました。また、さらなる基礎知識として、『西洋音楽では伝統的に長三度の純正が重要視されて来た』こともお伝えしました。これだけ分かれば音律論が面白いようにドンドン分かってくるはずです。
と言うわけで、今日はセント(cent)を用いた様々な表記法と数値計算法について学んで行きましょう。
-----序論----------------------
音律をセント(cent)を使って表記するのに、
【その1】:(12個の)各五度の幅(3桁の値)を書いておく表記法
【その2】:(12個の)各音につき、平均律との音程(音高)差を書いておく表記法
【その3】:(12個の)各五度の幅を純正五度を基準として書いておく表記法(1桁又は2桁のセント値)
【その4】:(12個の)各五度の幅を平均律五度を基準として書いておく表記法(同上のセント値)
などがあります。
この内のどれか1つが明らかであれば、上記他のいずれにも変換することができます。
逆に、どれか複数の表記法を使って相手に音律のデータを伝える場合には、計算を間違ったり誤記があると、相互に矛盾が生じて相手が混乱してしまうので、最細の注意が必要となります(汗)。
ちなみに音律をセント(cent)を使って表記することの便利さは、例えば、基準ピッチ(例えばAのHz値)をどのように設定しても使えること、音程を算出するのに簡単な足し引き算を使えば済むこと(つまり比率値を使った掛け算、割り算を行う必要がなくなること)、などが挙げられます。
-----本論----------------------
さて、いよいよ小生の「うねうねフレット19世紀ギター」の音律に話を移します。
まずはこのギターを使った昔(2007年11月)の演奏から・・これはソルの「3フレットまであればOK」の曲の内の一つである、エチュード作品31-2(イ短調)です。考えてみると、このギターでの演奏up世界発信は初ですね(笑)。
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
この音律は、基本的には「Gスタートのヤング音律」のバリエーションとも言えるものでして、フレット改造の完成時に、キヨさんから次のような情報をいただきました。
>Gからの五度のセント値を記しておきます。
G-D:698 D-A:698 A-E:696 E-B:700 B-F#:698 F#-C#:698
C#-G#:702 G#-D#:702 D#-B♭702 B♭-F:704 F-C:702 C-G:700
↑
これは、【その1】の「(12個の)各五度の幅(3桁の値)を書いておく表記法」に該当します!
ここで必要となる基礎知識は、一部復習になりますが、
「セント(cent)」という単位は「十二平均律」を想定して作られたものであり、十二平均律では半音が100セント、長三度が400セント、五度が700セント、1オクターブが1200セントになる、ということです。
なお、前回学習したように、十二平均律の五度は純正五度よりも2セント狭いものなので、純正五度は702セントになります。また、十二平均律の長三度は純正長三度よりも14セント広い(高い)ものなので、純正長三度は386セントになります。
-----五度の幅(数値)の評価--------------------
では参りましょう!!
(1)C-Gの700セントとはいかなるものか? そう、これは十二平均律の五度です。純正五度よりも2セント狭い(わずかに唸りのある)五度です。
同様に、E-Bも700セントなので、これも平均律の五度であることが分かります。
(2)次、G-Dの698セントとはいかなるものか? 上記のように、純正五度が702セントなので、702-698=4です。純正五度よりも4セント狭い五度です。平均律の五度よりも2セント狭い五度です。音律に詳しい方ならば「ピタゴラスコンマ(24セント)を1/6に分割したもの」と直ぐに分かるでしょう。
同様に、D-A、B-F#、F#-C#も698セントなので、純正五度よりも4セント狭い(平均律よりも2セント狭い)五度であることが分かります。
(3)では次、A-Eの696セントとは如何なるものか? もう分かりますね。純正五度が702セントなので、702-696=6です。純正五度よりも6セント狭い五度です。この6セント狭い五度(ヴェルクマイスター法の五度)というのはナカナカのくせ者で、人によっては耳障りな響きに聞こえます。かくいう私もヴェルクマイスター法の五度はやや苦手です(汗)。では何故この五度を採用したかって? 実はこれ、キヨさん提案による音律なんですよ(汗笑)
(4)どんどん行きましょう・・C#-G#の702セントとは如何なるものか? これは上述したように、(周波数比2:3の)純正な五度(ピタゴラス五度)です。G#-D#、D#-B♭、F-Cにも純正五度があります。
「ギターではあまり使わない五度が純正五度になっているぞ」「これは何故なのか?」と思った方は非常に鋭い人です。それは要するに、昨日学んだように、純正五度を集めても(積み重ねても)綺麗な長三度が出来ないからです。西洋音楽では伝統的に長三度の純正が重要視されて来たため、長三度を純正に近づけるためには五度を狭くしなければならないのです。そして、ピタゴラス・コンマが-24セント分しかないため、これを効率的(音楽的?)に振り分けようとすると、「良く使う調の五度に優先的に配分する」ことになるため、あまり使わない調の五度には、いわば「美味しい栄養の素」が回ってこない(笑)と言うわけです。
(5)最後、B♭-Fの704セントとは如何なるものか? これは、純正五度よりも2セント「広い」五度です。この音律では、
C-Gが純正よりも2セント狭い
G-Dが純正よりも4セント狭い
D-Aが純正よりも4セント狭い
A-Eが純正よりも6セント狭い
E-Bが純正よりも2セント狭い
B-F♯が純正よりも4セント狭い
F♯-C♯が純正よりも4セント狭い
設定になっているため、その総量は2+4+4+6+2+4+4=26(実際は負の符号が付くので-26セント)となります。つまり、この音律では、五度の狭める総量を欲張って設定していて、ピタゴラスコンマの24(マイナス24セント)よりも2セントだけ狭い値としているのです。
そのため、どこかで2セントの辻褄合わせ(汗)をする必要があり、これをB♭-Fに持ってきたという訳です。このように、「(良く使う調の長三度を出来るだけ綺麗にするために)狭い五度を欲張って配置し、(そのトレードオフとして)どこかに広い五度が出来る」という設定は、殆どのミーントーン系の音律に現れます(いわばミーントーンの常套手段)。
以上のように、この音律では、(696,698,700,702,704セントという)5種類の幅の五度が使われていることが分かります。
そして、この音律を今までのように五度圏サークル図に直すと、以下のようになります。
C(-2)G(-4)D(-4)A(-6)E(-2)B(-4)F#(-4)C#(0)G#(0)D#(0)Bb(+2)F(0)C
↑
これは、【その3】の
「各五度の幅を純正五度を基準として書いておく表記法(1桁又は2桁のセント値)」に該当します!
↓
-----長三度の幅の算出--------------------
さぁ、もうお分かりの通り、この音律の長三度については、
C-E(ハ長調):S.C.(即ち22)-16=+6(昨日書いたヴァロッティの長三度と同じ、十二平均律よりも8セント改善))
G-B(ト長調):22-16=+6(同上、十二平均律よりも8セント改善)
D-F#(ニ長調):22-16=+6(平均律よりも8セント改善)
A-C#(イ長調):22-16=+6(平均律よりも8セント改善)
E-G#(ホ長調):22-10=+12(平均律より2セント改善)
B-D#(ロ長調):22-8=+14(平均律と同じ)
F-C(ヘ長調):22-10=+12(平均律より2セント改善)
Bb-D(変ロ長調):22-6+2=+18(平均律より4セント劣る)
Eb-G(変ホ長調):唯一のピタゴラス三度(平均律より8セント劣る)
C#-FとG#-C:ピタゴラス三度より2セント広い(平均律より10セント劣る)
となります。
----十二平均律との音高差の算出----------------
次に、この音律の各音を、十二平均律との音高差で表してみます。
これは上述の【その2】の「各音につき、平均律との音程(音高)差を書いておく表記法」に該当します。
A(イ音)基準で行くと、
①A-Eの五度は、平均律では-2なのに、ここでは-6と狭くなっています。つまり、Aが同じ音高(±0セント)だとすると、この音律の方がE音が「低」いのです。どれだけ低いかというと、
-6-(-2)=-6+2=-4セント、つまり4セントだけ低いです。
②次に、E-Bの五度は、平均律もこの音律も-2です。そこで勇んで「Bの音が平均律と同じ高さか?」と言うとそうではありません(汗)。前の数値(いわば実績)が繰り越されることを考慮する必要があるので、ここでは-4セント、つまりB(H)音は、平均律よりも4セントだけ低いことになります。
③同様にして、F#、C#、G#、D#、・・・が計算できます(但し、実績値の繰り越しが段々と増えて行き、次第に煩雑となり計算が間違えやすくなっていきますので要注意です(汗))。
④逆に、Aから「左回り」に五度の音高差を計算してみます。
A-Dの五度は、平均律では-2なのに、ここでは-4と狭くなっています。つまり、Aが同じ音高(±0セント)だとすると、この音律の方がD音が「高」いのです。どれだけ高いかというと、
-2-(-4)=-2+4=2セント、つまり2セントだけ高いことになります。
(①では平均律の-2を引いていたが、この左回りの計算ではこの音律の値を引くことがポイントです。)
⑤次に、D-Gの五度は、平均律では-2なのに、ここでも-4と狭くなっています。つまり、仮にDの音が同じ音高(±0セント)だとすると、この音律ではG音が2セント高いことになりますが、②で学んだように前の数値が繰り越されます。具体的には、D音は実際にはこの音律の方が2セント高いので、
2+2=4となり、この音律のG音は、平均律のそれよりも4セント高いことになります。
⑥同様にして、C、F、B♭、E♭・・・が計算できます。
⑦ちなみに、③で計算したD#の値と⑥で計算したE♭の値が合致していない場合には、どこかで計算間違いをしています(汗)。
⑧ここではギターの音律なので、チューニングするためには、1~6弦の開放弦の音であるEADGB(E)の値が分かれば十分です。
⑨なぜなら、このチューナーが使えるからです(えっへん!)
↑
平均律との音高差が1セント単位でデジタル表示される機能付きのもの(SEIKOのSAT501)
⑩というわけで、このギターの各開放弦における十二平均律との音高差は以下の通りです。
1&6弦の開放弦のE音=-4セント
5弦の開放弦のA音=±0セント
4弦の開放弦のD音=+2セント
3弦の開放弦のG音=+4セント
2弦の開放弦のB音=-4セント
---むすび---------------
以上、長文&数字が沢山になりましたが、お分かりいただけたでしょうか?
初学者の方は、音律論や古典調律の話しになると「訳の分からない数値が沢山出てくる(悩泣)」ように感じるかと思われますが、「何気ない一見無味乾燥な数値の裏には実はこんなにも沢山の意味があったのだぁ!」ということが上手く伝わればなぁ、と思った次第です。
それではまた!!
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今日のお題:音律におけるセント(cent)を用いた様々な表記法及び数値計算法
【koten】:ええと、今日は長いこともあり、茶化さずに独り(?)でやります。
-----導入部----------------------
前回まで、ピタゴラス・コンマ(P.C. すなわち純正五度を12回積み重ねて出来る約24セントの余剰量)とシントニック・コンマ(S.C. すなわちピタゴラス(純正)五度を4回積み重ねて出来る長三度(←別名「ピタゴラス三度」)と純正長三度との差分)について学習してきました。また、さらなる基礎知識として、『西洋音楽では伝統的に長三度の純正が重要視されて来た』こともお伝えしました。これだけ分かれば音律論が面白いようにドンドン分かってくるはずです。
と言うわけで、今日はセント(cent)を用いた様々な表記法と数値計算法について学んで行きましょう。
-----序論----------------------
音律をセント(cent)を使って表記するのに、
【その1】:(12個の)各五度の幅(3桁の値)を書いておく表記法
【その2】:(12個の)各音につき、平均律との音程(音高)差を書いておく表記法
【その3】:(12個の)各五度の幅を純正五度を基準として書いておく表記法(1桁又は2桁のセント値)
【その4】:(12個の)各五度の幅を平均律五度を基準として書いておく表記法(同上のセント値)
などがあります。
この内のどれか1つが明らかであれば、上記他のいずれにも変換することができます。
逆に、どれか複数の表記法を使って相手に音律のデータを伝える場合には、計算を間違ったり誤記があると、相互に矛盾が生じて相手が混乱してしまうので、最細の注意が必要となります(汗)。
ちなみに音律をセント(cent)を使って表記することの便利さは、例えば、基準ピッチ(例えばAのHz値)をどのように設定しても使えること、音程を算出するのに簡単な足し引き算を使えば済むこと(つまり比率値を使った掛け算、割り算を行う必要がなくなること)、などが挙げられます。
-----本論----------------------
さて、いよいよ小生の「うねうねフレット19世紀ギター」の音律に話を移します。
まずはこのギターを使った昔(2007年11月)の演奏から・・これはソルの「3フレットまであればOK」の曲の内の一つである、エチュード作品31-2(イ短調)です。考えてみると、このギターでの演奏up世界発信は初ですね(笑)。
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
この音律は、基本的には「Gスタートのヤング音律」のバリエーションとも言えるものでして、フレット改造の完成時に、キヨさんから次のような情報をいただきました。
>Gからの五度のセント値を記しておきます。
G-D:698 D-A:698 A-E:696 E-B:700 B-F#:698 F#-C#:698
C#-G#:702 G#-D#:702 D#-B♭702 B♭-F:704 F-C:702 C-G:700
↑
これは、【その1】の「(12個の)各五度の幅(3桁の値)を書いておく表記法」に該当します!
ここで必要となる基礎知識は、一部復習になりますが、
「セント(cent)」という単位は「十二平均律」を想定して作られたものであり、十二平均律では半音が100セント、長三度が400セント、五度が700セント、1オクターブが1200セントになる、ということです。
なお、前回学習したように、十二平均律の五度は純正五度よりも2セント狭いものなので、純正五度は702セントになります。また、十二平均律の長三度は純正長三度よりも14セント広い(高い)ものなので、純正長三度は386セントになります。
-----五度の幅(数値)の評価--------------------
では参りましょう!!
(1)C-Gの700セントとはいかなるものか? そう、これは十二平均律の五度です。純正五度よりも2セント狭い(わずかに唸りのある)五度です。
同様に、E-Bも700セントなので、これも平均律の五度であることが分かります。
(2)次、G-Dの698セントとはいかなるものか? 上記のように、純正五度が702セントなので、702-698=4です。純正五度よりも4セント狭い五度です。平均律の五度よりも2セント狭い五度です。音律に詳しい方ならば「ピタゴラスコンマ(24セント)を1/6に分割したもの」と直ぐに分かるでしょう。
同様に、D-A、B-F#、F#-C#も698セントなので、純正五度よりも4セント狭い(平均律よりも2セント狭い)五度であることが分かります。
(3)では次、A-Eの696セントとは如何なるものか? もう分かりますね。純正五度が702セントなので、702-696=6です。純正五度よりも6セント狭い五度です。この6セント狭い五度(ヴェルクマイスター法の五度)というのはナカナカのくせ者で、人によっては耳障りな響きに聞こえます。かくいう私もヴェルクマイスター法の五度はやや苦手です(汗)。では何故この五度を採用したかって? 実はこれ、キヨさん提案による音律なんですよ(汗笑)
(4)どんどん行きましょう・・C#-G#の702セントとは如何なるものか? これは上述したように、(周波数比2:3の)純正な五度(ピタゴラス五度)です。G#-D#、D#-B♭、F-Cにも純正五度があります。
「ギターではあまり使わない五度が純正五度になっているぞ」「これは何故なのか?」と思った方は非常に鋭い人です。それは要するに、昨日学んだように、純正五度を集めても(積み重ねても)綺麗な長三度が出来ないからです。西洋音楽では伝統的に長三度の純正が重要視されて来たため、長三度を純正に近づけるためには五度を狭くしなければならないのです。そして、ピタゴラス・コンマが-24セント分しかないため、これを効率的(音楽的?)に振り分けようとすると、「良く使う調の五度に優先的に配分する」ことになるため、あまり使わない調の五度には、いわば「美味しい栄養の素」が回ってこない(笑)と言うわけです。
(5)最後、B♭-Fの704セントとは如何なるものか? これは、純正五度よりも2セント「広い」五度です。この音律では、
C-Gが純正よりも2セント狭い
G-Dが純正よりも4セント狭い
D-Aが純正よりも4セント狭い
A-Eが純正よりも6セント狭い
E-Bが純正よりも2セント狭い
B-F♯が純正よりも4セント狭い
F♯-C♯が純正よりも4セント狭い
設定になっているため、その総量は2+4+4+6+2+4+4=26(実際は負の符号が付くので-26セント)となります。つまり、この音律では、五度の狭める総量を欲張って設定していて、ピタゴラスコンマの24(マイナス24セント)よりも2セントだけ狭い値としているのです。
そのため、どこかで2セントの辻褄合わせ(汗)をする必要があり、これをB♭-Fに持ってきたという訳です。このように、「(良く使う調の長三度を出来るだけ綺麗にするために)狭い五度を欲張って配置し、(そのトレードオフとして)どこかに広い五度が出来る」という設定は、殆どのミーントーン系の音律に現れます(いわばミーントーンの常套手段)。
以上のように、この音律では、(696,698,700,702,704セントという)5種類の幅の五度が使われていることが分かります。
そして、この音律を今までのように五度圏サークル図に直すと、以下のようになります。
C(-2)G(-4)D(-4)A(-6)E(-2)B(-4)F#(-4)C#(0)G#(0)D#(0)Bb(+2)F(0)C
↑
これは、【その3】の
「各五度の幅を純正五度を基準として書いておく表記法(1桁又は2桁のセント値)」に該当します!
↓
-----長三度の幅の算出--------------------
さぁ、もうお分かりの通り、この音律の長三度については、
C-E(ハ長調):S.C.(即ち22)-16=+6(昨日書いたヴァロッティの長三度と同じ、十二平均律よりも8セント改善))
G-B(ト長調):22-16=+6(同上、十二平均律よりも8セント改善)
D-F#(ニ長調):22-16=+6(平均律よりも8セント改善)
A-C#(イ長調):22-16=+6(平均律よりも8セント改善)
E-G#(ホ長調):22-10=+12(平均律より2セント改善)
B-D#(ロ長調):22-8=+14(平均律と同じ)
F-C(ヘ長調):22-10=+12(平均律より2セント改善)
Bb-D(変ロ長調):22-6+2=+18(平均律より4セント劣る)
Eb-G(変ホ長調):唯一のピタゴラス三度(平均律より8セント劣る)
C#-FとG#-C:ピタゴラス三度より2セント広い(平均律より10セント劣る)
となります。
----十二平均律との音高差の算出----------------
次に、この音律の各音を、十二平均律との音高差で表してみます。
これは上述の【その2】の「各音につき、平均律との音程(音高)差を書いておく表記法」に該当します。
A(イ音)基準で行くと、
①A-Eの五度は、平均律では-2なのに、ここでは-6と狭くなっています。つまり、Aが同じ音高(±0セント)だとすると、この音律の方がE音が「低」いのです。どれだけ低いかというと、
-6-(-2)=-6+2=-4セント、つまり4セントだけ低いです。
②次に、E-Bの五度は、平均律もこの音律も-2です。そこで勇んで「Bの音が平均律と同じ高さか?」と言うとそうではありません(汗)。前の数値(いわば実績)が繰り越されることを考慮する必要があるので、ここでは-4セント、つまりB(H)音は、平均律よりも4セントだけ低いことになります。
③同様にして、F#、C#、G#、D#、・・・が計算できます(但し、実績値の繰り越しが段々と増えて行き、次第に煩雑となり計算が間違えやすくなっていきますので要注意です(汗))。
④逆に、Aから「左回り」に五度の音高差を計算してみます。
A-Dの五度は、平均律では-2なのに、ここでは-4と狭くなっています。つまり、Aが同じ音高(±0セント)だとすると、この音律の方がD音が「高」いのです。どれだけ高いかというと、
-2-(-4)=-2+4=2セント、つまり2セントだけ高いことになります。
(①では平均律の-2を引いていたが、この左回りの計算ではこの音律の値を引くことがポイントです。)
⑤次に、D-Gの五度は、平均律では-2なのに、ここでも-4と狭くなっています。つまり、仮にDの音が同じ音高(±0セント)だとすると、この音律ではG音が2セント高いことになりますが、②で学んだように前の数値が繰り越されます。具体的には、D音は実際にはこの音律の方が2セント高いので、
2+2=4となり、この音律のG音は、平均律のそれよりも4セント高いことになります。
⑥同様にして、C、F、B♭、E♭・・・が計算できます。
⑦ちなみに、③で計算したD#の値と⑥で計算したE♭の値が合致していない場合には、どこかで計算間違いをしています(汗)。
⑧ここではギターの音律なので、チューニングするためには、1~6弦の開放弦の音であるEADGB(E)の値が分かれば十分です。
⑨なぜなら、このチューナーが使えるからです(えっへん!)
↑
平均律との音高差が1セント単位でデジタル表示される機能付きのもの(SEIKOのSAT501)
⑩というわけで、このギターの各開放弦における十二平均律との音高差は以下の通りです。
1&6弦の開放弦のE音=-4セント
5弦の開放弦のA音=±0セント
4弦の開放弦のD音=+2セント
3弦の開放弦のG音=+4セント
2弦の開放弦のB音=-4セント
---むすび---------------
以上、長文&数字が沢山になりましたが、お分かりいただけたでしょうか?
初学者の方は、音律論や古典調律の話しになると「訳の分からない数値が沢山出てくる(悩泣)」ように感じるかと思われますが、「何気ない一見無味乾燥な数値の裏には実はこんなにも沢山の意味があったのだぁ!」ということが上手く伝わればなぁ、と思った次第です。
それではまた!!
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